李夜伝

恋して、愛して、裏切られて散っていく。復讐、愛憎、悲恋の中華ダークロマンス
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おまけ 再会の予兆

公開日時: 2022年12月6日(火) 00:58
文字数:864

 郊外こうがいの永達のやしき。

 寝室で、永達えいたつがはだかの女とねそべっていた。

 

「はあ」

「どうしました? 殿下でんか

「退屈だ」

「子育てすれば退屈なんて感じなくなりますよ」

「あ?」

「……あのね、わたし殿下の子をはらんだみたいなんです。だから約束どおりわたしと……」

 

 永達は女を寝台からなげおとした。女は腰をうち、腹をおさえうずくまる。


「うっ……」

「そなたが勝手におちただけだろう」

 

 女は涙をぼろぼろながし、はだかのまま寝室から出ていった。すれちがいざま、李遠りえんが入る。

 

李隊長りたいちょう? こんなところまでなんの用だ?」

「殿下、おのぞみの宝物ほうもつを買うのに金がたりません」

「もうか。では妻の実家の鄧家とうけにねだれ」

「鄧家は太子妃たいしひへの毎月の仕送りの金だけで汲々きゅうきゅうとしているようです」

「やくたたずめが。では母上にねだる」

杜夫人とふじんさまは陛下へいかからの旧情きゅうじょうは深くも、このごろはご寵愛ちょうあいがへりふところがさみしくなったのでは?」

「そうでもない。父上の寵愛をとりもどしたそうだ。最近母上につかえた宦官かんがんのおかげでな」

「宦官の?」


 宦官とは、生殖器を切除し、後宮こうきゅうきさきたちに仕える官吏かんりのことだ。

 

「そやつの私有地のおもしろい『遊び』のおかげで若返ったとか」

「『遊び』?」

「若い女を集めて『遊ぶ』んだとか。どんなのだろう。おもしろいのなら私も行こうか。……おい、もうよいだろう。さっさとでていけ」

 

 永達にそっけなく言われ、李遠はけわしい目をして寝室をあとにした。


 


 李遠は廊下を歩きながらひとりごちる。

 

「『遊び』とはなんだ? 調べよう」

 

 もし永達がその『遊び』とやらに行くのであれば、ついていけば彼を殺す隙もあるかもしれない。

 

「若い女を集めて『遊ぶ』か。あの女のことだ。どうせろくなことではない」

 

 若い女といえば、鄧家のあの娘の所在がゆくえしれずになっているらしい。

 どこかに売られる前に、官吏かんりでおじの鄧通閔とうつうびんのもとから脱走したという。

 鄧通閔は若い娘にだしぬかれたまぬけな男として、宮中でものわらいにされていた。当然通閔はかんかんでいる。

 

「あの娘も夫人の宦官の私有地とやらに流れついていれば、……いや、そんな偶然があるはずないか」

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