彼とは遊びのつもりだった。
顔はそれなりのタイプで、話も合う。退屈な学校生活の暇つぶしにでもなればいいと思ってた。どうせ、来年の春になったら卒業するんだ。大人になるなんてあっという間で、いつまでも子供じゃいられない。
幼稚で、バカみたいに正直で、叶いもしない夢ばっか追いかけてさ?
いつもそんなだった。「インターハイに行きたい」って、いつも私に話しかけてた。そんな彼の隣にいると、少しだけ子供になれる自分がいた。背伸びしてもダメだってわかってた。自分の可能性にはとっくに気づいてて、明日なんて、来なくてもいいとさえ思えて。
一体、彼と何度寝ただろう。
お互い、初めてだったよね?学校の帰り道、すっかり夜が更けた街の中で、一緒にどこかに行けたらと思ってた。別に好きでもなんでもなかった。興味本位といえば興味本位で、飽きたら飽きたで、それで全然。誰かとヤることが、特別なことだとは思えなかった。誰かと一緒に寝ることが、いけないことだとは思えなかった。違う世界を知りたかった。昨日まであったものを、少しだけ遠ざけたかった。それ以上でもそれ以下でもないんだ。きっと、——あの頃は。
私の下着に手を伸ばす彼の手が、昨日よりも早くなる。目を閉じて、ゆっくりと息を吐いて。お互い、何をしたいのかはわからなかった。私のアソコに押し付けてくる彼の体は、まるで動物みたいに激しく動いてた。最初は痛かったよ。ダメだっていってんのに、彼は止まんなくて。
ちょっとしたノリだった。日常を変えてくれる何かが、欲しかった。何でもよかった。昨日までになかったものを見つけられるなら、——何でも。
堅苦しいのは嫌いで、ややこしいことには巻き込まれたくなくて。
でも、じっとはしていられなかった。だからあの夜、彼を誘ったんだ。そこに大した意味なんてなかった。大袈裟なことを言うつもりはなかった。できるだけ「今日」に近づきたかった。明日よりもずっと早い時間。見過ごしてしまいそうなくらいに、通り過ぎる日常の最中に。
なんでいなくなったのかなんて、聞くつもりはないよ。
ただ、教えて欲しい。
あの夜の向こうに続いていく道で、一緒に歩いたこと。
あんたが欲しかったものが、なんだったのかを。
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