バイトで”悪魔狩り”始めました。

最強降魔術師の助手のバイトを始めた女子大生エマのお話
さまー
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Case.39「大局観なんてそうそう身につかない」

公開日時: 2021年5月25日(火) 21:07
文字数:6,637

 渋谷の街を襲う、拡大の真愚魔。しかしまた別の箇所では別の真愚魔が動き出していた。

 

「コードM、Nお前らのコンビは最高だぜ。俺がすることが何もねえ」

 

 コードL――施錠せじょうの真愚魔が言った。彼の術は『触れた部位の動きを止める』という対人間、対動物に優れたものだ。しかし、そんな彼が“することが何も無い”と言うほどであるのは、コードM、Nの術に関係があった。

 

「一般人を総本部の方向に流し込んでる。あっちに駅を見せてるからな」

 

 コードMの術は、幻覚を見せること。つまり、幻覚の真愚魔なのだ。

 

「……しかし、俺の見せてる悪夢がこんなに効果的とはな。ほとんど全員じゃねえか。やっぱ労働に対する洗脳はすごいね」

 

 コードNの術は、悪夢を見せること。つまり、悪夢の真愚魔なのだ。

 

 この二体の真愚魔の術の組み合わせによって、日愚連の総本部に大勢の一般人が流れ込もうとしている。おそらく、あと20分もしないうちにこの人波は目的地に着くだろう。その光景を、遠くから眺める男たちがいた。

 

 

「ありゃまぁずいねえ。どうする? 田場さん」

 

 そう投げかけるのは、鯨間火暖げいま かのん。2段の愚魔狩で、電撃の真愚魔討伐隊にも選ばれた猛者だ。

 

「どうもこうも、俺らの持ち場的に、あの2体の真愚魔を倒すのが一番なんじゃねえのか? 現実的ではないが」

 

 田場麻丸たば あさまるは煙草をくわえたまま遠く―2体の真愚魔を眺めている。

 

「やっぱ神野先輩呼びましょうよぉ」

「……とは言っても、神野副課長はおそらく総司令部の護衛があるだろ」

 

 はあ、とため息をつく二人。

 

「どうした、ため息なんかついて」

 

 人事部の副部長に当たる男、我孫子高天あびこ たかまが二人の後ろに立った。釘塚の右腕として今までも敏腕をふるってきた愚魔狩であり、人事部に欠かせない存在でもある。

 

「あびこさぁん……あの二人、ぶっ殺せたりしますか?」

 

 鯨間はダメ元で問う。

 

「んなわけあるか。どう考えてもお前らの方がやれんだろ」

「いやいや、そうは言っても……二体とも強そうっすよ」

 

 田場が我孫子の言葉を否定する。

 

「……俺も、言ったって専用アンドロイド作ってないし」

「……俺も戦闘要員じゃないし」

「俺もだよ」

 

 3人、そろいもそろって後ろ向き。その間にも操られた人たちが、総本部に向かってきている。

 

「これ、邪魔だよなあ」

 

 田場が呟く。そのまま「よいしょ」と高い位置から降りていく。

 

「山くだって、催眠さいみんガスくわ。真愚魔に襲われたときのために手伝って」

「なかなかの名案じゃないですか!」

 

 田場の提案に、鯨間がうれしそうについて行く。ほっと胸を撫で下ろす我孫子。

 

 

 

 

 ◆

 

 芳泉らのところにいる真愚魔、拡大の真愚魔。その1体との戦闘に、愚魔狩の小隊が出向いていた。

 

「芳泉ッ! 右方より真愚魔接近ッ!」

「はい!!」

 

 警備部も、いわば開発部戦闘課に等しいくらい愚魔を狩ることについてはプロ集団だ。そんな高いレベルについていく芳泉もまた、愚魔狩の中では“強い”のだが、拡大の真愚魔を追い詰めるには、あと1ピース、手が足りなかった。

 

「小暮部長! カズマがやられた!」

「カズマ! 立てるかッ!?」

 

「はい!」

 

