二人が歩く先は、永遠に参道が続くように見えたが、
「はい、着いた」
井上坂が立ち止まると、目の前に出発した裏木戸があった。
戸を開けると、中では言の葉屋がみっちゃんとともにお茶をすすっている。
「お、終わったかね……おうおう、これはまた……」
「ユウどん、おかえり~……って! なんじゃそのボロボロ姿は! なんの襲撃を受けた!?」
みっちゃんの驚きはもっともだ。
「た……ただいま」
井上坂の上着を脱いだユウは、頭のてっぺんから爪先まで血にまみれ、服は破れてほぼ着ていないに等しい。
「…えーと、ちょっと転んだ」
「こんな時でもボケるんかいっ!
……って、芸人魂は認めるやが、ちょっとどころやないやん! え、救急車? AED!? ツッコミが追いつかん!」
裏手突っ込みをしたり、頭を抱えて悶えたりと、みっちゃんは忙しい。
そんな彼を尻目に、言の葉屋がユウの顔をじっと見る。
「まあ、派手に転んだんやねえ」
言葉は明るい口調だったが、そこに笑顔はなかった。
言の葉屋は、ユウの身体の具合を丁寧に診て、一つも怪我がないことを確認すると、
「疲れたろ、風呂にすぐ入りな」
初めて優しい表情をする。
念のため沸かしといてよかった、とユウに風呂の場所を指した。
「ありがとうございます」
ユウはペコリと頭を下げて風呂場へ向かった。
脱衣場には、大きな桶や波のような溝が彫られた板、壁際に設置された五段の棚には大きめのカゴが所狭しとあった。ここにあるものも、ユウが見たことのないものばかりである。
言の葉屋や井上坂がどのように生活しているのか、知識がまだまだ足りないユウには想像ができなかった。
「お風呂、入ろ」
眺めていても埒があかないと首を振り、ユウは服を脱ぎ始める。
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