女神だって女神様が恋しい

水原麻衣
水原麻衣

「あの馬鹿、相談員に手を出したの?」

公開日時: 2022年2月2日(水) 21:57
更新日時: 2022年2月3日(木) 02:18
文字数:7,829

女神が尋ねてくる。

転生相談が始まって一か月が過ぎた頃である。

転生相談が軌道に乗っている今、ようやく相談所には本来の役割を果たそうとしているようだ。

「二か月前にできたばかりです」

女神はその回答を聞き、ふと何かに気付いたようだ。

「もしかして、この相談室の発案者は先輩なのですか」

相談員は「はい」と返事をする。

「でも僕はまだ未熟者です」と謙遜すると「それでも私は嬉しいんです」と言った。

その日の夜のことだった。

相談者が部屋を出て行こうとする時、不意に振り返った。

「あの相談ってもうできませんか?」と言った。

彼女は自分がなぜ相談に来たのかよくわからなかった。

ただ、何となく相談したかっただけだ。

彼女は女神に対して申し訳なさそうな顔をして謝ると立ち去った。

相談員には相談者と相談した記憶がなかったが、彼女が言うならば相談したのだろうと思った。

相談員の机には彼女の置手紙が一枚置いてあった。

そこにはこう書かれていた。

「相談を聞いてくれてありがとうございます。

おかげでスッキリしました」その文字は相談員のものだった。


* * *

数日後のこと。

一人の女が相談員の部屋を訪れた。

「転生先のことでお話が」と言って入ってきたその女神は黒いローブに身を包み大きな三角帽子を被った、いかにも魔女のような恰好をしている。

身長は高く、スラっとした体格をしていて胸も大きい。

綺麗な顔に切れ長の目は少し冷たい印象を与えた。

その隣に猫が座っていた。

茶虎柄の野良猫だ。

女神の膝の上に飛び乗った。

相談員は驚いたが「あら」と笑みを見せた。

どうやら飼い猫らしい。

女神は「ごめんなさいね。

最近甘えん坊になって」と微笑むと相談員の顔をまじまじと見た。

「私の相談も聞いてもらえますか」

と聞いてきたが、「はい。

構いませんよ」と返す。

その日から相談員は猫の女神から相談を受けるようになる。

猫の名前は「ニノン」といい、黒ずくめの服は「魔法の制服」でいつも魔法の研究に没頭しているという。

ある日、相談員は相談者の応対をしていた時のこと。

「すみません、ちょっといいですか」相談員が振り向くと「はい?何でしょう」と言う。

「ここって転生先をいろいろ選べるところなんですね。

異世界でもなんでも」相談員が言うと相談員はハッとした。

転生相談所は転生する場所をいくつか選択肢を与えることができる。

つまり異世界転生以外にも、例えば地球上のどこかに転生後の人生を決めることもできるという。

それが可能なのも、女神組合では転生先をいろいろと選択できるように取り決めがあったからである。

もちろん異世界限定だと思われていたためまさかそれ以外の世界もあるなんて知らなかった。

「他にもありますよ」と相談員は言う。

相談者は不思議に思って首を傾げると、どうせなら「他の世界を体験してみるのも楽しいと思いますよ」と相談員は言った。

だが相談員の思惑とは別に「いえ、やっぱりここは転生先が限られる方がいいかと思いまして」と断った。

その日は「失礼します」と出ていったが、後日またやって来た。

今度は相談員から話しかけてきた。

「あの」と相談員は尋ねる。

「異世界以外での転生はどうしますか? 異世界以外だったらどこでもいけますけど」「いいえ」と即答する。

相談員は困惑したが、猫の女神が口を開いた。

「異世界以外のところでお願いします」と言った。

転生相談所ではたまにこんなやり取りがある。

「転生先が決まらない」とか「別の世界に行けるなら転生先が決まっていない状態で転生したい」「転生する順番は決まっているのか」「実は転生するタイミングもわからない」などいろいろとある。

