ここのえ九護さんの作品レビュー

ここのえ九護
ここのえ九護 投稿日:1月27日

第一部読了時点でのレビューです。

 

本作は第一話から独特の世界観が展開され、その中でも主人公である柏さんの狂気的な言動が目を引くかと思います。

しかしながら、それは本作の世界に踏み込むための一つ目のフックに過ぎません。

 

読み進めていくうち、柏さんを初めとした狂気的な言動、思想を持つ人物達の輪郭が明確になっていきます。

あるときは常識的な思考と行動を持つ人物との関わりによって、またあるときはやはり同じような狂気を抱える人物との邂逅によって。柏さんが持つ狂気の輪郭がより色濃く浮かび上がっていくのです。

 

そしてなにより、その狂気の輪郭が明確になるにつれて読者が把握できる「正気と狂気の境界線」の描き方が非常に秀逸です。

 

たとえどんなに狂気的な言動や行動を繰り返そうと、ただそれだけが連続すればやがて慣れ、狂気も平凡な思考に堕してしまいます。

しかし本作では、狂気と対になるように正気的な世界観、思考、行動も丁寧に描くことで、正気と狂気、その双方を際立たせることに成功しています。

 

私はその点こそが本作の最大の魅力なのではないかと感じました。

 

ぜひ皆さんも、まるで細い一本の綱の上を渡るような狂気と正気の狭間の世界を体験してみてはいかがでしょうか。

お勧めです。

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