高校入学を期に一人暮らしをした俺は〇〇系女子を拾った

意外な場所で一人暮らしを始めた主人公の話
謎サト氏
謎サト氏

俺にとって監禁生活はマジで理想の生活だと思う

公開日時: 2021年6月23日(水) 22:56
文字数:3,229

 もう一人の俺との邂逅から早いもので二日が経ち、俺はこれまでと変わらない穏やかな朝を迎えていた。その間、監禁されてるのは変わらず。零達の態度も変わらずとこれまで通りの日常を過ごしていた。変化するのは大切だが、時として変化しないのも大事だと思う今日この頃なのだが……


「何か違うんだよなぁ……」


 零達の寝息をBGMに監禁生活が始まってから今に至るまでを振り返る。監禁生活は俺が求めた理想の生活。しかし、何かが違う。そう感じていた


『何かってなに~?』

『今の生活こそ恭様が求めた生活でしょ? 求めていた物が手に入って何が不満なのかしら?』


 早織と神矢想花は頭に疑問符を浮かべながら首を傾げる。神矢想花の言うように今の生活は俺が求めたもの。手に入れたのだから何の不満もない。ないはずなんだが……


「なんつーか……言葉では上手く伝えられねぇんだけど、何かが違うんだよ。もっとこう……監禁された! って感じが欲しいというか……」


 監禁生活と銘打ってはいるが、ぶっちゃけ今の生活は監禁される前と何ら変化はない。零達が外出しろと口酸っぱく言わなくなった程度だ。付きそう奴によっちゃ外出せざるを得ないが、それは仕方ない。学校、仕事とそれぞれ外へ出なきゃならないんだからな。それを込みでだ、この生活は監禁生活ではないと俺は思う


『要するに灰賀君はマンガや小説のような監禁生活を送りたいという事ね?』


 二日前に俺を見捨てた薄情者の一人、千才さんが口を挟んできた。この人と話すのも久しぶりのような気がするんだが……気のせいだろ


「あー……そうなんですかね?」

『聞き返さない。ハッキリ言わせてもらうと今の生活は監禁生活っていうより過保護生活よ? 監禁とは程遠いわ』

「千才さんもそう思いますか……」

『ええ。監禁って車とかの狭い場所に閉じ込めて相手を外へ出さないようにする事ですもの。今の灰賀君の生活は狭い場所に閉じ込められてなければ外へ出るのも付き添いさえあれば比較的自由じゃない』

『『────!?』』

「ですよねー」


 ハッとした顔の早織と神矢想花は放っておくとして、千才さんの言う事は的を射ていた。彼女からしてみれば本来の監禁の意味を言ったまでだろなんだろうけど


『ええ。私が警察官だった頃に監禁事件も担当した事あるけれど、こんなに自由ではなかったわよ? むしろ監禁場所=被害者の世界みたいな感じだったわ』


 そりゃそうだ。監禁って狭い場所に閉じ込める事なんだからな。そんな生活を望む俺も俺なんだけどよ


「それガチのやつじゃないですか」

『ガチのやつを話したんですもの。当たり前よ』


 事もなげに言う千才さん。監禁生活は俺にとって理想だ。だが、ガチの話を聞くと……


「その話詳しく!」


 心が躍るなぁ……


『あ、貴方、いい根性してるわね……』

『きょう……』

『恭様……貴方……』

『灰賀君……』

『恭君……』

『恭っち……』

『うわぁ……』


 千才さんの顔が引きつり、早織と神矢想花はなぜか顔を赤らめる。麻衣子さん、紗枝さん、紗李さんは可哀そうなものを見るような目で俺を見る。凛音さんに至ってはドン引き。幽霊達の反応は様々だが、俺は理想を追い求め、手に入れる男。周りの目など気にするか!


「何です? 監禁生活こそ俺の理想なんですよ」

『解かってはいたけれど、貴方おかしいわよ?』

「おかしくなきゃ見ず知らずの零、闇華、琴音と別室にいる母娘と加賀達を拾ったりなんかしませんし、藍、真央、茜、神矢想子に同居の許可なんて出しませんよ」

『それは……そうだけれど……』


 普通なら零に絡まれ、事情を聞いた時点で即警察に引き渡している。部屋が広すぎるってのが一番だが、それ抜きで考えても見ず知らずの人間を住まわせるだなんてぶっ飛んだ真似普通はしない


