夜の闇。人気のない林の中。
ちょうちんを持った夜糸と夏桑が座りこんでいる。節ごとに切った竹の筒に、かわいた牛糞と、かわいた藁をつめていた。
「こんどはどうかしら」
夜糸が牛糞からとびでる藁に、ちょうちんのろうそくの火をあてた。藁がみるみる燃える。
竹の筒をむこうにほおりなげた。ぱんっと、音をたてて破裂する。
「やったべ。やっとうまくいった」
「ふう。なかなかうまく燃えないから心配したわ。でもこれでちょうどいい分量がわかった」
「なあ。なんで竹の筒に糞とわらをいれると爆発するんだ?」
「私もくわしくはわからないけど、筒の中で熱気が充満するようよ。牛の糞はよく燃えて、熱気をさらに発生させるからいれたの」
「へえ、そうなんだな」
がさがさと、足音と声がした。
「おい! そこでなにをしている」
みはりの農民の男がたちはだかった。酒くさい。
「あら。まずいわ」
「いまの音はなんだ」
「ええと、いまのは……」
「おらの屁の音だ。心配すんな」
「夏桑」
「屁だあ? はん。でかい屁だったな」
みはりの男は夏桑の頭をなぐりつけた。
「いて」
「夏桑!」
「もっとしずかにやれ!」
男はさらに夏桑をなぐろうとする。
「あなたもしずかにお酒をのんだら? 監荘人の王さんに知られたら、ただではすまないのじゃない?」
「ちっ」
男は去っていった。夜糸は夏桑の頭をさする。
「ごめんね」
「いいべよ。おらおまえのためなら命はるって言ったろ」
夜糸は夏桑をだきしめた。夏桑はてれ笑いをする。
「なんだよ」
「私が信じられるのはあなただけよ。外にでても私といてくれる?」
「きくまでもないだろ。おらたち二人ならどこででも生きていけるべ」
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