高校入学を期に一人暮らしをした俺は〇〇系女子を拾った

意外な場所で一人暮らしを始めた主人公の話
謎サト氏
謎サト氏

時として親からのメッセージとは子をイラつかせるものだ

公開日時: 2021年2月5日(金) 23:25
更新日時: 2021年2月14日(日) 03:03
文字数:5,381

「「はぁ、はぁ……、も、もう、だ、ダメ……」」


 俺が零に枕をシュートした事から始まった朝の鬼ごっこは互いに体力が尽きるまで続き、互いに汗だくでリビングのど真ん中に倒れるという無残な結果で終わった


「はぁ、はぁ……、れ、零って、い、意外と、あ、諦めが、わ、悪いんだな……」

「そ、そういう、きょ、きょうこそ、い、意外と、に、逃げ足が、は、早いのね……」


 リビングのど真ん中で大の字で寝ころぶ俺と零。朝から走るのは正直、ツライ。


「「はぁ、はぁ……」」


 朝から走るのがツラかったのは俺だけじゃなく零も同じだったようで、未だに肩で息をしている。俺は分かり切っていた事だが、零にも運動は向かないらしい


 三十分後───────。


「恭! アンタさっきはよくもアタシに枕なんかぶつけてくれたわね!!」

「そっちこそ! 夢の中で俺に何させてんだ!!」


 復活した俺達はリビングのど真ん中で睨み合っていた


「あ、アンタ! あ、アタシの寝言聞いたの!?」

「ああ! バッチリ聞かせてもらったぞ! 一体夢の中で俺にどこを触らせてんですかねぇ!」


 別に夢の中の俺に嫉妬しているわけではない。どちらかと言うと夢の中で俺がどんな扱いを受けていたのかが気になる


「ど、どこって……あ、アタシはただ恭を下僕のごとく扱き使ってる夢を見ただけよ!」

「会って一日目の奴を下僕扱いすんな!」


 一説によると夢とはその人の願望とも言われている。つまり、零は俺を下僕のごとく扱き使いたいらしい。非常に不愉快だ!


「いいでしょ! 別に! アタシの夢なんだから!」

「よかねぇよ! 夢ン中でも俺を下僕にすんなよ!!」

「夢くらい自由に見させなさいよ! 小さい男ね!」


 夢を見るのは自由だ。しかぁーし! 夢の中ででも何故俺が零の下僕なんぞせにゃならんのだ!


「夢を見る事は止めねぇよ! ただな! 見るなら俺に迷惑掛けない夢を見ろ!」


 夢を見るのは自由だ。それを止める権利は誰にもない。ただ、俺が下僕になっているのが気に入らないだけで


「アタシの夢をアンタにとやかく言われる筋合いはないわ!!」


 俺と零の論争は『夢の中だけならいいか』という結論が出た事で終わり、その結論に至るまでに二十分という長いようで短い時間が掛かった


「これからどうする?」


 論争が終わった後、俺達はこれからどうするかについて考えていた。何回も言うようにここには家具の一つもない。テーブルや棚はもちろん、キッチン用品、食器すらも


「どうすると言われても、アタシはお金ないから新しいお洋服や下着すら買えないのよね……」


 零は無一文。昨日の夕飯代や飲み物代は全て俺持ち。ん? 下着すら買えない? ちょっと待て、下着すら買えないという事は……アレか? 零ってもしかして……


「れ、零さん?」

「何よ?」

「つかぬ事を聞きますが、下着すら買えないって事はもしかして……」


 零を拾った時、コイツは手ぶらだった。カバンの一つも持っていなかった。つまり……


「この下は裸よ?」

「アウトぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 道理で腕に柔らかい感触があったわけだよ! そりゃそうだよな!! ガウンの下何も着けてねーんだから!! って俺も手ぶらでブチ込まれたから人の事言えねぇよ!!


「い、いきなり叫ばないでよ! ビックリするじゃない!」


 零は両手で耳を塞ぎながら俺を睨んだ。


「わ、悪い……」


 いきなり叫んだのは悪いと思う。だがな、会って一日と経ってない男の前にガウン一枚というのはさすがに警戒心が無さ過ぎる


「全く、アタシもだけど、アンタも同じようなものじゃない!」


 そう。俺も零と同じで手ぶらでここに放り込まれたクチだ。だから、ガウンの下は何も着けてない。誤解されないように言っておくが、俺達は互いの着替えを見たわけじゃないぞ?


