全てのレビュー
フィクションか、ノンフィクションか?
そこに言及するレビューが多い理由が、第一話を読んですぐに分かった。
作中で放たれるセリフの一つ一つに、魂が籠っているのだ。
魂の籠ったホンモノのセリフが、読み手の脳裏に人物像を具現化させ、どんどんストーリーに引き込んでいく。
全体的に人物の容姿や風景的な描写は少な目だ。
それでも目を閉じれば、事務所のソファで煙を吐き出す剣乃さんが瞼に浮かんでくるのである。
なぜなのか。
恐らく答えは単純だ。
作者の中にこの物語が、"愛すべき世界線"として実在しているのだ。
実在する世界線であるから、放たれるセリフは魂を持ち、読み手に訴えかけてくるのだ。
フィクションかノンフィクションか、答えは作者しか知らない。しかし、間違いなく登場人物達は生きている。そう思わせるリアリティがこの作品にはある。
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4時間掛けて一気に読んでしまいました。
続きも読みたいので今は8とさせていただきました。
フィクションである。でもifノンフィクションとして読んでみると、非常に興味深い。今までの日本人はずっとディズニーランドTVを観て、ディズニーランド新聞を読み、ランドの中で眠っていたのだなーと、ランドの外に出て初めて気付く。そう気付いた瞬間に両目のレンズは割れてしまう。新世界にダイブだ。
作家さんは、才能をひけらかすでも無く、淡々としたテンポで語り続ける。それがいい。読者の心が作品に入り込める「間」を創り出してくれるから。心地よいのだ。日本の大恩人である田中角栄さんに想いを馳せながら続きを待つ。連載中故に、現時点での評価は8とさせて頂きたい。
このレビューにはネタバレがあります。
頭の良い主人公。悪人が登場する社会勉強系の作品は刺激的でおもしろい。
この作品はそれだけではない。
頭が良すぎてつい相手をあざむく行動をしがちな主人公なのに、天然に近い性格のおおらかさと持ってる価値観の目利きの良さで清らかに描かれている。さらには演出の古き良き日本の紹介や心温まる四畳半SF要素も詰め込まれており、魅力たっぷりの新ジャンルのノンフィクション自伝となっている。
「相場師」という仕事だけでもミステリアスで魅力的なのに、作者は今ではよく耳にする言葉、『非リア』という言葉も誰よりも早く作りだして使っていたオタク相場師とのこと。なのでこんなに不思議でおもしろい話が書けたのかもしれない。
レビューになってないのでもっとレビューっぽく書きたいと色々考えたのですが、
素晴らしいレビューは他にたくさんありますし、読めばわかると思うので、
最初に読んだ時の感想をそのまま書きたいと思います。
私にはかつて心の底から信頼しあえた親友と幼馴染がいました。
ある時を境に二度と会えなくなり、随分長らくの間、妄想や夢の中で、
当時のあいつらと他愛ない事で笑い合ったり、
あの瞬間が訪れる前の世界に飛び一緒になって危機を回避したり、
といった事をしていました。
いつからか、そんな夢も見れなくなり、妄想もイメージがどんどん
うすらぼけたものになっていき、消えてなくなってしまうのが嫌で
絵や漫画に残そうと試みたりもしましたができませんでした。
もうあとはいつかあっちで再開する時を待つしかないかなと諦め、
存在自体も消えかけていましたが、
この作品を読んでから、なぜかあの時のあいつらが鮮明な姿で
またやってくるようになりました。衝撃的でした。
たまたま私がこの作品と何かが合っていただけかもしれませんが、
もう会えない人に会いたいと思っている人がいたら
試しに読んでみてもらいたい。そんな作品です。
片隅に生きる人々は伊集院先生の最初の作品だと思いますが、私にとりましても、とても思い出深い作品です。
フィクションなのに、ノンフィクションと錯覚するような感覚で読んでました。
主人公の頭の良さと全力さんの可愛さが魅力です。
この作品は伊集院先生がtwitterでの活動(DJ全力)から執筆活動へ移行した最初の作品だと思います。当初はtwitter上で連載したり、FANBOX内での限定であったり、音声配信などを取り入れたりされていました。twitterでのリアルタイム連載などの企画は、非常に新鮮で読者として新たな体験が出来る企画でした。自分としては初めは企画物として受け止めていた作品なのですが、出来上がって見れば魅力的なキャラクター、綿密に練られたシナリオ、緩急つけたテンポのよさ、非常にエンターテイメントとして完成度の高い作品となっています。またこの作品から広がるオリジナルな世界観は伊集院先生唯一無二です。まずこの作品から読んでいただきたいし、一つ選べと言われればこの作品を選びます。