「芳泉が動けるッ! カズマのサポートを頼んだ!!」

「りょ、了解ッ!」

 

 拡大の真愚魔は、“触れたものを拡大する”術を使うだけではなく、魔力を込めたパンチやキックなど、シンプルな徒手格闘も行っている。それにより、じわじわと小隊の体力を削られていた。

 

 気づけばまともに動けるのは、隊長である小暮と、ホーセンの二人のみ。

 

「鳥羽部長がお前をつれてきた瞬間に確信してたよ。お前は使えるってね」

「まあ、これでも俺、コウマのお墨付きもらってるんで」

 

 小暮は“二人”で真愚魔を倒す方法を考える。

 

――死人が町田だけで済んでるのはラッキーだ。ホーセンは死なせたくない。安全策を張り巡らせたいところだが、それを許してくれるような敵じゃない。

 

 何より、小暮たちは『時間をかけられない状況』にあった。

 

「畜生ッ! 芳泉、あれやれ! 必殺技!! パノラマなんたら」

「あれっすか? でも小暮さんがおとりにならないと」

「わかってるよんなことは!! 頼んだぞ!!」

 

 小暮も、実力者だ。真愚魔相手であれど、囮になるくらいなら――不可能では無い。

 

――小暮さんの強みはバランス。魔力のコントロール、敵との距離の取り方、含魔銃ガンマガンと刀のそれぞれの扱い。どれをとっても平均以上。故に俺も合わせやすいぜ!

 

 拡大の真愚魔が小暮に釣られ、先手を取ろうと動き出す。

 

――今だホーセンッ!

 

 小暮がアイコンタクトを送る。距離を取って含魔銃を構えた。拡大の真愚魔が右腕を伸ばし、攻撃しようとしているところを、刀に切り替えた小暮。

 

――おっと。

 

 一太刀。たったその一太刀をかわした拡大の真愚魔。その間に撃たれている――芳泉の含魔機関銃の弾丸たち。

 

――変速追尾式爆撃含魔機関銃パノラミックキャノン!!

 

 

 芳泉の必殺とも言える奥義が出た。各方位に放たれた弾丸が、気づけば真愚魔を包囲している。一太刀かわし、バランスを即座に取り直した拡大の真愚魔は、ここで弾丸が近づいていることに勘づいた。

 

――弾丸。俺を追ってきている。この男と距離を詰めれば巻き込めるかッ!!?

 

 距離を詰める真愚魔。小暮は、これを待っていた。

 

――あいつの頭には、もう俺を巻き込むことしか頭にない。

 

 

 つかみかかろうとする真愚魔の腕を、滑り込みながら斬り裁いた。

 

「小暮さん!!」

「ああ……大丈夫だ」

 

 サッカーや野球のスライディングの要領で、すぐに立ち上がることができた小暮。そのままの脚で真愚魔から放れた。

 

――あの弾丸がもはや囮だと……!?

 

 機関銃の弾丸が、各方位から降り注ぎ、拡大の真愚魔の身体を貫き、そして爆ぜた。

 

 四散する真愚魔の漆黒の肉体。

 

「っしゃああああ!!」

 

 叫ぶ小暮。芳泉にハイタッチを求めた。

 

「よくやった!! 大手柄だ!! 2段確定だな!!」

「あざす!!」

 

 戦闘不能になった小隊のメンバーも、二人に喝采かっさいを送る。

 

「町田さァん! カタキとったぞ!!」

「うし……真愚魔下位種なら俺らでも協力して倒せる。ほかの戦局にも伝えろ! これは良いげきになる!!」

 

 

 

 ◆

 

 拡大の真愚魔を討伐したという知らせは、瞬く間に愚魔狩らの下へ届いた。釘塚らとともにいた営業部長の冬沢がやや笑いながら釘塚に話しかけた。

 

「釘塚サンや。良い知らせが届いたよ。渋谷にいた警備部の隠密行動課――あ、表向きは特別警備課と言うのかな。彼らが真愚魔を倒した」

「そうか……」

 

