ハーフタイム。
両チームが一旦整備ルームに引っ込んだのでフィールドは静けさを取り戻していた。
「あっし大活躍でありやすね!」
「凄いよ炉々ちゃん、私もタッチダウンしてみたいなあ」
「須美子ちゃんならパワーでごり押せそうでありやすけどね」
控え室の片隅では炉々の自慢大会とそれを聞く須美子という構図ができていた。
どうでもいいので祭は後半に向けての対策を講じる。
「みんなお疲れ様、前半で十八点も取れたのは大きいわ」
「もう皆すごすぎぃ! あたしテンション上がりすぎて濡れてきそう」
大蔵が奇妙に身体をくねらせて何とも言えない微妙な雰囲気となってしまった。
「ちなみに影浦は友恵と交代して控えだから」
「嘘ぉぉぉぉぉぉぉ」
「えっと……ごめんなさい」
なんでもレオニダスの駆動系にダメージがあるらしい。出してもいいが、パフォーマンスが下がるのでオススメはしないと整備士長の聖が言っていた。
ゆえに友恵のポルシェボーイが交代で前に出るのだ。
「せめて、あたしの盾を持っていってね!!」
「あ、はい」
実は既に祭の指示で武装チェンジしてあるのは秘密。
「さてと、問題は後半戦ね。あっちは万全の体制で迎え撃ってくるだろうし、何よりエースの投入が予測されるわ」
「あの自称忍者ですね」
「いーや! 奴は本物の忍者だ! 我が認める!」
「はいはい、ややこしくなるので兄さんは下がりましょうね」
気を取り直して。
「問題はエースよ、残念だけどエース機の性能は未知数なのよ」
「過去の試合動画とか見てもわかんなかったんですか?」
「それがね宇佐美君、今のエース機は予選が始まってから使いだしたみたいで記録が無いのよ」
「通常、試合記録の動画は一ヶ月経ってから公開されますので公式には存在しないのです」
厚の解説によると、試合の公式動画はまだ観れないが、自分で撮影やスクレコしたものなら公開したり渡したりしないという前提で見れるとの事。
幸い予選の試合は全て録画してあるのだが。
「エース機が出てきたのは一回だけなのよね」
「そうなんだ」
「五戦目のボートキャシー戦の時だけ、そのせいで全然データが取れなくて。わかってるのは名前がイガグリ弦太郎てだけ」
「甲賀忍者なのにイガなんだ」
「そこは突っ込んじゃだめ」
録画した試合動画をみても性能は予測できなかったそう。ただ一つ、イガグリ弦太郎が行動を起こした時は不自然なほど上手く事が進んでおり、なすがままだったらしい。
「忍術でも使ったのかなあ」
「案外そうかもよ、まぁとにかく後半戦も頑張るわよ」
一方、甲賀バジリスク側では。
「色々あっけど、前半を十八点で抑えられたのは僥倖やで」
「皆の者ご苦労でござる」
普段のノリとは違い、バジリスクのハーフタイムは静かなものだった。リーダーの高秀が仕切り、エースの太郎が合いの手をいれる。
ただそれだけでスムーズにすすんでいる。
「やはり気を付けるべきはハミルトンやな、ポイントゲットだけやと思っとったらアシストも上手いやんけ」
「あの速度でアシストと妨害もできるとなると脅威でござるな」
「インビクタスアムトの警戒すべきなんはハミルトン、それと今のところ大人しゅうしとるけどリリエンタールやな、この二機が中心となってチームを動かしとる」
「となるとどちらか一機を集中して潰すべきでござるな」
「せやなあ、そうしたいけど中々守備も硬いしな。特にセンターフロントのジックバロンとかバケモンやろ! ビクともせぇへんやん」
余談だが、ジックバロンの評価は内外問わず高いもので、どうやればジックバロンを倒せるかスレも少ないながらも存在する程だ。
それほどまでに、硬い、デカい、強い。
「まあジックバロンも警戒ちゅーことで、太郎は他になんかあるん?」
「ふむぅ、そうでござるなぁ。しいていえばソルカイザーとは正面きって戦いとうござる」
「お前の相手になるやつとは思えんけどな」
「ソルカイザーのパイロットとはシンパシーを感じてるでござる。ゆえに」
厨二仲間だからというわけだ。
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