高校入学を期に一人暮らしをした俺は〇〇系女子を拾った

意外な場所で一人暮らしを始めた主人公の話
謎サト氏
謎サト氏

珍しく闇華が辛辣な感想を言う

公開日時: 2021年2月7日(日) 23:20
文字数:3,719

 零と闇華が家に入居するまで置かれていた環境を考えるととても勉強しているとは思えなかった。二人共勉強していたからその考えは間違ってたんだけどな


「とりあえず勉強していたようで何よりだ」

「アタシと闇華がアンタと出会うまでにいた環境を思い返すとそう言われても仕方ないわよね」

「そうですね、零ちゃんも私もちゃんとした環境にはいませんでしたし、恭君がそう思うのも無理ありません。それはそうと、この小説のどこがゴミなんですか?」


 零達が勉強していたという事が分かったところで今読んでるもののどこがゴミなのか説明しよう


「そうだなぁ……、まず一つ目はこの一文だ」


 俺は零達に見てほしい一文にカーソルを合わせ、零と闇華はその部分に注目する。この作品を書いた奴は前書きでリアリティがどうのとかぬかしてたけど、ハッキリ言って世界人権宣言の使い方を間違えている時点でリアリティなど皆無だ


「…………これを書いた人はバカなのかしら?」

「呆れて物も言えないとはこの事なんでしょうね……」


 零はともかく、闇華がそう言うという事からこれを書いた奴は相当のアホかキャラに対する憎しみのあまり勉強した奴なら誰もが知っている事すら分からなくなっているかのどちらかだと思われる


「普段から割とものをハッキリ言う零はともかく、控え目な闇華がそこまで言うとは……」


 最初にゴミを掴まされたと言ったのは俺だからこの作品を擁護はしない。人気作品にアンチが湧くのは仕方なく、それも込みで人気作品だと俺は認識している。これが人や番組でも同じで人気があれば必ずアンチというのは出てくる。それはそうと普段は控え目な闇華が他人を見捨てるような発言をするとは驚きだ


「控え目なのは認めますけど、これはいくら何でも酷すぎますよ……。この方は俄か知識ですか?」


 oh、闇華さん、辛辣ですね


「珍しいわね、闇華が辛辣な事を言うだなんて」

「だな、ここまで辛辣な闇華なんてあんま見ないから新鮮だ」


 闇華の口から辛辣な意見が飛び出す事など今まで一度たりともなかった。自己主張は激しいけど


「私だって辛辣な事くらい言いますよ?恭君達に対しては言う必要がないから言わないだけです」


 闇華が辛辣な事を言う必要がある場面も見てみたい気もしなくはないのは俺だけだろうか?


「辛辣な事ばかり言ってると敵を作るだけだから言わないに越した事はないわね。見てみたいもしなくはないけど」

「全面的に零に同意」


 辛辣な意見が的を射ているのならまだしも人をいびる為だけなら単なる嫌がらせだ。敵を作るリスクを考えると言わない方がいい事もある


「でしょ?私は零ちゃん達にもですが、恭君には嫌われたくないんです」


 零と闇華。同じ歳で家に来た時期が近いという事もあってかこの二人は本当の姉妹────いや、それ以上に仲がいい。学校での様子は分かんねぇけど、きっと家にいる時と大差ないだろう


「安心しなさい、アタシは闇華を嫌うだなんてないわ」

「零ちゃん……」


 今の零と闇華は例えるなら付き合い立ての恋人。今にも抱き合いそうな雰囲気でそれに口を挟むのは野暮ってものだ。まぁ、それが俺の上で行われてなければ


「二人共仲がいいのはいい事だが、人の上で百合百合するのは止めてくれません?」

「あら、仲間に入れてほしいのかしら?」

「それならそうと言ってくれればいいのに、恭君は素直じゃありませんね」


 クスクスと笑う二人は少し大人びて見え、そのまま迫られたら惚れてしまいそうだ。


「そんな事一言も言ってねぇだろ。つか、読んでた作品がゴミな理由の説明に戻りたいんだが……」

「闇華の辛辣な意見で忘れてたわ」

「わ、私のせいですか!?」

「違うけど違わねぇな」

「どっちなんですか!?」


 今日は本当に珍しい事が起こる日だ。闇華が辛辣な意見を言ったと思ったら今度はその闇華がオーバーな反応をするとは……


「どっちでもいいだろ。それより、この作品がゴミな理由の説明に戻るぞ」

「恭君のいじわる……」


 琴音や飛鳥のふくれっ面は見慣れているが、闇華のふくれっ面は初めて見た


「はいはい、意地悪で結構。それより、この作品がゴミな理由二つ目は何と言っても被害届を郵送したとドヤ顔で言ってるところだな」


 被害届は決められた様式があり、警察や検察以外は作成する事が不可能な書類だ。このゴミ作品では郵送された被害届を警察が受理した描写があり、それに基づいてキャラが逮捕、起訴されている。何がおかしいって被害届を郵送で提出しているのもだけど、犯人逮捕ってのは現行犯でもない限りは事務作業になり、証拠を掴み、逮捕状を裁判所に請求する。どれくらいでその申請が通るかは知らんから何とも言えない部分はあり、一概にこうだとは言えないものの、被害届を郵送したって事はだ、誰がその書類を書いたんだって話になる


