「魔法陣…………」
「アニメとかゲームに出てくるやつです」
ここでは現実だけどね。
「魔法陣…………」
少年は記憶を探るように考え込むと、「いやいや、そんな馬鹿な……」「あり得ないだろ……」とぶつぶつ言っている。
「魔法陣、あったんですね」
「………あったような気がする。視界が光に包まれたとき、足下に沢山文字が書かれたもの、あれが魔法陣なのか?」
少年が―――光が自信なさげに視線をさ迷わせ、それから、子供のような視線で見つめてくる。
「なるほど、じゃあ魔法陣で召喚したのに、召喚者のところじゃなくてこの森に落ちてきちゃったんだ」
これは今ごろ血眼になって探してるな。ガリレ、隠蔽魔法かけてくれてるよね。ただ縛り上げただけなら、許さん。
「別に落ちてきたわじゃないけど、森に倒れてただけだし」
「そんな事どうでもいいから、ステータスを見せて」
「ステータス?」
「そう、ステータス。召喚されたんだから、それくらいできるはず。ステータスオープンとか言えば開けるんじゃない? どこかに冒険者か勇者って書いてない?」
光はまだ、半信半疑のようだったが、言う通りにステータスを開くと、驚いた顔でじっと確認していく。私も横から覗き込む。
この世界の人間でも、自分のステータスを見られる人間は限られている。鑑定魔法が使えるか、チートな設定で落ちてきた人間だけだ。
そして、やっぱり光はチートで勇者だった。
「俺が勇者――――」
「そうみたいね」
未だ呆然としている光をよそに、手早く縄を解いていく。もう暴れたりしないだろう。
「誰が俺を召喚したんだ?あの男か?」
あの男とは、光をこの家に案内して、手足を縛った男のことだろう。
「ガリレじゃないわ。彼は魔術師。趣味で魔法の研究をこの森でしているの。私は彼にこの森に落ちてくる、異世界人を保護するように依頼している。あくまでも保護で、決して監禁ではないわ」
あえて、ガリレがこの世界で最強宮廷魔術師であることは言わなかった。
「保護って、どうしてだ?」
「どうしてって、決まってるじゃない。この森は魔物がうじゃうじゃいるし、普通の人間じゃ1時間だって生きていけない。光は勇者だけど、今は魔法も剣も使えないでしょ。まあ、同郷のよしみね。いい、覚えておきなさい、どんなにチートでも人間一人じゃ生きていけないの」
もちろんそれだけじゃないけどね。
「異世界人を保護って、そんなに何人も落ちてくるのか?」
光は縛られていた手首をさすりながら、聞いてきた。手加減無しで縛られていたのだろう、赤いみみず腫れが浮かんでいる。
後でガリレが治してやればいいのだが、デモンストレーションとして調度いい。手を伸ばし光の手首を掴んで、治癒魔法をかける。
「うわ!!」
あわてて手を引っ込めて、光はその場に立ち尽くす。
「これは治癒魔法で、結構貴重で難易度高いから」
読み終わったら、ポイントを付けましょう!