女神ローザ様へ、神官ジュストが賛美歌を歌わせていただきます。
歌詞カードを胸に抱いたのは形だけです。僕は、一字一句覚えているから見る必要はないので。
スリニマ大聖堂。
町民を集めて少年聖歌団を迎えてはじまった大合唱。僕は神官だから、祭事を執り行うだけでいいのですが、歌にも魂を込める必要があると感じているんです。
なぜって、女神ローザ様は母なる大地そのもの。僕はなにも父から神官を継いだだけのエリート牧師ではないのです。女神ローザ様のことを『聖なる御心の書』を読むことで理解し、愛しているからこそ、神官の職に就いたのです。
賛美歌は、神ローザ様の尊厳を簡単に理解できると思うのです。僕は、それを伝えていきたいのです。使命とも言えます。
パイプオルガンが荘厳な見た目とは裏腹に、控えめな調子で奏でられる。見習い牧師が指を運ぶおぼつかない演奏でも、元々が質素な曲調なので教会内は音色を単純に楽しむことができます。
柔らかい音色。息を吸い込みます。だけどれ、力みません。賛美歌は、高らかに歌いません。ローザ様の世界は、とても色彩豊かで静かな世界なんです。
僕は、宗教というものが誰かに強要するものだとは思いません。世界は静かに横たわっています。そして、女神様が傍にいます。それだけでいいじゃないですか。
木立に人影を見る。恐れることなかれ。人か獣か。
女神の降り立つときにこそ。薔薇の花びら舞い落ちる。輝く黄金の髪をなびかせて。
御足元には芽が二つ。男と女の二つの種子。
やがて木々に果実が実るとき。木の実より人の子生まれ落ちん。
女神は黄金の椅子に鎮座して。紅蓮の瞳で厄災のみ見つめ。
異形の扉を封じ続ける。
賛美歌はとても短いです。女神ローザ様は、賛美歌を歌われることにより厄災から目を反らすことになるのを好まないとかで。
さらに、女神ローザ様は信仰を必要としていらっしゃらないと僕は思っています。気さくな女神様であると感じますね。なぜなら、信じたい人は信じなさい。信じたくない人は信じなくてもけっこう。というようなおちゃめな女神様です。
文献では、信仰が力を与えるのではないので、家族を愛せと書かれていますので。僕は博士号も取るほどの女神ローザ様ファンですけども、女神ローザ様のことを調べるほどに、僕は確信しているのです。
女神ローザ様は、ツンデレであると。
いや、失礼しました。
歌が上ずって、パイプオルガンの見習い牧師を驚かせてしまいましたね。彼の演奏の邪魔をしてしまいました。僕としたことが。
えっと、賛美歌の次は僕が説教をするのが集会の習わしですけども、今日の話は熱が入りますよ。
女神ローザ様のパンツの色を想像してしまって。
あ、これは流石に老若男女がいる教会内では難しいテーマですね。では、胸の大きさについて語りましょうか。宗教画のローザ様のお胸はどれも豊満です。
いや、これもまずいかもしれませんね。では、いつも通り説法でも話しましょうか。はい、注目して下さいね。
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