高校生家政夫の俺がチートなロリっ子たちに囲まれちゃってました。

矢田あい
矢田あい

第11話 第一の事件の真相

公開日時: 2020年9月8日(火) 13:05
文字数:2,364

◾隆臣


 そんなこんなで、ようやく本題に移った。


「じゃあ質問だ。まずは1つ目。お前らが墓を荒らした理由だ」


「話せば長くなるぞ?」


「手短に頼む」


「わかった。順を追って簡潔に説明してやろう。まず私の父は暴力団――豊園とよぞの組の組長だった」


「暴力団?」


 と、俺。


「聞いたことあるだろ? テレビとかネットニュースで」


「はい。わたし、新聞で見たことがあります。たしか……3ヶ月くらい前に」


 凛はこめかみに指を当てて思い出しながら言った。


「事の発端は3ヶ月前だった。イタリアから来たマフィアとの間でいざこざがあってな。それで父はマフィアのボスに殺された。父は死んで当然のことをしてきた人間だったから、私は全然どうとも思わなかった。しかし、ボスが殺したのは父1人だけじゃなかった。その場にいなかった私をのぞいて、母も妹も――家族全員が殺された。はらわたが煮えくり返りそうだった。そのとき思った。ボスをぶち殺すっな。葬儀のとき、父の部下から父の遺書と遺物を受け取った。その遺物こそが透き通った虹色の魔力石のペンダントだった」


『虹の魔力石!?』


 俺、凛、エース、ジョーカーは声を揃えて驚いた。

それもそのはずだ。魔力石というのは魔力源由来の魔力粒子が高密度で結晶化したもので、携帯できる魔力源のようなものなのだから。

 魔力石には色でグレードが定められていて、虹色が最高位となっている。


「ああ、遺書には『然るべきときに使え』とだけ書かれていた。それから少し過ぎて2ヶ月前、台場のカジノでディーラーをやっていたとき、珍客が来た」


 この際誰も何も言わなかった。カジノ法では20歳未満の入場を禁止しているのが、暴力団の娘で現マフィアの幹部とかいう尚子には、たかが違法では何も言えない。


「そいつはヴェネツィアマスクなんかを着けた奇妙な小学生くらいの小さな女の子だった。そいつは私に近づいて、耳元でこう呟いた。『わたしに勝ったら、君の家族のカタキの居場所を教えてあげよう。もし尚子、君が負けたのならば、やつの組織に下ってもらおう』とね。

 そんな私にしか得のない賭けに私は当然乗った。そしてそいつとヘッズアップでテキサスホールデムをやった。私はイカサマの天才だと自負していた。その女と戦うまではな。あらゆるイカサマを使って私はフラッシュを作り出した。そしてやつにはストレートを作らせた。だがその結果は私の敗北。何故だかわかるか? それはやつが私ですら見破れない高度なイカサマを使ったからだ。『イカサマを使っただろ?』と問い質すことは簡単だ。でもそれは自分が最初にイカサマをした、ということを宣言するようなもの。

『バレなきゃイカサマじゃあない』なんて言葉があるが、私とそいつの間ではまったく違う。『バレてもイカサマじゃない』んだ。笑えるよな。もはやポーカーじゃなくて、イカサマ見破りゲームなんだからよ。

まぁ、ともかく私はそいつに負けた。結果的には私はカタキの組織の軍門に下ったわけだが、なんとか家族のカタキには近づけた。あの少女には本当に感謝している」


 尚子はそこまで喋ってから紅茶を一口飲んで、さらに続ける。


「私はガイスト使いの幹部エミリー・ウェーバーと協力して、あの神社の地下の墓にあるとされるロザリオを手に入れるという任務を受けた。その事前準備として、まずは神田明神を燃やして人払いをした。それが3日前のあれだ。勘違いしてるかもしれないが、ハートの能力は火をつける能力でも、爆発を起こす能力でもなく、物体の温度を上昇させる能力だ。普通の墓なら火薬をまいて爆発させれば吹っ飛ぶ。だがあれには特殊な魔術的結界が張ってあって、そんなんじゃビクともしなかった。そのとき、首からかけていた虹の魔力石のペンダントが急に発光して、光は墓の方に吸い込まれていったんだ。しばらくして光が収まると、ペンダントは美しい虹色ではなくただの石ころに変わっていた。何が起こったのか、私とハートにもエミリーとそのガイストのクイーンにもわからなかった。墓にはなんの変化もなかった。もちろん結界にもな」


 尚子はここまで言うと、ふぅと息をついてカップに入ったミルクティーを飲み干し、カチャンとソーサーに置く。


「そして翌日、私は貴様らに負けたってわけさ」


「なるほど。だいたい理解できた。つまりお前は家族の仇討ちをしようとしていたわけか」


「その通り。そして1つ忠告してやろう。貴様はこの私を倒した。ということは、組織は貴様らを外敵と見なして、駆除しに来るだろう」


「殺されるってことか?」


「ああそうだ。たった3ヶ月だったが、私はボスがそういうことをするやつだと確信している。幹部を送り込んで殺そうとするだろう。

そこで提案だ。私とハートは仇討ちを……そしてお前たちは幹部に襲われる。組織と戦うという方向性は同じだ。ここは1つ、手を組まないか?」


 尚子はそう提案してきた。


「「……」」


 俺とエースは無言で顔を見合わせる。

 俺は、


「そうだな。たしかに利害は一致している。だが一晩考えさせて欲しい。まだお前のことを信用しているわけじゃない。今は協力しようとか言ってるけど、実際は裏切ろうとしているんじゃないかとも思っている」


 と、正直に答える。


「早めに答えを出すんだな。さもないと危険だぞ」


 尚子はそう言ってソファから立ち上がって玄関の方へ向かい、うつらうつらしていたハートも目をこすって尚子の後について行く。眠たかったのか。そりゃあよくわからん話されたらそうなるよな。


「それじゃあまた明日、今日と同じ時刻に答えを聞きに来る」


 尚子は玄関のドアを開けながら言い、


「みんなばいば~い。ふにゃ~ん」


 ハートはふにゃふにゃと、見送りに来た凛、ジョーカー、エースに手を振る。

 それに対して3人も微笑んで手を振り返した。

ほほえましい光景だ。



 To be continued!⇒

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