処女航海
第一航海
第二航海
第三航海
――人魚は誓いを交わした人間に、航海の安全と永遠の命を約束する。
アルミリア国の辺境から一歩も出ることなく育ったアリオンは、ある日父の訃報を受け取った。
≪人魚≫であるアリオンを手に入れるため、海賊ディアギレフが海軍提督の父を殺したのだ。
あまりにくだらない、そんな理由でたった一人の家族である父を失ったアリオン。
絶望の中、少女はディアギレフに復讐を誓う。
世間知らずの少女は武器を手に、たったひとりで敵である男の海賊船≪海洋の秩序(オーシャン・オーダー)≫に乗り込んだ。
早々に正体を見破られるも、待っいたのは暴力的な支配ではなく予想外の歓待で。
そうして船で過ごしながらディアギレフの命を付け狙ううち、過去から続く男と自分の因縁にアリオンは気づいていく。
ディアギレフ、この男は自分の『何』だったのか。
≪――アリオンとディアギレフはずぅっと一緒にいるの≫
失われた過去の亡霊が自分の前に現われたとき、人魚はすべてを知り、思い出す。
優しかった父の裏の顔、どうして自分は船を降りることになったのか。
ディアギレフの言う、「俺の人魚」とはいったい誰を意味するのか。
幼い過ちの記憶と復讐に板挟みになりながら、少女が漕ぎだす「航海」の果ては。
「――俺が探していた人魚は、お前じゃない」
父を殺しアリオンからすべてを奪いながら、かつてと変わらず残酷なまま男は少女にそう言った――。