Robotech Touchdown 〜ロボテック タッチダウン〜

失った足を代替して頂点を目指す
芳川 見浪
芳川 見浪

Preliminary Contest ⑭

公開日時: 2022年11月10日(木) 19:13
文字数:2,043

 前半残り数分、インビクタスアムトはもう一度タッチダウンを取りたい、しかしバジリスクは確実に守り切りたい。まさに矛と盾の争い、戦術が真逆の二チームの攻防は一進一退の泥沼だった。

 

『ボールはフッカーよ! アリで止めて!』

『まかせや!』

 

 バジリスクのフッカーにパスが回された。守りを固めるのがみえているので、おそらくフッカーは逆サイドか後ろへパスをする事だろう。

 現在はインビクタスアムトのフロント二機がバジリスク側の陣営にくい込んでいる。

 ここでボールを奪ってエルザレイスに繋げば、くい込んだフロントが敵陣の中で壁となってくれる。是が非でもボールを取りたいが。

 

『あかん! 早い!』

 

 武尊が向かう前、というよりパスを受けたと同時にボールを後方へ流したのだ。

 

『どうやらさっきの入れ替えでレギュラーが何人か出てきたみたいですね。動きが断然違います』

 

 厚の冷静な分析は今のところ何の慰みにもならないが、危機的状況を理解するうえでかかせない。

 インビクタスアムト側はまだ知らないが、何人かではなく全員がレギュラーメンバーである。そしてこれは皆が気付いているが、後半からエースが投入される。

 

『待って、後半からエースが来るのなら……鳥山! 心愛! 一番ダメージの大きいのを探って!』

『かしこまりました』

『私も!?』

『心愛はネコチャン使って俯瞰できるでしょっ!』

『あ、そっか』

 

 言われて直ぐにクリシナからネコチャンが飛び出してフィールドの上空を飛び回る。ネコチャンに搭載されたセンサー類で一番ダメージの大きい機体、もしくは動きの鈍い機体を探す。

 厚に関しては長年の勘を期待してのものだ。

 そして二人が見つけるのはほぼ同時だった。

 

『みつけたよ!』

『私もです』

『多分、タイトエンドだと思う』

『私から見てもそのように感じられます』

『OK、全員タイトエンドを狙ってタッチダウンとるわよ!』  

 

 後半からエースが投入されるなら誰と入れ替えるだろうか。オーソドックスにダメージの大きい機体か、疲労の多いパイロットと入れ替えるだろう。

 だからこそ、このタイミングでしか取れない攻撃方法なのだ。

 

「じゃあボールは僕が取るよ」

『いけるの? 宇佐美君』

「取るだけならね」

 

 ボールが後方へ流れ再び前へ移動を始めた瞬間、ハミルトンが地面を蹴って全力で疾走する。ほんの数秒でレオニダスがブロックしているフロントとの距離を詰めると。

 

「大蔵さん!」

『お任せよ!』

 

 昨日、宇佐美は大蔵とのコンビネーションを思いついて当人と話し合っていた。それゆえ大蔵が全てを察して行動に移すのはとても早かった。

 まずレオニダスが相手のフロントを一度突き飛ばし、再び組み合うまでの数秒で大盾を後ろに配置して斜めに傾ける。上部を片手で支え、もう片方の手で相手の胸を抑える。

 当然片手では抑え続ける事は不可能だが、一瞬だけでも動きを止めることができる。

 

「一、二、三!」


 宇佐美は歩数をカウントしながら三のタイミングで大盾に乗る。そのままレオニダスの肩に踏み、相手の機体を踏み越えて反対側へ、目の前にはボールを持つ機体があった。ポジションはなんだっけかなと思いながら手の平に仕込んだある物を展開する。

 しかし相手も判断が早くボールをパスして逃れようとした。

 

「読んでたよ!」

 

 パスをする事はわかっていた。その方向も大体わかる。だからこそフロントを踏み越えた時に、さりげなくライドルから借りた折りたたみ式ロッドを展開して地面に突き刺した。

 そのまま棒高跳びの容量で再び跳び、ブーストを駆使して空を飛ぶボールへ向かう。

 空中で邪魔をしてくる機体は敵にいない。安全に片手でキャッチしてから狙いのタイトエンド、つまりダメージの大きい機体だ。

 たまたまそこにはアリがいる。そして後ろにはヘイクロウが付いていた。

 

「武者小路さん!!」

『あっしでありやすか!?』

 

 ハミルトンが空中からヘイクロウへパスを回す。後は細かいやり取りを必要としない。

 武尊が速やかにタイトエンドへ突進して青天状態にする。一瞬戸惑いはしたが、直ぐに自分のやるべき事を理解したヘイクロウがボールを持って走り出す。

 超えるのはフルバックのみ、しかし残念ながら炉々は今までタッチダウンを取った事がないため、ボールをもったままフルバックと対峙した時のやり方を咄嗟に思い浮かばない。

 

『ど、どうするでありやすか!?』

「武者小路さん! センスバチを!」

『おお!』

 

 その発想はなかった(自分の機体の特性なのに)と言わんばかりに、空いた手でセンスバチを取り出して展開する。持ち手を折る事が出来るので、持ち手が折れた団扇みたいな形になった。

 センスバチでヘイクロウを隠しながら相手のカメラを狙って押し付ける。

 フルバックがほんの数秒だけヘイクロウをカメラから外した瞬間を狙って左から抜ける。フルバックはレーダーをみながらヘイクロウのいる方向へ腕を伸ばしたが、空振りで終わる。

 

『タッチダウン!! これでインビクタスアムトは十七点を獲得です』

『キックで追加とれば十八点、前半でここまで取れれば上々でしょう』

 

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