『ブルー・フィールド』と呼ばれる技。この状態の時、風香は“第六感”と呼ばれる感知能力を得ることができ、周囲の”気”の流れを立体的に感じ取ることができるようになる。
視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚。
これに付け加え、“直覚“と呼ばれる感知器官を最大限に強化することで、通常では感じ取れない「エネルギーの流れ」を可視化できる。この「エネルギーの流れ」とはつまり“SPの流れ”のことであり、例えば”微弱な電磁波の流れ“や”空気の流れ“などもこれに該当する。
左目に灯った蒼い眼光は、周囲の「景色」を丸裸にした。それだけじゃない。「センサー」。康熙が言うには、風香は「直覚」と「神経」を電気信号で強く結びつけることで、「見る」よりも”先に“動くことができるようになる、とのことだった。
相手の動き、息遣い。
「攻撃」に該当する物理的な要素を符号化し、脳に伝達する電気信号を”書き換える”。風香の頭の中では、すでに相手の攻撃がどのようにして発生するかを整理できているようだった。
ちょっとした空気の乱れや音、光の加減や匂い、——手触り。
——恐らく、“相手の情報となり得る要素”はすでにインプットされており、符号化、もしくはデータ化されたいくつかの情報が、彼女の脳の中で確かな「実線」を結んでいた。脳に届いた情報を全身の神経に“直接”結びつけることで、常人離れした反応速度を得ることができる。棒立ちにも近い“極限”の脱力状態で相手の攻撃を躱しているその様子は、およそ人間の動きとは思えなかった。
速く、——正確で、柔らかい。
相手の攻撃はマシンガンのように降り注いだ。小さく速く、それでいて“バラバラ”だ。ただ、康熙はあることに気づいていた。
「攻撃は無秩序のように見えても、ある「傾向」が見えてきてる」
“傾向”
それは相手の攻撃の角度や向き、“数”による部分だそうだった。無数の手が何もない空間から出てきているように見える。——反面、それは“全方向”からではない。風香の真正面。フィールド外から見た場合だと風香より奥のスペースから、上下左右に切り分けた攻撃が別々のタイミングで降り注いでいた。冷静にそれを分析した時、ざっくりと言えば「前方からの攻撃」と区分することができた。視界の外、背後からの攻撃や真横からの攻撃は0ではないものの、前方からの攻撃の「数」に比べればかなりペースは限られていた。あえて“そうしていないのか”、それとも、“出せない”のか。風香の身のこなしは完璧だった。一部は手や足で捌き、避ける部分は避ける。全ての攻撃の角度や出どころがわかっていないと、ああいう動きはできない。
そして、反撃に出る。
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