話をしたい事を伝える為に、僕はゲームの機能を使って日和の名前を探し出す。そして、日和の名前を見つけ僕は彼女を呼び出すことにした。
一言彼女へとメッセージを飛ばす。
「ちょっといいかな? いつもの場所で待ってるね」
そして僕は待ち合わせ場所へと移動を開始した。
待ち合わせ場所へと向かっている最中、日和からメッセージが飛んでくる。
「わかった! 今から行くね!」
その言葉を見て心が少し嬉しくなる。いつも彼女の言葉を見るたびに僕は喜んでしまう。
単純かもしれないけれど、僕は彼女が好きだということを再認識した。
雲を見下ろせる程の高さまで僕は山を登っていく。
今向かっている先は誰も知らないような隠れた名スポットで、僕達の出会いの場所でもある。
待ち合わせ場所に着くともう先に日和が待っていた。肩まである黒い髪を風にたなびかせながら空を見上げていた。
僕もつられて同じ方を見る。深い青を映し出したその空を見ているとどこまでも落ちていきそうな感覚を覚えた。
日和の元へと近寄りながらボイスチャットをONにする。日和と話す時はいつもボイスチャットでするようにしている。そっちの方がより近くに日和を感じるからだ。
「日和、おはよう」
「あ、ハル君おはよう! ってもう夕方だけどね」
日和のハスキーな声が僕の耳に届く。日和はクスクスと笑っている。
──あぁ、やっぱり好きだな。
そんな感情が頭の中で駆けめぐった。
「で、用事って⋯⋯なに?」
「うん⋯⋯あの⋯⋯」
首を傾げている日和に対して僕は言葉を詰まらせた。動悸が激しくなるのを感じる。息が荒くなっていく。頭の中に思い描いていたプランなんか全て吹き飛んでしまっている。
──そうだ、僕は今からこの子に告白するんだ。
僕は覚えていたその一つだけを頼りに必死に言葉を紡ぎ出す。
「あの、ずっと前から好きでした! 付き合ってください!」
そう一息に言葉を吐き出した後、大きく息を吐いて吸った。
そして、ようやく酸素が頭に回ったところで僕は自分が告白したのだと気付く。
そのことに身体が震える。日和の顔はもうまともに見れない。
「え⋯⋯」
日和が息を飲んだのがわかった。僕の告白は予想外の事だったのだろう。
僕は日和からの返事を待った。やがて、日和はそっと口を開いた。
「──ごめんなさい、少し考えさせてください」
そう言い残し、日和は僕の前から姿を消す。後に残された僕は空を見上げ、そしてその場に倒れ込んだ。
「死んだわ、僕」
結果がわからないままで終わってしまった僕はその場で放心するしかないのであった。
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