「じゃあそういう条件で転生を希望された方はこちらにお名前を書いて頂けますでしょうか」相談員が用紙を差し出す。

そこに相談員は自分の名前を書き入れる。

そして最後に猫の女神が自分の名前を書こうとすると、あることに気が付いた。

「あのこれ、字を書けるようにするの忘れていました。

ちょっとお待ちを」

猫は相談員が持っていた鉛筆を奪い取り、サラサラと書くとそれを相談員に手渡した。

そして言った。

「それ、転生先のリストですよ。

もし気になるなら見てみるといいかもしれませんね」そう言うと立ち上がり帰ろうとしたが途中で立ち止まり振り返る。

「あの……先輩のことは尊敬しています。

これから相談に来ることもあるかもしれませんがよろしくおねがいします」

その帰り際、相談員に握手を求めてきたが相談員は応じない。

だが手を伸ばしてきて無理やり握ってきた。

相談者はその感触を確かめているようだったが「ああ、やはりそうか」と言って部屋を出ていった。

しばらくしてドアを開け、隙間から顔を覗かせたが何か言いたいことがあるらしく相談室を指さしている。

相談員が気づくと小さく手を振っているので振りかえすと、ドアが閉まり去っていく気配がした。

「一体なんだ?」

その日の夜遅くに猫の鳴き声が聞こえてきた。

猫の悲痛な声が聞こえたので相談員は「何か困りごとでしょうか」と言って相談室に様子を見に行くことにした。

猫は泣いていた。

泣き疲れて眠りにつくまでの間、ずっと鳴いていた。

次の日の朝、目を覚ました時にも猫はまだ鳴き続けていた。

翌日もまだ泣いていたがその翌々日には鳴き止んだ。

「どうしました」と聞くと「夢を見たのです」と答えた。

それは昔の記憶だと、懐かしさと辛さが同時にこみあげてくるものだと説明していたが何の夢なのかまでは言わなかった。

相談者の中でまだ引っかかるものがあってそれがどうも思い出せないそうだと話を終えた。

「そうですか」と答えると猫はそれ以上聞いてこようとしない相談員を少しだけ怪しんだような目で見ていたが、すぐ元に戻り、いつものように相談を持ちかけてきたのであった。

「そういえばあなたも私に聞きませんでしたね」という質問に対して猫は何も答えなかったし、何も言えなかった。

ただ相談員の目を見て「はい」と答えるだけだった。

それから一週間後、女神が再び相談所に訪ねてきた。

「今日はお休みではないのですか?」と相談員は尋ねる。

「はい。

でもここ数日、私の部屋に人が尋ねて来ないのでどうしたものかと思いまして。

心配になりこうして来たわけですが」と不安そうな表情を浮かべながら言うと、「確かに誰も尋ねてきませんね」と返すと、女神は肩を落として溜息をつくと相談員に相談してきた。

