「よーし、全員揃ったか。モニターを見てもらったらわかるが、今日は“体力トレーニング“だ。昼からはお前らの好きな交流戦を行う」
おー!という歓声が上がり、周囲が一気にざわつく。「交流戦」というのは生徒同士の戦いのことで、スタジアムの専用のフィールド内で行われる競技のことだ。スタジアムの広さは直径が1キロにも及び、平米で換算すればおよそ800000㎡にも達する。地面はゴムのような弾力性のある硬い素材で覆われており、広大なスペースが、第1ゲートを潜った先に広がっていた。
「チーム戦だけは勘弁してほしいんだけど」
「大丈夫だって。あんたが抜けても、私がなんとかするし」
「頼もしいな」
「あんたは早く自分の能力思い出したら?せっかく便利な能力なんだからさ」
「思い出したいけど思い出せないんだよ。ってか、ヒントくらいくれよ」
「教えてあげたいけど教えてあげらんない」
「なんで??」
「表面的なことしか知らないから」
「表面的なことでもいいじゃん」
「さっきも言ったでしょーが。「能力」と「イメージ」はセットだって。どんだけシンプルな能力でも、能力を扱ってる人にしかわかんない“感性”ってもんがあんの。他人から見たら「黒」でも、本人からしたら「白」みたいなさ?」
「…どういうことだ?」
「誰も人の心までは読めないでしょ?それとおんなじ。心の中の本当に深い部分は、本人にしかわからない。下手のこと言えないのよ。あんたのイメージを損ねたくはないしね」
風香の言いたいことが、わからなくはなかった。だけどちょっとくらい教えてくれたっていいじゃんか。康熙は康熙でしらばっくれるし、俺の部屋を漁ってみても、それらしいものは見つからない。同級生はみんな成長してた。俺みたいに能力を扱えない人もゼロじゃないが、さすがに基本的な部分は網羅してた。“ドライブゲージ”っていう単語自体知らなかった俺と違って、1年間学んでたっていうだけの知識と教養があった。それに比べて、俺は…
「きちんと説明していくが、最近基礎がなってない奴らが多い。能力を多少扱えるようになったからと言っても、それをより実践向きに仕上げるには基本な部分を強化していかなければならん。いいか、よく聞け。お前らの中に備わっている力は、決して「特別」なんかじゃない。本当に特別な力にするには、お前ら自身がどう成長していくかにかかっている。いつ奴らが襲ってくるかわからない世の中だ。だからこそ焦らず、現実を見る力を身につけろ」
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