李夜伝

恋して、愛して、裏切られて散っていく。復讐、愛憎、悲恋の中華ダークロマンス
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おまけ 竹の筒のしかけ

公開日時: 2022年12月15日(木) 00:51
文字数:674

 夜の闇。人気のない林の中。

 ちょうちんを持った夜糸やし夏桑かそうが座りこんでいる。節ごとに切った竹の筒に、かわいた牛糞ぎゅうふんと、かわいたわらをつめていた。

 

「こんどはどうかしら」

 

 夜糸が牛糞からとびでる藁に、ちょうちんのろうそくの火をあてた。藁がみるみる燃える。

 竹の筒をむこうにほおりなげた。ぱんっと、音をたてて破裂する。

 

「やったべ。やっとうまくいった」

「ふう。なかなかうまく燃えないから心配したわ。でもこれでちょうどいい分量がわかった」

「なあ。なんで竹の筒に糞とわらをいれると爆発するんだ?」

「私もくわしくはわからないけど、筒の中で熱気が充満するようよ。牛の糞はよく燃えて、熱気をさらに発生させるからいれたの」

「へえ、そうなんだな」

 

 がさがさと、足音と声がした。

 

「おい! そこでなにをしている」

 

 みはりの農民の男がたちはだかった。酒くさい。

 

「あら。まずいわ」

「いまの音はなんだ」

「ええと、いまのは……」

「おらのの音だ。心配すんな」

「夏桑」

「屁だあ? はん。でかい屁だったな」

 

 みはりの男は夏桑の頭をなぐりつけた。

 

「いて」

「夏桑!」

「もっとしずかにやれ!」

 

 男はさらに夏桑をなぐろうとする。

 

「あなたもしずかにお酒をのんだら? 監荘人かんそうにんの王さんに知られたら、ただではすまないのじゃない?」

「ちっ」

 

 男は去っていった。夜糸は夏桑の頭をさする。

 

「ごめんね」

「いいべよ。おらおまえのためなら命はるって言ったろ」

 

 夜糸は夏桑をだきしめた。夏桑はてれ笑いをする。

 

「なんだよ」

「私が信じられるのはあなただけよ。外にでても私といてくれる?」

「きくまでもないだろ。おらたち二人ならどこででも生きていけるべ」

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