今世の旦那と離婚しようと思い、まずはこの世界の常識について改めておさらいすることにした。
この世界は、日本とは違い貴族階級がある。
前世で読んでいたライトノベルにもあったような、男爵とかのことだ。
基本、結婚に関しては恋愛結婚はほとんど存在しない。
と言っても、急に「婚約者が決まったから結婚しろ」という無茶苦茶なものじゃない。
幼少期に婚約者を決められ、結婚できる年齢になるまで交流するというのが主な流れだ。
結婚できる年齢というのは、体が子供を作れる年齢のこと。
そう考えながら、桃色の本棚の前に移動する。
今世の旦那と別れるため離婚しようと決意したは良いものの、一番の問題はどうやって離婚するかよね。
本棚から、法律について書かれた本を取り出し、パラパラとページをめくる。
幸い、この世界でも離婚することは可能らしい。
前世の時の呼んだことがあるライトノベルの婚約破棄物のように、相手側が有責であればだけど。
少なくともあの男は、当主としての仕事も私に押し付けて妻でもない女とイチャコラしている状態だ。
この現状なら、今世の私の知識からして『職務放棄』と『不義』の罪に当たるはず。
なにしろ、この世界では妻や夫以外の異性と体の関係になることを禁止されている。
昔はそうでもなく意外に愛妾とかもいたらしいけど、ある性病の影響で一気に人口が少なくなってからはよほどの理由がなければ禁止になったんだ。
その理由というのは、夫婦仲が冷えきっていて跡取りを生むことをお互いが嫌がっていること。
あっちがどう思っているのかはわからないけど、妻以外の女とイチャコラしているだけで、もうこちらには愛情はないのだろう。
いや、仕事を押し付けているところを見ると都合のいい『家政婦』や『お手伝いさん』扱いなのかもしれない。
…………正直に言えば、今世の私はどうしてあんな男に惚れていたのだろうか?
私には、全く理解できない。
そう考えながら、ページをめくっていた本をぱたんと閉じた。
とりあえず、相手側__今世の旦那が有責なのは完全にわかる。
ただ、旦那が有責だと周囲に示す必要がある。
何しろ下手に事実じゃないことを騒げば、日本と同じで【名誉棄損】の罪になるし。
そうなって、逆にこちらが罰せられてしまうわけにはいかない。
そう考えると、今必要なのは旦那が有責であることを示すことができる証拠か。
元の世界と同じく証拠が必要なのはわかるけど、刑事ドラマのようにやっぱり状況証拠より物的証拠の方が強いのだろうか?
それにしても有責だと示す証拠…………元の世界だと探偵とかを雇って調べることができるけど、この世界では違うわね。
そもそも探偵と言う職業は存在しないし…………可能なのは記憶の中でお父様が使っていた密偵だろうか?
でも、さすがに離婚のための証拠探しにあの父親が協力してくれるとは限らない。
私の記憶の中だと、今世の父親は仕事人間で娘である私に対しても家同士を繋ぐための道具としか思っていなさそうだし。
そう考えると…………今の状況って結構難しいかもしれない。
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