「そ、そりゃ、そうだが……どうして俺が下着を着けてないの知ってるの?」

「荷物の話が全く出てこなけりゃ嫌でも察しは付くわよ!」

「そ、そうか……」

「「………………」」


 荷物の話が出たところで俺と零は無言に。冷静になって考えると俺達はガウン一枚で一緒に寝て、ガウン一枚で朝から鬼ごっこをした事になる。


「「──────っ!?」」


 零も同じ事を考えたのか瞬く間に顔が真っ赤に染まる。俺も冷静になった今、スッゲー恥ずかしい。つか、零の顔まともに見れない


「な、なぁ、零」

「な、何よ?」

「け、今朝の事なんだけどよ」

「う、うん」

「お互いに忘れないか?いろいろと恥ずかしいし」

「そ、そうね、忘れた方がお互いの為よね!」


 という事で俺達は今朝の事をなかった事にした


 恥ずかしさを乗り越え、何とか互いの顔を見れるようになった俺達は向かい合う形で座り、今後の問題について話していた


「最初の問題は俺達の服か……」

「そうね。さすがに何日も同じ下着、同じ服ってわけにもいかないものね」

「そうだよなぁ……洗濯に関しては七番スクリーンのランドリー使えばいいけどよ」


 洗濯に関して言えば七番スクリーンのランドリーを使えばいい。問題は衣服だ


「洗濯に関してはそれで問題ないとしても、下着と服はどうするのよ?」

「問題はそこだよなぁ……ダメ元であそこに行ってみるか」

「それしかないのね……」

「ああ、それしかない」


 女物の下着と洋服なんて置いてないだろうけど、ワンチャン置いてあればいいなという半分だけ胸に期待を秘め、俺達は部屋を出て、あそこへ向かった。


 あそこ。もとい六番スクリーン。その前に来た俺達


「昨日はザックリと確認しただけでちゃんとは見てないが、あると思うか?」

「それは分からないわ。中身までは確認してないもの」

「だよなぁ……」


 この六番スクリーンの中には大量のタンスやクローゼットがある。言わば衣類専用スクリーンというわけなのだが、仮に衣類があったとしてだ。俺一人で着るには些か多すぎると思う


「ええ。それに、男物の服や下着はあったとしても女物の服や下着があるとは限らないと思うの」


 零の言っている事は正しい。元々は俺が一人暮らしをする為に親父が用意したものだ。だから男物の衣類はあったとしても女物の衣類があるかってのは中を確認するまで分からない


「なかったら買えばいいだろ。それより、とりあえず入ってみてみようぜ」


 一人暮らしであまり無駄遣い出来ないが、零の衣類を買うくらいなら出来る


「恭! アンタねぇ! そん──────」


 零が何かを言おうとしていたみたいだが、ごちゃごちゃ言われるのも面倒だったからそれを無視して扉を開け、一足先に中へ入る


「は~、昨日はざっと見ただけだが、改めて見るとスゲー数だな」


 入口で靴を脱ぎ室内へ入るともの凄い数のタンスやクローゼットがある。この中に下着はもちろん、洋服や俺の予想だと水着も入っているだろう


「アンタねぇ! 人の話くらい聞きなさいよ!」


 俺がタンスとクローゼットの数にあっけからんとしていると遅れて零がやって来た


「悪い悪い、それより改めて見るとすごくね?」

「全く! アンタは……でも、そうね。すごいわね」


 目の前のタンスとクローゼットの数は説教をしようとした零ですらすごいと言うくらいだから相当な数だ。この中から俺の下着と洋服、および零が着れそうな下着と洋服を探すのは骨が折れそうだ


「この中から俺らの下着と服を探すのかなり大変だな」

「そうね。恭のものならともかく、アタシのはあるかどうかすら分からないのに」


 このタンスとクローゼットの数を見ると俺のだってあるかどうか分からない


「はぁ……何考えてんだよ……」


 俺の部屋である十四番スクリーンですら一人で暮らすには広すぎたというのにこの六番スクリーンは十四番スクリーンに広さこそ劣るが、やっぱり広い。そんな中から俺の洋服を探すのかと思うと気分は憂鬱だ


「ボヤいていても仕方ないでしょ! とりあえず順当に探していくしかないわね」

「だな……」

「んじゃ、アンタは右、アタシは左。A列から順当に見ていくことにしましょう」

「へーい」


 零の提案により俺はA列右側、零はA列左側から順当に見ていく事になったのはいい。でも、何だろう?最初から俺一人で住まわせるつもりならスクリーン一つを衣類の為のスペースにする必要があるのかという違和感が拭いきれない


