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今は昔。瑞穂国(みずほのくに)の桃花京(とうかきょう)に、怪異があった。
平安であった都に瘴気が満ちて鬼が溢れ、夜ごと人が消える。鬼祓いの術師たちでさえも。
後の記録では、薄暗闇と恐怖に満ちた都から瘴気を祓ったのは、一人の陰陽術師であったと記録される巨大な怪異。
その怪異の最中、未だ誰も生きて帰ったことのない怪異の中心……。
呪術によって異界と化し、現世(うつしよ)から隔絶された、とある屋敷の奥の奥で。
一人の女が、首の落ちた遺骸の姿で転がっていた。
女の名は、萌木(もえぎ)。
陰陽術を用いる師と共に騒動を鎮めんとした鬼祓いの巫女にして、異界へ引きずり込まれて力尽きた内の一人。
慟哭する師の腕の中で、物言わぬ女の躯体は霧雨の中、力なく横たわる。
愛弟子の死を無意味にせぬため、都を闇より救うため、男は怨霊の跋扈する屋敷を脱するために立ち上がった。
その背後で、首のない女の躯が、ゆっくりと起き上がる……。
己の父代わりにして、愛した男でもある師。
彼と共に脱出を図る、若く可憐な一人の巫女。
瘴気に憑かれ、狂乱する呪術の主。
交錯する思惑の中、萌木という女は如何に鬼へと堕ちたのか。
冴え冴え暗い異界を彷徨う鬼は、歴史に何を刻んだのか。
これは閉ざされた闇から、生きて出ること叶わなかった女の物語。
※この作品は「小説家になろう」さま「ノベルアップ+」さまに同名義で重複投稿しております。
※挿絵画像はろこさま(https://twitter.com/roko_pallet)より。掲載許可済み。