ピアノを弾いていたら出会った金髪の少女幽霊が、実はものすごく歳上だった件

メンフィスの少女クララ
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プロローグ

公開日時: 2022年12月23日(金) 13:43
文字数:380

『もー! なんで毎回邪魔するの!』

 目的地は目と鼻の先。しかし、進みたいのに進めない。

 黒猫は尻尾を立てて「フー!」とこちらを威嚇している。

 いつもそうだった。

 その子がいる場所に行こうとするたびに、この黒猫が邪魔をする。

『ただちょっとお願いしに来ただけなんだって! 別に取って食べようってわけじゃないんだから。ねっ、通してよ!』

 言葉が通じればどんなに楽か。

 黒猫は「ウー!」と更に警戒を強めた。

『もう、わかった、わかったって。今日は帰るから、そんなに怒らないでよ』

 そう言ってジリジリと後退り、適度に距離が取れたところで踵を返した。

 これで何度目だろうか。今回も残念ながら接触ならず。

――次こそは、絶対に直接会ってお願いするんだから!

 悔しさのあまりか、拳に力を入れてそう強く決意する。

 そして、夕暮れの日が差し込む廊下を歩きながら、自身の姿をキラキラと霧散させその場から離れた。

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