 最初のタンスの前に来た俺は神にも縋る思いだ


「さて、俺の服もだが、零の服もあってくれよ……」


 意を決した俺は思い切ってタンスを開ける。するとそこには…………


「………………女物の下着かよ」


 タンス一杯に色とりどりの女性下着がビッシリと入っている。そして、その上にはまたしても封筒


「下着を見つけたのはいいとしてだ、この封筒は嫌な予感がしてならないのだが……」


 下着を見つけたのはいいとして、一緒に入っていた封筒からは嫌な予感しかしなかった。


「この封筒はスッゲー開けたくねーけど……開けなきゃダメだよなぁ……」


 この建物にある封筒は十中八九親父から俺に宛てられたメッセージだ。しかし、十四番スクリーンの事を思い出すと嫌な予感しかしない


「開けたくはない! 開けたくはねーんだけどなぁ……」


 俺の中で開けたくないという気持ちとアホ臭いメッセージが綴られているとは分かり切っていても開けたいという気持ちがせめぎ合う。


「何か重要な手がかりが書いてあるかもしれんし一応、開けるか」


 そのまま捨ててしまってもいいのだが、何か重要な事が書いてあるかもしれないと思った俺は意を決して封筒を開けた。そこに書いてあったのは


『恭☆ヘタレのクセしてもう女を連れ込んでしっぽりとヤッたのか!意外と男らしいとこあるんだな! あっ! 今更遅いとは思うが、ちゃんと避妊はしなきゃダメだゾ☆出来たら否認はするなヨ☆それと、この下着の下に男のエチケットあるから足りなかったら使ってくれ。父より』


 セクハラ親父からのしょうもないお言葉だった。


「……………」


 そのメッセージにイラっと来た俺は無言で手紙を破り、念のために下着の下を調べてみると親父からの手紙通り男のエチケットがこれまたビッシリと入っていた


「親父はいつか殴ろう」


 親父を殴る決意をし、下着があった事を報告するために零の元へと向かった


「きょ、恭……」


 零も俺に何かを伝える為にこちらに向かっていたらしく、辿り着く前に鉢合わせした


「お、おう……どうした?何か顔が赤いぞ?」


 物色する前は平然としていた零。それが今は顔を真っ赤にし、俺と目を合わせようとしない


「あ、うん、あ、アンタの下着は見つけたんだけど……」

「見つけたんだけど?」

「し、下着のついでにこ、これも見つけてしまって……」


 そう言って零が差しだしてきたのは俺が見つけたのと同じ封筒


「中開けたのか?」

「う、うん……わ、悪いなとは思ったわよ?で、でも気になって……」


 本当なら人ん家のタンスから見つけた封筒を勝手に開けるなと怒るところなんだろう。零がただ遊びに来た知り合いとかなら俺は間違いなくそう言っている。しかし、零は同居人だ。封筒の中身を開ける権利は十分にある


「封筒を開けた事に対しては怒ってない。むしろこの封筒の中にどんな事が書いてあるかだ。それ、預かっていいか?」

「う、うん、どうぞ」


 零から封筒を受け取り、早速中を開けて何が書いてあるのかを確認する俺。零が顔を真っ赤にするって事は余程の事が書いてあるに違いない。


『恭。それと、恭の彼女? お嫁さん? まぁ、どっちでもいいか。これを見つけたという事は君達は男女の仲……それも深い仲になったと思う。恭! ちゃんと彼女だか嫁さんだかを幸せにするんだぞ! 彼女(お嫁さん)へ、恭はヘタレでバカでどうしようもない奴ですけど見捨てないでやってください! 末筆ではあるが、二人とも幸せにな! あっ、ついでに、子供は女が一人、男が一人でよろしく! 父(義父)より』


 手紙に書いてあったメッセージに対して俺はどんなリアクションを取ればいいのか分からない。分かる事があるとしたら俺が住んでいるこの建物を紹介したのが親父だとバレてしまったという事くらいだ


「零、この建物を紹介した奴の事は後で話す」

「う、うん……」


 リアクションに困った俺はとりあえず話を逸らす事に。俺も零も衣類を探しに来てセクハラ全開の手紙を見つける事になろうとは 思いも寄らない。


「とりあえず残りのタンスとクローゼットを確認するか」

「うん」


 この後の確認作業で右側の列にあるタンスとクローゼットには女性ものの衣類が、左側のタンスとクローゼットには男性ものの衣類がある事が分かった。ちなみに、真ん中の列にあるクローゼットとタンスには水着やスキーウェアが入っていた


 タンスの中から目的のものを取り出し、部屋に戻って来た俺達は適当な個室に入り、各々着替えを済ませ、リビングに集まった


「これからどうする?」

「これからの事よりも先に言うべき事があるんじゃないの?」

「言うべき事?」

「そうよ! 女の子に会ったら最初に言うべき事! あるでしょ?」


 零はクルリと一回りし、俺に何かをアピールしてきた。が、俺にはサッパリ分からん!格好はジーパンにデニムシャツ、薄手パーカーとカジュアルなものだが……それだけだな


「サッパリ分からん! 第一、女の子とデートなんて一切した事のない俺に何を期待してんだ?」


 零、女慣れしてない俺に何を求めているんだ?


「こんのぉ~! ばかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 バチン!!!!


「ぐはぁ!!」


 俺は零から強烈なビンタをお見舞いされ、その場に倒れこんでしまった。ホント、何なの?マジで

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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