「何をしたいか…ねえ」
「なんでアンダーテイカーになりたいと思ったわけ?」
「…強くなりたいから」
「そういう曖昧な理由じゃなくてさ。どう“強く”なりたいの?」
…どう?どうって言われても、強くは強くだよ。それ以上でもそれ以下でもなくない?逆に風香はどうなんだよ。
「私?私はほら、アイツらをぶっ飛ばしたいからだよ!」
「俺とそんな変わらなくね??」
「全然違う!あんたはただ漠然と強くなりたいって言ってるだけじゃん」
「いやいや、風香もじゃん」
「私は“ぶっ飛ばしたい”って気持ちがある」
「それが大差ないっつってんの」
「じゃあ聞くけど、強くなって、そのあとは?具体的にどうするわけ?」
「具体的にぃ?…うーん、“ぶっ飛ばしたい”」
「私の真似すんな!」
「…真似してねーし。でも、大体そんなもんだろ」
「あんたのは“具体性”に欠けんのよ。私はこの世の中をぶっ飛ばしたいし、ペルソナだってそう。力ずくで全部解決したいのよ。「壁」なんてものは取っ払ってさ」
風香らしいっちゃ風香らしいか。ぜんっぜん具体的ではないけどな。…まあ、ようはなんで「強くなりたいか」だよな?康熙だってそうだ。誰だって、強くなりたいと思ってるはず。ペルソナに対抗していくには、生半可な「強さ」じゃだめだ。喧嘩が強いとか腕っ節があるとか、クソの役にも立たない。ある意味人間を捨てなきゃいけない。それはわかってた。
高校の敷地は広く、東側は海に面していた。「港区エリア」と呼ばれる東京湾に面したこの場所は、工業科の施設が多くを占めている。向かい側の対岸には東京都第4支部高等学校の施設が見え、コンテナターミナルと呼ばれる港では、ガントリークレーンの列が海と陸の境界線を覆うように並んでいた。
山のように積み上げられたコンテナが、まるでビルのように積み上げられていた。沿岸沿いの街並みと、工場の煙。錆びついたガードレールが、赤茶けた鉄の模様を描いていく。岸壁に停泊する巨大な貨物線は、まるで海に浮かぶ要塞のようだった。黒光りするビル群は人の群れのように地平線を横切っていた。郊外に住んでいた俺にとって、東京という街はいつだってゴミゴミしてた。東京大都市圏と呼ばれる特別区は年々拡大傾向にあり、今や50を超える区画が存在していた。アジア連盟の主要軍事都市の一つでもあるこの場所は、国際的な物流拠点としても重要な役割を果たしており、中国やインドと並び、国際軍事力指標『GFP(グローバル・ファイヤーパワー)』のTOP5に君臨し続けてきた実績があった。
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