「納得したならとっととガチの監禁について話してください」

『はぁ、分かったわよ……』


 観念したのか千才さんが一呼吸置き、口を開いた






 千才さんが遭遇したという監禁事件。率直な感想を言うと俺の理想そのもの。最高の話だった。要点を掻い摘んで話すと被害者は女。彼女を含む数名の警察官が現場に到着すると玄関に靴はなく、両手足をロープで拘束され、憔悴しきった女がいたらしい。俺にそっちの趣味はねぇが、見つかった女の状況は裏を返すとこうだ。監禁した奴が身の回りの世話を全てしてくれる。最高じゃないか。さすがに風呂とトイレの世話は勘弁だけどな


「俺もそんな生活送りてぇ……」

『貴方やっぱ変よ。ねえ? みんな?』


 千才さんが早織達に視線を向けると早織と神矢想花以外の連中が首を縦に振った。早織と神矢想花? 目を輝かせてますね


『きょう! お母さんをそこまで求めてくれるだなんて最高だよ!』

『恭様はやっぱり私なしじゃ生きていけないのね! いいわ! 今日から貴方の世話は全てこの私がするわ!』

「ナニイッテルカワカリマセン」


 そんな生活送りてぇとは言ったが、一から十まで世話してくれとは一言も言ってねぇんだが……


『『チッ!』』

「いやいや、舌打ちされましても……」

『灰賀君……ちょっと考えた方がいい』

『恭君、悪い事言わないから監禁生活は止めといた方がいいよ』

『恭っち、あたしも麻衣子と紗枝ぽんに同意。監禁生活を求めるだなんて変だよ』

『二人の言う通りよ。灰賀君、ちゃんと考えなさい』


 何で注意されなきゃならんのだ。別にいいだろ? 理想なんだから。スゲー理不尽なんだが……





 幽霊達にありがたくもなんともない話を聞かされてると零達が起床。話はそこで中断となり、仕方なく起き上がるのだが……


「グレー! 今日のグレー当番は私だよ!」


 寝起きとは思えないテンションの茜に声を掛けられた


「え? マジでやるの?」

「当たり前だよ!」

「俺は動物かよ……」

「動物じゃなくて私の彼氏だよ!」

「はいはい」


 茜が言ってた当番とは俺と一日を過ごす当番の事だ。どうして当番制になったかと言うとだ、もう一人の俺に茜達を紹介した日に話を遡らなければならない




 もう一人の俺と邂逅したあの日────正確にはアホな説教が終わった日の事だった


『はい、これから俺と一日一緒にいる当番────灰賀恭保護当番を決めます。ちなみにこれは灰賀恭の霊圧である俺の独断と偏見で決めますので異論反論は受け付けません。い・い・な?』


 もう一人の俺が発する威圧感に零達は首をブンブンと縦に振る。女性陣が怯えてる光景は珍しいが、ちょっと待て


「おいふざけんな。俺は保護されるような歳じゃねぇぞ?」


 さすがの俺も保護当番を決められるのには耐え切れず口を挟む。だが……


『ウルサイ黙れ。お前は絶対に勝手にどこか行ったりしねぇとか言っときながらすぐにどこかへ行こうとするだろ。言ってる事と行動が合ってねぇんだよ。学習能力がないとも言えるが、少しは心配する奴の事も考えろ。今のままだと零達はいずれ暴走するぞ?』

「うっ……」

『お前も暴走は本意じゃないだろ?』

「た、確かに……」

『そこで一日お前と一緒にいる当番を決める。だが、零達に決めさせると絶対にスパッとは決まらねぇ。だから俺が独断と偏見で決める。文句ねぇだろ?』


 スッゲー理不尽なんだが、零達の心境を考えると強く言い返せない


「文句はねぇけどよ、当番って言うの止めね? なんかペットみたいで嫌なんだが……」

『ペットみたいなもんだろ。つか、お前は躾のなってない犬あるいは落ち着きのない子供だ』

「ひっでぇ……」

『そう思うなら自分の行動を少しは改めろ。でだ、お前の当番だが順番は────』





 そんなこんなでもう一人の俺が独断と偏見で当番を決めた結果、あいうえお順という事で藍→茜→飛鳥→琴音→想子→零→闇華→由香の順となった。昨日から実行という事で昨日の当番は藍だったのだが……学校の連中から生暖かい視線を向けられた事だけ言っておこう


「もー! グレー返事が適当!」

「悪かったって。ちゃんと可能な限り茜と一緒にいるから許してくれ」


 リスみたいに頬を膨らませる茜を軽くやり過ごし、俺は再び眠りに就いた。見る夢はもちろん決まっている。監禁生活の夢だ



今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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