「ユーくん」
「よく似合ってるぞフィーネ」
「嬉しくありませんユーくん。嬉しくないんですユーくん」
フィーネが顔を赤くしながらもじもじと周りを気にしている。雑貨屋の大売り出しやら絵本の新刊やら闘技大会の開催告知までやたらと宣伝広告の貼り出された店内は人にもあふれており、ベレー帽を目深に被った彼女が聖女フィーネだとは誰も気づいていないはずだが、それでも人目は気になるらしい。
「意外といけるじゃないか、子供服」
「いけてません! いけてるはずがありません!!」
「自信を持っていい。いけてる」
「いけてないって言ってください……」
子供服、という概念を知ったのは割と最近のことだ。故郷のアル村では大人と同じ服の小さいやつを子供が着る、という感じだった。
それが都会に出てみてビックリ、子供に似合う専用の服というのが売られているじゃないか。王侯貴族のものというわけでもなく、多少裕福な家の子供であれば当たり前に着て歩いているのだからまた驚きだ。
果たして俺の目の前には、試着室の前で
空色のブラウス
ピンクのファーつきコート
膝上の水玉スカート
猫のアップリケ付きベレー帽
という今年流行の子供服に身を包んだフィーネが、こちらを涙目で見上げていた。
「ユーくんってもしかして一〇歳くらい年下の子が好きなんですか……?」
「違う」
違う。
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