小春と日和。

〜僕に彼女(♂)が出来ました!?〜
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ユー・ガット・メール

公開日時: 2022年6月15日(水) 07:13
更新日時: 2022年6月16日(木) 16:10
文字数:1,454

「どうしよう⋯⋯」


 僕は今、パソコンとにらめっこをしている。


 ご飯を食べた後、お風呂に入った僕は日和への告白を思い出して悶えた。それはもうたっぷり一時間は。


 ちゃんと順序を考えてたはずなのに、言う時は頭が空っぽになってしまっていたことを絶賛後悔中であった。


 ──もっと良い言い方があっただろ僕のバカ野郎!


 後悔しても意味はないのだけど、とりあえず自分を叱っておく。


 ──世の中のカップルってすげぇな、告白とかどうやってやってるんだ? 


 普段はリア充爆発しろ! とか言ってる側の人間だったけどこのイベントをクリアしている事に賞賛しそうになった。


「いや、考えが逸れてるな」


 思考が現実逃避を始めそうになったので軌道を修正する。


「入りたくないなぁ⋯⋯」


 日和と会うのが怖くて仕方がない。もし、断られたらどうしよう。もし、逃げられたらどうしよう。もし、ブロックされてたらどうしよう。


 などなどいくつもの『もし』が頭の中に浮かんでしまう。


「ええい、ままよ!」


 そうして、迷いを抱えたままVRゴーグルを着けたのだった。




「⋯⋯さて、日和はいるかな?」


 シャイファンにインをした僕は、いつもの癖で真っ先にフレンド欄へと触れる。するといつもとは違うものが見えた。


「──メール?」


 そこには赤い丸に囲まれてメールが一件来ていますと書いてあった。差出人は、日和。


 それは紛れもなくパンドラの箱だった。いきなり強敵が目の前に現れた僕は、一旦その画面を消した。


「えぇ⋯⋯メール⋯⋯」


 日和と会って答えを聞くのとメールを見るの、どっちがハードルが高いと思う?


 個人的にはメールだと思う。例を挙げるなら合格通知みたいなもんだし、開けるも開けないも自分の意思に委ねられる。そんなものウキウキで開けるやつはいない。


 あぁ、ダメだ思考が変な方に逸れてしまってる。


「⋯⋯開けるか」


 気持ちを言葉に出し意思を固め、メールを開き、出だしの一文をじっくりと読む。


『とりあえず、ごめんなさい』


 ⋯⋯死んでいいっすか?


 一気に続きを読む気力が無くなったが文を続けて読むと意味が一気に変わった。


『とりあえず、ごめんなさい。急に落ちてビックリしたよね?』


 ──天使がいたわ。

 

 こうして一文毎に一喜一憂していたら身体がもたないので一気に読み切ることにした。


『とりあえず、ごめんなさい。急に落ちてビックリしたよね? けどハル君も悪いんだからね。いきなりビックリすること言うんだもん。それでね、ハル君の気持ちは嬉しいんだけど、私はまだハル君に伝えてない事があるの。一回現実世界で会って話せないかな?』


 会う? 日和と? 現実世界で?


 唐突な事に思考は停止をした。残念ながら僕の頭はハプニングに弱いらしい。


 ──そりゃそうだよな⋯⋯付き合うってなったらネットだけの関係じゃいられないもんな。


 それに、憧れの人に会える!


 そんな事を思いつつ、すぐさま「もちろん大丈夫です!」と返した。後は日和からの返事待ちだ。


 時間を潰すのは⋯⋯そうだな夏休みの課題でもやるか。




「⋯⋯まだ返ってこないなぁ、いつ日和はインするんだろ?」


 僕は時計をチラッと見てみる。今は短針が四を回ったくらいだ。もうすぐ太陽が仄かに世界を照らし始めるだろう。


 最近シャイファンのやりすぎで寝不足気味な僕は、うつらうつらと船を漕ぎ寝落ちをしそうになってしまう。


「⋯⋯まだだ、まだ寝るわけには」


 そう言いながらも頭がフラフラと揺れてしまう。それでも日和の為に頑張る事を決めた。


「日和ぃ、早く来てくれぇ⋯⋯」




 ──結局、太陽が上り始めても返事が来ずに僕は机に突っ伏してしまうのだった。


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