「転生先が決まりません」

相談員はそのことについてはすでに承知済みだ。

相談者からの相談を受けた時からすでにわかっていたことである。

「実はそのことでご相談がありまして」と切り出した相談員は「私はあなたの転生担当アドバイザーですよ。

何でも言ってください」と促した。

すると相談員は「この前の方と同じ条件の転生先はどうでしょう」と提案した。

「異世界ではなく地球でもう一度人生を送る転生先」

だが女神は渋った。

だが最終的には受け入れてくれたようだ。

数日後の朝のことだった。

猫のニノンの叫び声で目が覚めた。

相談所に向かう前に一度家に寄ろうとニノンを抱き上げようとした時だ。

その日、相談所にやってきた女神は「もう転生できません」と言って相談員に言った。

相談員の手元に猫はいなかったが「えっ? どういうことですか」という問いに猫の女神は答えた。

「その……ニノンは亡くなりまして」相談員が相談員と会うのはこの日が最後となった。

「はい、では今回の方で最後の転生希望の方でした。

今までどうもありがとうございました」

転生希望者が一人いなくなっただけでずいぶんと静かになるなぁと猫の女神は思った。

だが相談所の静けさにはすぐに慣れた。

それよりも今目の前にある問題にどう向き合えばいいものだろうか。

「異世界に転生したい、でもどこでどう転生するのかもわからない」といった悩みを抱えた人が来るところだと思っていた女神組合であったが、最近はその手の話が一切ない。

相談に来た人も異世界以外の場所で転生してみたいという要望が多かったのだが今では相談する気力も失せたのかまったくやってこなくなった。

そんなことを考えながら自室で本を読んでいるとノックの音とドア越しに「ニノンちゃんいます?」という女の声が聞こえる。

ドアを開けると猫の女の人だった。

相談員である。

相談員は相談にきたが女神は無視して仕事を続ける。

「あの」と相談員は声をかけるが返事はない。

仕方なく相談員が部屋の中に入ろうとすると扉が閉まる。

相談員は驚いて閉じこめられたことに驚くと猫が相談員の前にやってくる。

「すみません、ちょっと相談に乗って欲しいのですが」と言うが「忙しいから」と言って取り合ってくれないのでどうしたら良いか困ってしまう。

女神の視線が冷たい。

「異世界じゃなくても構わないんですけど、転生できるなら転生先はどうでもいいんですよ。

それで……あの」相談員が言葉に詰まっている様子だったので猫が「どうしたの」と尋ねると「相談事があるのでお時間を」と申し訳なさそうに言った。

だが相談に乗るつもりのない猫は相談員に言う。

「今は相談を受けていないから」相談員は引き下がらない。

どうしても猫にお願いしたいと言い出すが、相談員は「転生はいつでもいいですから。

それにあなたと一緒ならどこにでも良いからお願いします」と言い始めたのを黙って聞いていた女神だがついにブチ切れた。

「うるせぇんだよ、くそ野郎! 邪魔だから帰れ!」と言ってドアから追い出すと相談員の胸倉を掴んで揺すった。

相談員は謝ったが許してもらえない。

相談員が何度も謝罪を繰り返しているうちに猫はだんだん怒りを抑え込むことができなくなって「なんで相談しにくるんだよ!」と言ってしまい、その後ハッとなって口を押えた時には手遅れだった。

相談員も驚いたように顔を上げると猫を見つめていた。

やがて相談員の目尻に涙が浮かんできて「そうよね。

どうせみんな迷惑がるわ。

だってどうでもいい相談ばかりしてくるんだもん。

こんな相談所辞めてやる!」と言った後に泣きじゃくり始めてしまう。

相談員の様子を見て女神は戸惑うがどうすればいいかわからずにいると猫が相談員の手を取り「大丈夫よ。

一緒にいてあげるから落ち着いて」と優しく語りかける。

相談員はしゃくりあげて泣くばかりだったがようやく落ち着きを取り戻し始めると「そう、あなたにはその力が」と言って泣き笑いのような表情を浮かべると「じゃあ、行きましょう」と言って相談員を連れていった。

相談員の部屋に入ると猫はドアに内側から鍵をかけた。

「どうするつもりなの?」と女神が問うと猫は笑顔を見せたがすぐに真顔に戻ると、相談員をじっと見据えると猫の体は徐々に大きくなり、あっという間に女神ほどまでの大きさになると相談員の肩を抱いた。

そして女神に向かって言った。

「相談員の転生に力を貸すことを誓います」

「あなた、一体何を?」と女神が問いかけたが、猫は答える代わりに相談員を抱きしめたまま相談員と一緒にベッドへと飛び込んだ。

猫はベッドの上を転がるようにしながら「キャッハ、ウフフ、アァンダメ、イヤン、ヤダ~」と楽しそうに言い、そのまま相談員と遊び続けるが、相談員は「ねぇ、どうしたの? ちょっと、やめてよ」と戸惑いと羞恥で頬を赤く染めながら言うと猫は突然起き上がって「もうすぐ、もうすぐだからね。

