MIX 〜彼女を寝取られた俺、学園一の美少女と朝チュンする〜

もうどうとでもなれ!
平木明日香
平木明日香

第43話

公開日時: 2025年2月22日(土) 13:40
文字数:1,873



 *



 「あのさ、俺たちって、どんな“関係”だったの?」



 ある日、爽介はそう尋ねてきた。放課後の教室。誰もいなくなった静かな空間で、サヤはその言葉を胸の奥で転がす。



 「……この前言ったじゃん。ただの友達だって」


 「いや、そうなんだろうけど、どうも腑に落ちないっていうか」


 「どうして、そんなこと聞くの?」


 「単純に、気になっただけ」



 爽介はまっすぐにサヤを見ていた。彼の瞳には、何の迷いもない。ただ純粋に、「自分が知らない過去」を知りたいというだけだった。それが、サヤの心を少しだけ傷つける。



 「……“仲の良い友達“だったよ」


 「そっか」



 爽介は納得したように頷く。それだけで終わると思ったのに、彼はさらに言葉を続けた。



 「いつから?」


 「…いつから?!」


 「いや、ほら、入学してすぐとか、…あるじゃん?」


 「…うーん」


 「サヤみたいな子と仲良くなるなんて、ちょっと想像しづらいっていうかさ」


 「…どういう意味?」


 「そのままの意味だよ。俺って、…いや、自分で言うのもなんだけど、ちょっと「変」じゃないか?」


 「変??」


 「…問題児っていうか、サヤみたいな子とは釣り合わないっていうか…」


 「そんなふうに思ったことはないけど」


 「そっか」


 「なんでそんなふうに思うの?」


 「…いや、なんか噂がさ。それに、サヤはほら、めちゃくちゃ美人だし…」


 「…やめてよ、そういうの」


 「ごめん…」


 「噂なんて信じない方がいいよ?少なくとも、私はそんなふうに思ったことない」


 「じゃあ、どんなふうに?」


 「どんなふうに?うーん、それはちょっと野暮じゃない?」


 「… そっか、ごめん」


 「すごいなぁって、そんな感じかな?」


 「すごい??」


 「私はただの“普通科”だからさ?羨ましかったんだ。私なんかにはできないことが、爽介にはできてさ?」



 サヤは淡々と答えた。過去を話すことで、何かが変わるわけじゃない。それに、彼が知りたいのは「彼女」としての自分ではなく、「友達」としての自分なのだから。



 「できないことって?」


 「一緒にミッションとかしてたら、大抵いつも驚かされてたよ。すごい点数を叩き出したり、私には行けないところを、ヒョイって軽々飛んで行ったりさ?」


 「へぇ…」


 「すごい、って、単純に思ってたんだ。どうやったら爽介君みたいにできるかなって、ずっと思ってた。ま、「憧れてた」って感じ?」


 「俺のことを??」



 心臓が一瞬止まりそうになる。“憧れてた”。そのことを思わず口に出した時、自分が彼のことをどう思っていたのか、少しだけ考える時間があった。ありのままの言葉だった。爽介の隣にいる時のサヤは、いつも、目を輝かせていた。サヤも爽介と同じく、アンダーテイカーを目指す生徒の1人だ。アンダーテイカーになろうとするものたちは皆、「強さ」とは何かを追い求めている。もちろん、その「強さ」には様々な見方があり、考え方がある。爽介の目指す「強さ」と、サヤの目指す「強さ」は違う。あるいは、サヤの目指すものが、世間一般的な意味での“強さ”とは何も関係ないものかもしれない。ただ、彼女は変わろうとしていた。弱い自分を捨て去ろうとしていた。学園にいるものは皆そうだ。ペルソナたちが街を襲った時、“自分たちには何ができるか”。そのことを常に考え、将来についてを考えている。だからこそサヤは、爽介に憧れていた。爽介は才能に恵まれた生徒の1人だった。「才能」だけじゃなく、アンダーテイカーを目指すものとして、その志を人一倍強く持っている生徒だった。


 サヤは無理に笑い、冗談めかして言った。



 「爽介みたいになれたらって、いつも思ってたの」


 「俺みたいに?」


 「爽介っていっつも無茶ばっかりで、そのくせ、不器用で(笑)先生に突っかかっていく時もあったんだよ?あの時は困ったなぁ」


 「…やっぱ問題児じゃん」


 「あはは、ごめんごめん。でも、“敵わないな”って思っちゃったんだ。…多分、出会った時から。私には、爽介みたいに振る舞えないな、って」


 「…っていうのは?」


 「覚えてないかもしれないけど、昔、困った生徒を助けてたの。その子、ミッション中に足を挫いちゃって」


 「…へぇ」


 「ほっとけなかったんだと思う。爽介ってば、その子を担いで一緒にゴールしたの。自分の成績にも響くっていうのに」


 「…そうなんだ」


 「他にも色々あるよ?「すごいな」って思った理由。数え出したら、キリがないくらい」



 サヤは、遠くを見つめるようにそう言った。爽介は、それが「自分のこと」だとは到底思えなかった。なにしろ、彼にとってはこの学園の景色も、目の前にいる彼女も、彼女の着ている紺色の制服でさえ、真新しいものだったからだ。


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