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完結済 長編 SF / 恋愛

雨上がりに僕らは駆けていく Part1 世界に定められた“運命“を変える、1人の少女の物語。

公開日時:2022年4月5日(火) 23:19更新日時:2023年2月11日(土) 22:27
話数:698文字数:703,655
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あらすじ

 

「隕石衝突の日(ジャイアント・インパクト)」

 

そう呼ばれた日から、世界は雲に覆われた。

 

 

明日は来る

 

 

誰もが、そう思っていた。

 

ごくありふれた日常の真後ろで、穏やかな陽に照らされた世界の輪郭を見るように。

 

風は時の流れに身を任せていた。

 

時は風の音の中に流れていた。

 

空は青く、どこまでも広かった。

 

それはまるで、雨の降る予感さえ、消し去るようで

 

 

世界が滅ぶのは、運命だった。

 

それは、偶然の産物に等しいものだったが、逃れられない「時間」でもあった。

 

未来。

 

——数えきれないほどの膨大な「明日」が、世界にはあった。

 

けれども、その「時間」は来なかった。

 

秒速12kmという隕石の落下が、成層圏を越え、地上へと降ってきた。

 

明日へと流れる「空」を、越えて。

 

 

あの日から、決して止むことがない雨が降った。

 

隕石衝突で大気中に巻き上げられた塵や煤が、巨大な雲になったからだ。

 

その雲は空を覆い、世界を暗闇に包んだ。

 

明けることのない夜を、もたらしたのだ。

 

 

もう、空を飛ぶ鳥はいない。

 

翼を広げられる場所はない。

 

「未来」は、手の届かないところまで消え去った。

 

ずっと遠く、光さえも追いつけない、距離の果てに。

 

 

…けれども「今日」は、まだ残されていた。

 

それは「明日」に届き得るものではなかったが、“そうなれるかもしれない可能性“を秘めていた。

 

1995年、——1月。

 

世界の運命が揺らいだ、あの場所で。