MIX 〜彼女を寝取られた俺、学園一の美少女と朝チュンする〜

もうどうとでもなれ!
平木明日香
平木明日香

第20話

公開日時: 2025年1月30日(木) 00:01
文字数:1,156



 「ってかさ、今日カラオケ行かない?」



 構内を走るバスの後部座席に座りながら、風香が言う。康熙は返事をしなかった。…というより、聞こえてない。金髪の頭には似つかわしくない地味な格好。ダークグリーンのカーゴパンツに、アメカジ。見た目の割に礼儀正しくて、どっちかって言うとインテリ寄りな顔立ちは、どこか“正統派“ぽかった。ただ、なんか小動物っぽいんだよな。瞳はつぶらで、クリッとしている。そのくせ童顔で、女子かっていうくらい色白なんだ。基本無口っつーか、…無愛想?本人に自覚はない。ボーッとしてるだけっていうか、かなりマイペースな性格だから。



 「こーら、聞いてんのか」



 手に持ってた英語単語帳をヒョイっと持ち上げ、風香は再度質問した。康熙はキョトンとしている。俺は俺で聞こえてないふりをした。カラオケなんて行ったことないし、歌える曲なんてない。流行の曲ぐらいは歌えるかもだが、いかんせん音痴でさ。



 「歌いまくってたあんたがよく言うよ」


 「…歌いまくってたって、俺が!?」


 「ねー、コウ。目の下に青あざつけて叫んでたの誰だっけ」



 「ん」という生返事をしながら、康熙は俺の方を見る。え?まじで歌ってたの?青あざってなんだ…?話を聞いていくと、どうやら当時、学校内でよく揉め事を起こしてたそうだった。



 「…喧嘩喧嘩の毎日。勝てもしないのに挑んじゃってさ」


 「先輩と喧嘩してたって言うけど、なんでそんなことになってんだ??」


 「それはこっちが聞きたいよ。やめとけって何度言ったか」



 普通科特進コースには“ヤバい奴ら”がいる。それは学園内でも有名だった。その「ヤバい」っていうのは理由がいくつかあって、端的に言えばバカ強い奴らがいるってこと。21期だか22期だか忘れたが、現在アジア連盟が管轄する『陸軍第1師団歩兵第1連隊』の隊員に三高出身の生徒がいて、その人がとんでもない問題児(※優秀な生徒)だったって話。噂によれば、昔からだそうだった。“筆頭候補生”と言われる立場なだけあり、生まれ持った才能はピカイチ。反面、能力が高いせいで、問題行動を起こす生徒が多いっていうのは。


 俺がそういう「類」だったって話じゃない。ようは、俺は巻き込まれたんだ。学園内に蔓延ってるくだらない“慣例(しきたり)”。



 “特進コースの生徒に喧嘩を売る”



 筆頭候補生に勝てば、“才能があると認められたも同然だ“とされる風習が、生徒たちの間であった。話によれば、首謀者は「落ちこぼれ組」と呼ばれる総合学科の生徒で、頭の悪い連中が頭の悪いやり方で喧嘩を売ってきてるって話だった。どうやら俺は1年の中でもとくに生意気な生徒だったっぽく、とあるクラスの生徒に目をつけられているらしかった。そいつは今3年で、総合学科でも一際癖のある生徒だそうで、なんでも、”不良グループ”の一員なんだとか。



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