雑司ヶ谷高校 歴史研究部!!

日本100名城をすべて巡る!
谷島修一
谷島修一

タッキュー!!

公開日時: 2022年12月14日(水) 19:57
文字数:2,407

 球技大会、午後。

 卓球。通算5試合目も適当にやって、勝利した。

 5連勝なんだけど、相手もあんまりやる気ないからな…。あんまり嬉しくない。

 最後の試合も終わらせて、早く家に帰りたい。まあ、勝手に帰れないんだが。

 

 しばらく休憩して、最後の試合の出番となった。

 相手は、短い髪のボーイッシュな小柄な女子。

 彼女、見たことあるな。

 誰だっけ…?

 思い出した。

 夏休みに卓球部の合宿で見たことある。

 ということは卓球部か…。名前は知らない。


 そんなわけで、まず相手のサーブ。

 ピンポン玉は、台を跳ねてから、かなりのスピードで僕の脇を通り抜けた。


 0-1

 

 ガチでやらないでよ…。


 突然、声援が入る。

「純也! 頑張れ!」

 後ろを振り向くと少し離れたところに雪乃が居た。

 声援とか…。恥ずかしいな。

 彼女(仮)の手前、1点ぐらいは取って、カッコつけるか…。

 と思ったが、卓球部相手に点を取れるのだろうか…?


 再び相手のサーブ。

 僕は打ち返す。しかし、当然、いとも簡単に返された。

 何度かラリーがあって、結局、僕は空振りして点を取られた。


 0-2


 今度は僕のサーブだ。

 卓球部の合宿の時に、羽柴部長に教えてもらったサーブの方法を思い出す。

 確か、スピンがどうとか…。

 で、サーブ。

 やっぱり簡単に返される。

 今度も何度かラリーがあって、僕はまた空振り。


 0-3


 もう一度、僕のサーブ。

 今回は少し長めにラリーがあって、僕が返した玉が台から逸れて点を取られた。


 0-4


 少し速い玉に目が慣れてきたかも知れない。

 それでも、1点を取るのは難しそうだ。

 待てよ!

 次は卓球台のヘリを狙ってイレギュラーにするという作戦を使おう。

 この卑怯な作戦を正々堂々と採用することにする。


 サーブ権が相手に代わる。

 相手は構える。

 え? さっきとフォーム、違う…?

 そして、相手は玉を打ち出した。

 スピードは速くない。

 ヘリ狙い作戦のチャンス!

 僕はラケットで玉を返す。


 えっ!?

 玉は僕が狙った所とは全く明後日の方へと、台にも触れず飛んで行った。

 何? 今の?


 0-5


「純也! 頑張れ!」

 また、雪乃の声援。


 再び相手のサーブ。

 さっきと同様に狙ったところとは、全く違うところに飛んで行った。

 ひょっとして、めっちゃスピンかかってる?


 0-6


 サーブ権が僕に来た。

 サーブの時からヘリ狙い作戦で行く。

 僕は玉を繰り出した。

 しかし、狙ったヘリにはいかず、普通に台を跳ねた。

 そして、しばらくラリー。

 結局、僕は返せず、点を取られた。


 0-7


 そして、再びサーブ。

 今回は短いラリーで点数を取られてしまった。


 0-8


 相手のサーブ権。

 さっきと同じ構え。

 ということは、めっちゃスピンかけて来るな…。

 さっき、玉が飛んで行った方向を逆に計算して…、ラケットをこの角度で、こっちの方を狙えばなんとか返せるか?

 相手から玉が打ち込まれた。

 僕は、何とか想定通りに玉を返し、相手の前にはじき返した。 

 相手は当然、それを簡単に打ち返す。

 少しのラリーの後、僕の返した玉が相手の台に入らず、点を取られた。


 0-9


 もう1点も取れないのか…。

 まあ、しょうがないなあ。


 相手のサーブ。

 今回も玉を打ち返せた。

 そしてラリー。

 ここで、ヘリ狙い作戦だ!

 奇跡的に玉がサイドのヘリに当たってイレギュラーとなった。

 それでも、相手は何とか玉を拾った。

 玉の勢いは早くない。相手がいる反対側狙って玉を打ち返す。

 相手は、さすがにそれを拾うことができず、僕は初めて点を取ることができた。

 どや。


 1-9


 目標達成。

 もういいや。


 サーブ権は僕。

 玉を素早く繰り出す。

 そして、ラリーとなったが、僕が打ち返せなくなって点を取られる。


 1-10


 再び僕のサーブ。

 そして、ラリー。

 僕の返した玉がネットに上の端に当たり、勢いは落ちたが辛うじて相手の方へ落ちた。

 それが手前過ぎたので、相手はその玉を拾うことができなかった。

 おおっ!

 もう1点取れたぞ!


 2-10


 そして、相手のサーブ。

 僕は、もう完全にやる気が無くて、相手のスピンのかかった玉を弾くも明後日の方向へ飛んでいった。


 2-11


 試合終了。

 2点も取れたのは望外だったが良かった。

 最後の最後にちょっと気合入れたので疲れた。早く家に帰りたい。まあ、勝手には帰れないんだが。


 球技大会が終了した。

 後ろで僕の試合を見ていた雪乃と合流して教室に帰ろうとする。

「最後の試合、惜しかったね」


「ボロ負けじゃん?」


「でも、あの子、卓球部でしょ?」


「そうだけど…。球技大会で部員がガチでやらないでほしいんだけどな。勝負になるわけないじゃん」


 などと話しつつ廊下を歩いていると、背後から僕の名前を呼ぶ声。

「武田君!」

 この聞き覚えのある声は…。僕は振り向いた。

 卓球部部長の羽柴先輩だ。

「さっきの試合見たよ」


「そうですか」


「実は、福島さんが武田君と試合になると聞いて、マジでやれって指示をだしたんだよ」


「福島さん?」


「さっきの試合の相手だよ。1年D組の福島来路花さるびあ


 サルビア? キラキラネーム?


「ど、どうして、そんな指示を」


「君の隠れた才能を見てみたくてね」


「ボロ負けしたじゃないですか」


「いや。素人の君が福島さんから2点取るなんて、ただ者じゃあないよ。彼女は今の卓球部では3番目に強い。都の大会で女子ベスト16まで行ったしね」


「そうですか…」

 どうでもいい。


「で、卓球部どう? 練習来てよ」


「いや、最近、生徒会に入って忙しいので、ちょっと難しいんです…」

 生徒会は、全然忙しくないが、こういう時だけ言い訳に使う。


「そうかあ…。まあ、いつでも顔を出してよ、遊び感覚で良いから…。じゃあ」

 そう言って羽柴先輩は立ち去った。


 卓球より、福島さんの“サルビア”という名前のほうが気になるな。


 そのやり取りを見ていた雪乃が話しかけてきた。

「それにしても、純也ってスポーツもできるんだね。勉強もできるし」


「いや。今日の卓球はたまたまだし、他のスポーツも人並みだよ」


「でも、卓球やってる純也、カッコよかったよ」


「お、おう…」

 恥ずかしいな。

 でも、いくらおだてられても、卓球部には行かない。

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