第1章「シティ・ダルムシュタットの花嫁人形」
第2章「シティ・カシマの鍛冶人形」
第3章「シティ・プロヴィデンスの悪夢」
第4章「シティ・アデレードの学友人形」
第5章「シティ・ラクナウの郵便人形」
第6章「シティ・アイラの家政人形」
第7章「シティ・シェンツェンの司書人形」
幕間
第8章「シティ・キアヤの代理兵士」
第9章「自律免疫機構の狩猟人形」
終章「止まり木の療養所の看護人形」
※2021年12月15日より全話を無料公開しています
わたしは常に人形の味方である。
それが毒あるもの、害あるものであろうと、わたしはその全てを肯定する。
わたしの使命は、観察、理解、共感。
わたしは使命に忠実であり、わたしに託された人形の幸福のためにわたしの全てを捧げる。
――いつか、ここから飛び立つ日のために。
心を持つヒト型の道具、『人形』と総称されるヒューマノイドが、人類と共に生活する世界。
看護人形のハーロウは、心身に不調をきたした人形たちが入所するサナトリウム、『止まり木の療養所』に勤めている。
サナトリウムに入所する患者の苦悩は様々であり、同じ疾患は一つとして存在しない。
引き金を引けない代理兵士。パラボラアンテナに恋をする郵便人形。皮肉と毒舌と揚げ足取りばかりの家政人形。
ハーロウはそれぞれの患者が抱えるさまざまな『不調』に寄り添い、その苦悩へ共感し、人形としての幸福を、患者と一緒に探していく。
悲しい別れもあれば、晴れやかな別れもある、人形のための病院。
繰り返される出会いと別れを通して、ハーロウ自身もまた成長していく。
いずれ来たる世界の一部を切り取った、ちょっと切ない本格ヒューマノイドSF。