共通点があると自然と親近感がわくものだ。
ソフィーと名乗った女性との会話は弾んで、俺が何でこの村にきたのかまで話すこととなる。
「え、それじゃ、恋人を取られた上にパーティから追い出されたんですか?」
「情けない話だけどね」
一言にまとめると、なんとも情けない話だ。
あまり他人に話すことでもなかったかなと、反省しつつ苦笑いを浮かべていると、ソフィーから意外な発言が飛び出した。
「そんなことないですよ。私も同じだったからビックリしただけです」
こんな美人を振って追い出す男がいるってことか……!?
なんだそれ。まだ出会って僅かな時間だが、それでも彼女は優しく気遣いできる女性だと言うことは分かる。俺から見れば外見も内面も完璧だ。正直、追い出した男の脳を心配するレベルだぞッ!
「恋人に振られて教会に追い出されたってこと?」
「私の場合は親が決めた婚約者でしたけど、別の女性と結婚すると言われて、その後、教会からも追い出されてしまいました」
「それは……」
大変だったな。とは言えなかった。
女性一人で生きて行くには厳しい世界だ。慰めにもならない言葉をかけても追い詰めるだけだ。
そんなことを思っていたが、ソフィーはもっと強い女性のようだった。
「今は、自由に行動できて楽しいです。こうやって、新しい出会いもありましたしね。今日は良いことばかりです」
俺に向けられた笑顔に見とれてしまった。
美しいだけでなく、芯が強い。
勇者リヒトについて行ったコレットや他の女たちとは全く違う。比べてしまうのが失礼になってしまうほど、魅力的な女性だ。
ここに住むと言っていたし、これからもっと仲良くなりたい。そう思うには十分すぎる理由だった。
「俺も、今日で会えて良かったと思っている。この村では新参同士、仲良くやっていこう」
手を出して握手をしようとしたとところで、ドンッとわざと大きい音をたてながら、俺が注文していた料理が置かれた。
「ラルス。ナンパするなら、よそにいってもらうか」
顔を上げると、顔にいくつもの切り傷があり、頭がハゲている親父が立っていた。
「パパさんよ、料理を運ぶのはヘルミーネちゃんの仕事じゃなかったのか?」
「お前にパパと呼ばれる筋合いはねぇ。アイツは、別の客に料理を出している」
「俺だったらムサイお前でもいってことか?」
「当たり前じゃねぇか。むしろ、娘なんて近づかせたくねぇ」
急に始まったきつい言葉の応酬に、ソフィーがアワアワしていた。
「この口の汚い親父はココの亭主で、数年前に少し関わりがあってね。知った仲なんだよ」
紹介の仕方が気に入らなかったのか、不満そうな顔をしていたが知ったこっちゃない。
なんとなく俺らの関係を察したソフィーはようやく落ち着きを取り戻す。
「うふふ、お知り合いだったんですね。ケンカでも始まるんじゃないかと、ドキドキしちゃいました」
ソフィーに笑顔が戻ると、今度は親父と二人で見とれることになった。
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