李夜伝

恋して、愛して、裏切られて散っていく。復讐、愛憎、悲恋の中華ダークロマンス
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おまけ 夏桑がもらった本

公開日時: 2022年12月3日(土) 00:16
文字数:486

 荘園しょうえん

 真っ昼間の家畜小屋の裏は、人気がなく、かげがのびている。

 土ぼこりや家畜の糞によごれた夜糸が、あせびっしょりでかげに入った。

 

「ふう。つかれた。あつい。こっそり休憩ましょう。……あら? 夏桑かそうじゃない。いたの?」

「おう夜糸」

 

 夏桑が本を手にし、家畜小屋の壁によりかかり、しゃがんでいた。

 

「本を読んでるの?」

「ああ。おら字が読めねえっつったら、東園とうえんりゅうさんが絵の本をかしてくれたんだ」

「へえ。いきな人もいるのね」

「夜糸も見てみろよ。きれいな女がいっぱい描かれてて楽しいべ」

「美人画ね。どれどれ、……!」

「でも女にのっかってるこの丸いのはなんなんだ? 男みてえにも見えるが」

「……夏桑、この本はすてるわよ。いますぐ」

「え? なんでだ」

「いいから」

「この本は劉さんのとっておきらしいぜ。すてたら悪いべよ」

「こどもがこんな本を見ちゃだめ」

「おらこどもじゃねえ。こんななりだがおまえとそんなにとしは変わらねえよ」

「いいからすてるの! もやしなさい。南園なんえんに送られるわよ! それから劉さんからもう二度と本をかりちゃだめ!」

「……? なんでそんなに怒ってるんだ?」


 このあと、本はすぐに燃やされたのであった。

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