それまで待っていて」と耳元で囁いた。

「わかったわ」と言って相談員が答えると、猫は安心したかのように「よかった」と言いながら相談員を寝かしつける。

「ごめんね、騒がしくしちゃって。

もう少しこのままでいさせて。

あなたに私の夢を見せてあげる」猫は相談員の手を握り締めて、目を瞑った。

「私にはあなたの考えていることがわかる」相談員が言うと猫が笑った気がした。

相談員が握られた自分の手に意識を集中すると「ほら聞こえるでしょ」と声が聞こえてくる。

相談員が「うん。

わかる」と応えると猫は満足そうな顔をして微笑んだ。

それから数日後のことだった。

いつも通り仕事をしていた猫は「んん?」と何事かを思うと女神を呼んだ。

女神が猫を呼ぶが相談員の姿がない。

だが女神は気にしないで仕事を続けていたがしばらくして「どうしよう、相談員が消えたんだけど」と女神が言うと猫も「それって、もしかしたら……」と口を開いたところで相談員が姿を現した。

戻ってきたのだろうと思い猫が「どこに行ってたんですか?」と訊ねる。

だが返ってきた答えは全く違うものだった。

「えっ?知らない人が来たんですか?私は部屋に居なかったはずですけど」と言った。

猫の話ではどうやら自分が出かけている間に見知らぬ人がやってきたようだという話だったらしいが猫はその人を全く覚えていなかった。

その日以来、相談所に姿を見せることがなくなったようだが何があったのだろうか?

「はい……相談員が失踪ですか?」それは大変だなぁ……としか言えないなぁ……。

「いやその前に誰か来たんですか?」と猫に尋ねた。

相談所のドアには鍵をかけてあった。

だがドアは開いていて何者かが入ってきた気配はなかったそうだ。

その人はどこからともなく現れて、気が付いたときにはどこかへ消えてしまったのだという話だったが、その人のことが記憶に残らなかったらしく相談員は誰のことを言っているのか思い出せなかったという。

その相談員が相談員に相談に来たことを相談員自身が理解できないでいたということだ。

相談員が「あれは誰なんでしょうか?」と猫に訊いたが、「さあ」としか答えようがなかったのだと。

相談員がまた姿を消したがしばらく経つと何事もないように現れたという。

どうしたものかなと女神が頭を抱えているのをよそに、相談者は「お腹すいたので帰りたいのですが」と呟いていたというがどうやら女神の聞き間違いである可能性が高い。

「相談員が行方不明? まーだそんなこと言ってるの」女神の言葉に「いや本当に見たんですよ。

相談員が男を連れ込んでいたんですよ」と言っても信じようとしなかったが「本当ですよ」と言うとその女神が青ざめた。

どうやら身に覚えがあるようで、「あの馬鹿、相談員に手を出したの?」と言うと相談者の部屋を調べに行った。

「やっぱりいないじゃない!」と怒りだしたが「そういえば猫はどこにいるの?」「猫ならさっき出ていったみたいよ」と女神が答えると「相談者が相談に来たこと忘れてどさくさに紛れて浮気なんかしやがって、許さない!」と叫びだして部屋を出ていく。

猫は部屋から出て女神とすれ違ったのだが相談者に気が付くと「おや、どうしました?」と声をかけたが、相談者から「いえなんでもありません」と言われると猫は「変なの」と言いながら歩き去って行った。

「最近お客さんが増えてきたね」「そりゃ神様だもの」「どうせなら神様だけ増えてくれればいいのだけれど」相談室は相変わらず暇なので女神たちは世間話を始めていた。

「神様が増えても神様が転生することに変わりはないんでしょ」と相談員が女神に言うと女神が「でも神様も増えるよ」と答え、相談員が驚いていると「知らなかった? 神様はね、いっぱい居るんだよ。

