この手記の筆者も、この手記そのものも、むろん架空のものである。にもかかわらず、昨今の創作界隈を見てみると、このような人物は、今の社会に存在しうるのみならず、むしろ存在するのが当然なようにも思える。
僕は、いわゆる拗(こじ)らせた人間の持つ性格の一つを、皆さんの面前へ引きだしてみようと思った。それは今だに、株クラスタや、創作界隈の人間によくみられる、典型的な人物像であるとすら言えると思うからだ。
『相場師の手記』と題する最初の断章において、彼は自分の主義主張を述べ、自分のような人物が現われた理由、否、現れなければならなかった理由について、説明しようと欲している。そして、次の断章においては、彼の妄想が生み出したある少女について叙述した、本当の『手記』が始まるのである。