 釘塚が拳を握りしめている。その口角はやや上がっている。

 

「だけどね。悪い知らせも届いている。新宿と港区にも真愚魔の出現情報だ」

「けっ……さっき我孫子から総本部前に一般人の人並みとともに二体の真愚魔が出たって知らせが来たところだ」

 

 釘塚は落ち着いていた。そんな彼に冬沢は続けた。

 

「新宿は日愚連のスポンサーとなっている企業の本社もいくつかある。営業部が担当している箇所も多いし、うちの部の精鋭を向かわせる。港区の方は……」

「俺が行きますよ」

 

 神野述じんの のべる――8段の愚魔狩が出かける準備をしていた。

 

「総本部の護衛はコウマくんがいればなんとかなるでしょ。戦局分散が目的だとしても、あとで集結するプランにいけるっていうなら問題は無い」

「良いんか? 釘塚サン」

 

 コウマはその神野の案には懐疑的だ。釘塚とて同様である。

 

「冬沢。とりあえず新宿にお前らの部下向かわせろ。空いているやつ全員。んで、港区の方だが……」

「まだ本襲撃ちゃうと俺は踏んでる。動くのは危険や」

 

 コウマが言い放った。

 

「……顎門もおらへん。大常磐のジジイを襲った火炎の真愚魔、氷雪の真愚魔もおらへん。今まで出てきよるのはほっとんど未登録の奴らや。主力と思われる奴らが全く出てきぃひん」

 

 

「問題ねえよ。総務部の奴らが全員残ってる。事務仕事だけするために残してるわけじゃあねえ」

 

 乾猛――8段である総務部長が言った。

 

「神野、お前は残れ。俺ら総務部のやつらで港区のやつ片付けてくる。なあヤマト」

 

「は、はい! 総務部長!」

 

 乾大和――猛の甥であり、現臨時民事部長を務める6段の愚魔狩が答えた。

 

「総本部の護衛、任せたぞ。総本部には開発部のやつらだって一切動かさずに残ってる。教育部のやつらだって御厨を守るために必死で守りを固めてんだ。なんとかなるよ。これはもう……俺ら上層部だけの戦いじゃねえ」

 

 釘塚、冬沢は頷いた。冬沢が無線のスイッチをONに入れ、声を上げた。

 

「全愚魔狩に告ぐ! 新宿に出現した真愚魔は営業部の者が迎え討つ! 港区に出現した方は総務部の者が迎え討つ! 各隊、ほかの持ち場のことは気にせず持ち場の戦線維持に尽力せよ!!」

 

 冬沢の指示はまだ続く。

 

「そして、警備部諸君! よくぞ真愚魔を討ち取った!! よく休憩し、総本部への帰還準備をしろ! 総本部での本襲撃があるはずだ! 万全を期してから向かうように!!」

 

 これで各隊、各持ち場を片付けた後、総本部に帰還するという流れを理解した。コウマは笑った。

 

「はっ……内通者おっても、全体は腐ってへんかったか。何よりや」

 

 

 

――エマ、こっちはなんとかなる。そっちでもはよなんか掴んでこい。

 

 しかし、コウマとて予想できるわけが無かった。『エマが京都へと向かった』という情報が、まさか真愚魔組織に漏れているなどということは。ましてや、組織のリーダーであるコードC――王者の真愚魔が直々に出向いていることなど、片隅にも無かった。

 

 

 

 ◆

 

 京都支部へとただ一人ワープしてきたのは、慌てた様子のリンドウ。彼は何も知らない。

 

 そう――コードC――真愚魔組織のボスで愚魔狩組織の裏切り者である大桐千歳だいどう ちとせ、自らの師である大桐千歳が真愚魔だということも知らずに、京都支部へと慌てて入っていった。

 

「誰やお前は!?」

 

 袈裟けさを着た住職らしき男たちに取り押さえられるリンドウ。そのまま叫ぶ。

 

「真愚魔が来る! 一体は真愚魔上位種!! 3体の真愚魔も一緒だった! 俺の師匠が一人で足止めをしているけど、どうなるかわからねえ!」

 

