達哉視点に戻ります。
そして、新たなる章の始まり!
「青隈くん! ヴァンパイアだって知ってる君に、お願いがあるの!」
翌日、青隈達哉はそんな言葉で出迎えられてしまった。
待ち伏せていたのは、白粉紗々萌さんだった。
今は、朝のホームルーム前。
登校してきたクラスメイト達が、教室のあちこちでグループを作り、和気藹々と談笑している、牧歌的な時間。
達哉も、自分の席に着く前に友人の大川大二郎の席に行って挨拶を交わしていたところだった。
そこに、白粉さんが乱入してきて両手を合わせ懇願してきたのだ。
(この子は……。自分がどれだけ目立つかわかってないんだ!)
教室のざわめきが耳に入ってくる。
誰もが不審な目で、こちらを見ていた。
不審に思われたのは、自分と白粉さんという取り合わせか、それとも白粉さんの口から軽率に出た『ヴァンパイア』というオカルトな用語か。
とにもかくにも、教室で話せるような話題ではないはずだ。
達哉は急いで自分の席に鞄を投げるようにして置き、
「外で話そう。白粉さん」
「うん? なんで外ぉ?」
「大勢にバレたら迫害されるんでしょ?」
「ふひはっ!!!!」
どうやらわかってくれたみたいだ。
急ぎ足で廊下に出る。
白粉さんはトトトと付いてきた。
小走りで揺れる彼女の胸元にちょっとドキッとしてしまう。
達哉は気づかれないように目をそらした。
白粉さんは、バツの悪そうな顔で謝罪してきた。
「ごめんね。ちょっと危機感がなかったです、はい……」
「まあ、ヴァンパイアなんて誰も信じてないと思うけど。事情を知らなければ、なんのことかわかんないだろうし」
「そうかなぁ……迫害、大丈夫かなぁ」
「されないされない」
「うん、そうだね! うちのクラスメイトにそんなことをする子なんでいないよねっ!」
安心したのか、白粉さんの顔はくしゃっとなっていた。
その顔に見とれていると予鈴が鳴ってしまった。
あと十分で朝のホームルームが始まってしまう時間だ。
「四階の踊り場まで行けば、ほとんど人が来ないはずだから、そこで話そう」
「聞いてくれるの?」
「まあ、白粉さんがヴァンパイアだって知ってるのは俺だけだからさ」
「……ありがと! 君は本当にいい奴だ!」
肌が薄くて赤みがかっている白粉さんの頬は、紅潮しているように見えて色っぽく感じる。
(昨日、全裸見ちゃったから、そんな風に見えちゃうのかな……)
脳裏に浮かぶ彼女の裸体のせいで昨晩は眠れなかったと、達哉は寝不足の目をこするのだった。
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