高校生家政夫の俺がチートなロリっ子たちに囲まれちゃってました。

矢田あい
矢田あい

第9話 第一の事件! 俺たちはクレイジー?

公開日時: 2020年9月3日(木) 20:05
文字数:2,136

◾隆臣


「一発ぶちかすのがやっとってとこか。やつらに近づくのは危険すぎる」


 俺とエースは木の上で尚子とハートが小屋の方に歩いて行くのを見ていた。

 さきほど謎の爆発でやられたのも、ハートの火炎弾をくらったのも、囲まれた炎から脱出した瞬間に作った分身で、俺とエースは木の上で様子をうかがっていたのだ。


「俺たちも移動しよう」


 そう言って俺は木の上から飛び降り、エースは浮遊能力でゆっくりと地面に降り立つ。

 そして尚子とハートの後を追いかけた。


「さて、これからどうやってあいつらを倒す」


「向こうにも2体の分身を配置しているから、挟み撃ちにしよう」


「それでいこう。じゃあこっちにも何体か分身を頼む」


「了解」


 エースがそう返事をすると、俺の身体から光の粒子が現れて、それが集まりもう数体の俺の分身が現れた。

 分身は俺の体内由来の魔力粒子を元にして作られるので、数には限界があるが、エースはその分身の身体能力を強化することもできるし、複数の分身を遠隔から操作することもできる。


◾尚子


「来たか……あれは分身か?」


「あたしも準備おっけーだよ」


 私は小屋の2階の窓から、分身が歩いてこちらに近づいてくるのを見ていた。

 ハートはそう言ってからこっちに歩いてきて、私と一緒に窓の向こうに目線をやる。

 ちなみにハートには階段のところに火薬を敷いてもらった。

 やつらがそこ入ってきたら、爆発させて行動不能にするためにだ。


「いいか? 確実に仕留めるためにギリギリまで引きつけるんだ。最低でもエースのは無力化しろ」


「わかってるってば!」


「ならいい」


 すると、


 ――バリン!


 何かを投擲され、窓ガラスを割られてしまった。その破片がハートの頬を切る。


「いたっ! 石ころ投げてきたぁ! うわ血がぁ……」 


 ハートは目をうるうるさせて頬から垂れる血を手で拭う。


「大丈夫か?」


 私はハンカチを取り出して、ハートの頬の血を拭いてあげる。


「あたしは大丈夫だよ。でも尚子のその手……」


「ああ、これくらい心配いらない」


 ハートの目にガラス片が入らないように咄嗟に手を伸ばしたため、ガラス片が突き刺さってしまったのだ。私はそれを抜き取り、小さくほほえんでやった。

 ハートは申しわけなさそうに小さく頷く。


 ――ガタンッ!


 物音がした。


「来たか。構えろ」


「うん!」


 ハートは決意のこもった返事をしてくれる。

 ゆっくりと部屋の扉が開かれる。

 私たちは唾を飲み込んだ。しかしそこに人の影はない。


「誰も……いない?」


 ハートは首を傾げた。


「ああ、猫だ」


 真っ黒い毛に覆われたただの子猫だった。


「チッ……脅かしやがって」


 黒猫はてくてく私の方に近づいてくる。


「近づくんじゃねぇ! 邪魔くせーんだよ!」


 もちろん猫に人の言葉は通じない。黒猫は私の足に顔をすりすりとこすりつけてきた。


「ちくしょう。ハート、こいつをどうにかしてくれ」


「うーん……あっ!」


 ハートはしばらく考えた後、髪の毛を結んでいたボンボンを外して、それをポイッと投げた。

 それで猫の注意を引こうという考えである。

 しかしながら黒猫はそれに対して一片の興味も示さなかった。

 私たちが猫に気を取られていたそのとき、2階の入口のところに2体の分身が入りかかっていた。


「まずい! 撃てッ!」


 ハートが火炎弾を放つのを躊躇ったその一瞬を、分身の1体がハートに肉薄し、拳で頬を殴った。

 ハートは後方へぶっ倒れ、そのまま尻もちを着く。

 ハートの気が乱れ、火炎弾が消えてしまった。

 もう1人の分身もすぐさまリーチへ入って、私の腕を掴んで床に押さえつけてきた。


「くそっ! 放しやがれ!」


 暴れ回るが拘束からは逃れられない。


「ちくしょ〜」


 ハートは目をうるうるさせて叫んだ。


「観念しろ。お前らの負けだ」


「ぐぬぬぅ〜! まだ負けてないっ! あたしたちが負けるはずぅ〜いたたたた!」


 分身はハートの肘を背中の方にぐぐぐと上げた。


「ううぅ……!」


「チッ!」


 大きく舌打ちをして私は力を抜き、


「……私の負けだ。離せよ変態」

 と。


「変態じゃねーよ! それに、まだお前らを信じられないからな。しばらくはこのままにさせてもらうぜ」


「クソ野郎が。ハート、戻ってこい」


「……うん」


 ハートは白い光の粒子になり、私の体内へと消えていく。


「これでいいだろう?」


 するとちょうど、やつの本体とエースが小屋の2階にやってきた。


「話を聞かせてくれれば解放してやる」


「そんなに私の身体が触りたいのか? この変態!」


「分身と感覚は共有されていない。俺の知ったこっちゃない」


「死ね」


「お前、普段からそんな口悪いのか? 生徒会長なのに?」


「貴様にだけだ。私は普段は優等生だからな」


「それ自分で言う?」


「どうだっていいだろ!」


 私はあからさまにうざったそうに言い、燃える林に目を向けた。


「色々聞かせろ」


 すると、


「こちら消防です! 誰かいますか?」


 足音とともに消防士の声が聞こえてきた。


「話はまた後からだ。見つかったら面倒なことになるからな。見つからないように移動しよう」


「どうやって?」


「簡単だ」


 そう言って野郎は私をお姫様だっこし、割れた大窓から飛び降りる。


「き、貴様ッ! 何をッ!」


「こうすれば手っ取り早いだろ?」


 さらには平然と着地してみせた。


「まったく……クレイジー過ぎるぜ、お前たち」


 私はそうつぶやいていた。



 To be continued!⇒

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