 目を見合わせる二人の住職。彼らも愚魔狩だからこそわかる。“真愚魔”というワードが一般人からでてくるわけがないということに。

 

「最初に所属言わんかい」

「あ……すみません。東京支部の愚魔狩1級、竜胆ライムです」

 

 リンドウの言葉に、あきれ顔の二人。

 

「どうする?」

「一応詳しい話聞くか。にしても、真愚魔4体なんてほんまやったら大事やで」

 

 その二人の楽観的な様子に余計に慌てるリンドウ。

 

「マジでやべえんっす! っていうかここに高虎エマたちが来ているはず! そいつらに会わせてくれ! 話通してくれ!!」

 

 またしても目を見合わせる二人。

 

「高虎エマって……ウシトラさんの客やんなあ」

「ああ。一旦ウシトラさんに連絡つないでみるか」

 

 二人の内の一人が奥へと小走りで去って行く。その背中を見ながらリンドウを抑えているもう一人。彼に話しかけるリンドウ。

 

「やべえんす。急いでください」

「とは言ってもなあ。東京から来たヨソモンの言うこと信じてホイホイと準備するわけにもいかんし、ホンマなんやとしたら支部長やら民事部長やら総務部長やら上層部総動員せな戦えへんで。東京支部と違ってたんまり人おるわけちゃうしな」

 

――もしかして、エマたちが京都にいるって、一番バレちゃまずいことだったんじゃねえのか?

 

 そうリンドウが思った矢先――彼を抑えていた愚魔狩の首――丸められた頭が空へと飛んだ。そう、首だけが、宙を舞った。

 

 

「何ッ!? もう――」

 

 強い衝撃が彼の右腕に襲いかかる。そう、右腕で咄嗟とっさにガードしたおかげで、首をねられずに済んだのだが、痛みとともに弾かれ、支部の建物の壁に激突するリンドウ。

 

――まずい。もう敵が。

 

 リンドウが土煙の向こうへと見据える先には、一体の真愚魔が立っていた。

 

「俺は噴射ふんしゃの真愚魔。コードJ。術は両足から高濃度の魔力を噴射することによる超高速移動」

「……即死系の技じゃねえが、一撃の重さは半端ないな。油断したらあのオッサンみたいにすぐに殺されちまうじゃねえか」

 

 段を持たぬリンドウは、本来であれば即座にこの場を離れ、応援を求めなければならない。しかし、そんな余裕はどこにもない。

 

――俺がこいつを倒すしか!!

 

 真愚魔と対峙するのは、初めてでは無い。一回目は術の使いすぎによる魔力切れのせいで全く役に立たなかった。それを今、思い出していた。

 

――あそこには今、エマとスナ。あんとき俺を助けてくれた同期の二人がいる。俺が足止めしねえと。一体だけでも削ってやんねえと!!

 

「術発動!!」

 

 リンドウは意を決した。とりあえず、触れて――術を、決める。

 

「ボリュームオフ!!」

 

 リンドウが右腕を目一杯伸ばし、噴射の真愚魔に触ろうとした。術を使って即座に避ける真愚魔。すぐに裏を取られた。

 

――ちっ!!

 

 すぐさま振り返り距離を取り直すリンドウ。しかし、その意図を、敵の真愚魔は読んでいる。すぐに脚から魔力を噴射し、リンドウとの距離を詰める。

 

「うおらッ!!」

 

 かかとの部分から魔力が急噴射され、加速する蹴り。それを再び右腕で受け止めたリンドウ。先ほどよりも強い激痛が走る。

 

「ぐおおおッ!!」

 

 思わずうずくまる。肘の上――関節など全く関係ないところで、腕が曲がっている。目視してしまった以上、脳は激痛を認識せざるをえない。

 

「あ……ああああッ!!」

 

 折れた。骨が折れた。立ち上がるどうこうではない。激痛だ。

 

――術を当てるどころじゃねえ。動かそうもんなら死ぬほどの痛み!!