「被害届って普通は警察署ないし近くの交番で作成してもらうものなんじゃないんですか?」

「警察官が事情聴取を元に作成する事もある書類なのに郵送って……これを書いた奴のレベルを疑うわ」


 作者本人に聞かせたら発狂するんだろうなぁ……。言い忘れていたが、今読んでる作品の作者は誤字・脱字の報告であっても場合によっては誹謗中傷と受け取りかねないヤバい奴で振る舞いだけ見ると頭良さそうな奴と錯覚してしまいそうになる。実はそうじゃなく、本当にコイツは調べたのかと疑いたくなるレベルのバカなんだけどな。そんな奴が書いた小説の一部を公開しよう


 “どうも、並木署の新井です。覆面パトカーで来ました”

 “世界人権宣言違反により貴女を逮捕します。裁判所から逮捕状も出ています”


 これだけでも頭が痛い。というのも場所の描写はいいとして、警察車両が何であれ覆面パトカーで来ましたと言わせる必要はなく、世界人権宣言には法的拘束力はない。世界人権宣言違反って何だよ……アホか?一部と言いながらたった二行で申し訳ない……。この作者のアホさ加減を見ると二行が限界だったんだ


「これでコイツ自身は自分が頭のいい人間だと思っている節があるから始末に負えないんだよなぁ……」


 ネットの世界や小説の世界じゃ好きな自分、なりたい自分になれる。誰も自分をリアルで知るものなんていないんだから。だからこそチートやハーレムが生まれたんだろう


「俄か知識をドヤ顔で語られても困るだけよね……」

「ですね、最悪子供がそれを真に受けてしまう可能性もありますし……」

「そうなんだよなぁ……」


 俺は知識に絶対的な自信はない。だってそうだろ?全てを知ってる人間なんてこの世の中に存在せず、知らない事だってある


「それはそうとアタシは自分のパソコンと荷物を取りに行きたいから一旦部屋に戻るわ」


 立ち上がった零は自分の部屋へ戻り、残された俺と闇華は……


「恭君、少し出ませんか?」

「そうだな、ずっと籠りっぱなしってのも退屈だし出るか」


 零と同じように部屋を出た。琴音達はスマホ弄りに夢中で飛鳥と茜はスペースウォーに夢中。一応、声は掛けたものの、聞いてたかどうかは怪しい


「部屋から出たはいいものの、これからどうする?」


 闇華の提案により部屋を出たまではよかったものの、行くところもやる事もない。海か山に行くと言っても時間帯が微妙だから存分に楽しめるか?と聞かれると微妙なところ


「とりあえず私のお部屋に行きませんか?零ちゃんと同じく荷物とパソコンを取りに行かなきゃいけませんので」

「俺の部屋に移る気かよ……ま、やる事も行くところもないからいいけどよ」


 零が荷物を取りに行くと言った時点で彼女が俺の部屋に移るだろう事はお察し。闇華も移ってこないわけがない


「なら決まりですね」


 俺達はエレベーターに乗り、一階へ降りると東側に移動し、再びエレベーターに乗る。闇華が自分の部屋がある階のボタンを押し、到着するとすぐさま彼女の部屋へ。道中気になったのはホテルの従業員と全く遭遇しなかった事。フロント限定で言えば奥の事務室で作業をしていたと言われてしまえばそれまでなのだが、売店に店員がいなかったのは気になる


「モニターがないからなのか、広く感じる……」


 闇華の部屋に入った第一声がこれだった。俺の部屋にあるモニターは室内が狭く感じるほど大きくはないものの、他の部屋に入るとどうしても広く感じてしまう


「女の子の部屋に入って第一声がそれですか?もっと他に言う事はないんですか?」

「女子の部屋と言ってもここは客室だろ。特に言う事なんてない」


 これが闇華のプライベート空間だったなら他に言う事もあるだろう。しかし、生憎とここは客室で作りやものの配置は他の部屋と大差なく、感想を求められても困る


「恭君、女の子と二人きりなんだよ?もっと感想ないの?」


 いつも敬語で話す闇華がいきなりのタメ口。これがギャップ萌えというやつなのか?


「そうだなぁ……いつも可愛いと思ってるけど、普段敬語の奴がいきなりタメ口で話すというのは可愛さがより一層引き立つな」


 ギャルゲー然り、ラブコメ然り、ギャップを見せられると不覚にもときめいてしまう。俺はそういう男だ


「そかそか、私って普段から恭君に可愛いと思われてるか」

「ああ。闇華は十分可愛いぞ」

「ありがとう、恭君」


 この時の闇華はいつもとどこかが違う。俺にはそう思えた

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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