無我炸裂
起期再性
――研ぎ澄まされたイシは堅く、時に勝てぬはずのカミさえ打ち破る
〇〇年代初頭の日本にて確認された、超常を引き起こす奇病―病魔。
病魔は既存の医科学になかった現象であり、「女性に発現すること」「症状によっては超能力とも呼べる異能を罹患者にもたらす」程度の知見が経験則的に得られた段階であった。
既存の技術で対応しきれない犯罪を犯すこともあった病魔罹患者たちは大衆の忌避感情により、異能の有無に関わらず隔離施設で管理されることとなり、数字の上では病魔犯罪の件数は落ち着いていった。
二〇〇五年。首都に属する叶市(かないし)にて、探偵事務所を開く神流玖美子(かんな くみこ)の下で暮らす十九歳の病魔罹患者、別谷境(わけたに さかえ)は、とある事情から病魔罹患者の引き起こす事件・事故に対処し、これを解決しなければならない枷を嵌められていた。
首輪に繋がれた暮らしながらも日々を謳歌していた別谷のもとへ、久方ぶりに病魔犯罪の知らせが入る。
その事件を皮切りに、病魔とそれを取り巻く様々な問題に次々に直面することとなる別谷は、自分と異なる道を進む病魔罹患者たちとぶつかり合った果てに、病魔がこの世に生じた本当の理由を知る。