ただ転生するのは人間だけ」と教えてくれた。

女神たちの転生神としての力というのはそれほど強くない。

そのため神にもランク分けというものが存在する。

下から下級神、中級神、上級神の三つに分けられるが転生する人間はだいたい中級から最上級の間で転生することが多い。

「つまり僕は中の下程度の能力ということだね」

猫は自分の転生神の能力を把握していた。

相談員から見れば充分すぎるように思えたが、この世界の神にとってはそうでもないらしい。

ちなみに女神にはさらに上の女神がいる。

「神様にも序列みたいなものがあるのね」相談員は感心した様子で言うと「あなた、今までどれだけお詫びを受け取ってきたの?」と女神が言うと「神様からのお詫びは受け取らないことにしているの」と返した。

相談員がお詫びを断ると女神たちが驚く。

「なんで断っちゃうの?」「神様からお詫びを受け取るとどうなるの?」「例えばあなたに好きな異性ができたとします。

でも相手もあなたが好き。

だから二人で付き合おうと思ったとき、どちらがより幸せになれるか考えた時、あなたはお詫びを受け取れますか?」「うん、ごめんなさい。

無理です」

「でしょ? それに私はまだ転生する予定ではないし、転生予定がなければお断りできるでしょう?」

「そうだけど、あなた転生の相談ばかり受けるでしょ? それでどうやってその人に恋をしてもらおうというのよ」と相談員に訊ねると「ん~?」と悩んでいるような顔をして考え込む。

「転生してから恋愛してみたらどうかしら? それでうまくいかなければもう一度ここに来てもらうっていう方法もあると思うの」と答えると女神たちから拍手が起こる。

「いいアイディアだわ」「素晴らしい。

是非やってみてください」「僕からもお願いします」

女神たちの声援を受けて猫は張り切って転生業務に取り組む。

ある日のこと、猫が転生者を送り出しているときに「あっ、ちょっと、まだ行かないで!」と呼び止める。

相談員が振り向くと猫が「ちょっと待って、あなたに伝えておくことがあるの」「はい、なんでしょうか」

猫が相談員に耳打ちをした。

すると猫が耳まで真っ赤にして相談員を見上げる。

相談員の顔もみるみると赤く染まり始めた。

その様子を見た女神たちは「きゃー」と歓声を上げ始める。

「もう、どうして言ってくれなかったの?」と猫が言うと「ごめんなさい。

つい……」と俯いた。

「いいわよ。

気にしないで」と相談員が答えたが相談員は猫の方を見ることができずにいるようだった。

それを見て女神たちも大喜びである。

「いいねぇ」「初々しいですねぇ」「素敵ぃ」と騒ぎ立てる。

その後、その転生者たちの様子が相談員の相談所で話題になったが相談員は何も言わなかったそうだが、女神たちは相談者の顔色を伺って何があったかは知っているがあえて触れないようにしたという話を聞いたときは恥ずかしかったが相談に乗ってくれたことを感謝しなければならないと思いましたとも書いてあった。

その日から暫くは二人の様子を見に行く相談者が絶えず相談室の相談所はいつも賑やかだったという。

猫と猫に相談 猫に相談を持ちかける人は多い。

だが大抵の相談事は猫の専門外でどうにもならなかったりするのだが中には相談料を払えばなんとかしてくれる猫も居るようだ。

そんなわけで今日もまた一人猫の元へやってきた。

「いやぁ、お待たせしてしまったようだなぁ」と猫に話しかけた男はまるで西部劇の保安官のような風貌だった。

「あぁ、どうもこんにちは。

どうぞどうぞこちらへ」猫は相談者の相手をするため相談者を自分の事務所へと案内するが相談者が椅子に座ってもなかなか相談を始めずどうしたものかと猫が困っているとその男が「どうしたんだ?」と訊ねた。

「いえ、それがですね。

私は探偵という職業を営んでおりまして」「それはすごい!では早速だが事件の調査を依頼してもいいかな?」

猫は少し困った顔をした「えっと、申し訳ありませんが、うちは調査ではなく、相談事を専門に扱っておりまして。

よろしければ他の方をあたっていただければと」「ほほう。

相談事でしたら是非乗ってほしい。

さあ早く話してくれ」

猫はあまり乗り気ではなかったのだが仕方がなく「これは友人から聞いた話なのですが……」と語り始めた。

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