 

 折れた箇所が熱を持ち、息を大きく吐いてごまかしてもまだ痛みは大きい。こんな状態で、格上の真愚魔などと戦えるわけが無い。リンドウは慌てて背を向けた。

 

――馬鹿が。

 

 そう、一瞬で距離を詰められる噴射の真愚魔を相手に背を向けるなど、自殺行為。

 

 

 一瞬で距離を詰めようと、足先から魔力を噴射する噴射の真愚魔。リンドウは左手で壁にもたれながら、激痛走る身体を支えている。

 

――背骨を蹴り落とせば死ぬッ!!

 

 

背骨――ど真ん中を蹴り抜いた。つもりだった。

 

 

 

 

「術発動ッ!! ボリュームオフ!!」

 

 リンドウの術が発動した。みるみるうちに小さくなる噴射の真愚魔の身体。

 

「一応……触れれば良いからさ」

 

 激痛に耐えつつ、右腕を背中に回してきていたリンドウ。ちょうど背中の真ん中に据えた右手のてのひらが、噴射の真愚魔の足裏に触れたのだ。

 

「わりぃけど……俺の勝ちだ」

「な、なにをおおおおおおっ!!」

 

 小さくなった噴射の真愚魔を見下ろし、リンドウはシューズの底を、噴射の真愚魔の頭の上に乗せ、全体重をかけた。

 

 

 

 

「さすがにあとはきちぃんよ」

 

 リンドウが向く先に、ようやくやってきたエマたち。

 

「リンドウ!」

「なんでここに!?」

 

 スナやミツハも驚いている。

 

「どういう状況? 真愚魔が来てるって?」

 

 エマが問う。

 

「……さっき師匠と一緒にいたんだ。師匠が真愚魔上位種を足止めしてくれてる。こないだの隠密の真愚魔だ。あとの3体は未登録だが、俺が一体倒した」

 

 満身創痍まんしんそういの彼を見て、嘘では無いことに気づく4人。ウシトラが口を開いた。

 

「とりあえず、リンドウというもん、裏で休んでこい。エマ、ミツハ、ついていけ」

「えっ……でも!」

 

「どう考えてもお前さんを狙ってんねん。少なくともワシはお前らの中で一番強い自信はある。段持ち3人で倒したるわ」

「できるに決まってんだろ」

 

 山崎も強気だ。

 

「……エマ、リンドウ。あとは俺たちに任せてくれ」

 

 スナが呟く。

 

「リンドウ……」

 

 続けるスナ。

 

「真愚魔倒すの、お前に先越されるとは思ってなかったぜ」

「偶然だよ。お前の方が強いよ、スナ」

 

 ふん、とリンドウの言葉を鼻で笑うスナ。

 

「冗談はよせ」

 

 3人が京都支部の門の前に立つ。その背中を見て、エマとミツハはリンドウに肩を貸しながら建物の中へと進んでいった。

 

「さあ、お出ましやで」

 

 

 彼らの視線の先に、まだまだ小さく映る2体の真愚魔。

 

「いるねえ。餌魔えまはどいつ?」

「……多分、今背中を向けてるアイツ」

 

 漆黒の指先が差すのは、これまた小さく映るエマの背中。

 

「……ほう」

 

 真愚魔のうちの一体、コードB、弾丸の真愚魔が、右腕を銃の形に変形させた。

 

「撃ち抜いてしまって良いんだよな?」

 

 その銃口から2発、弾丸を飛び出させる。弾丸がまっすぐにエマの背中めがけて近づく。

 

 バチンという金属音。

 

 一発は刀に断ち切られ、地に落ち、一発は魔力の圧に弾かれる。

 

「させねえよ」

 

 スナの刀、山崎の術――それぞれ一発ずつ弾丸を止めた。

 

 

「ほな、お前ら。初段なんやし、任せたで。ほかがいなさそうやったら加勢したる」

「いりませんよ、ウシトラさん」

「おう、サシでいける」

 

 ウシトラの言葉に、まだまだ強気の二人が応えた。

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