高校入学を期に一人暮らしをした俺は〇〇系女子を拾った

意外な場所で一人暮らしを始めた主人公の話
謎サト氏
謎サト氏

高校生にもなって親父と手を繋ぐとか嫌すぎる

公開日時: 2021年2月5日(金) 23:36
文字数:3,930

「さて、役者も揃ったし千才さんが過去に何をしたのか話していこうか?」


 犯人達を連れて来ると言って出て行ったお袋は五分もしないうちに目を白黒させる立てこもり集団を連れて戻って来た。外で警官達がビックリしたような声を上げていたけどそれは気にしない方向で。取るに足らない物事にかまけているとあっという間に日が暮れるからな。で、現在、今回の関係者が一堂に会している中、千才さんの暴露大会開始を宣言に至る


「灰賀君が私の過去の何を知っているというの?」


 若干イラつき見上げる形で俺を睨む千才さんだが、その表情にはまだ余裕があるように見える


「何を知ってるって、全てだ。アンタが犯人グループにした事も犯人達が言ってた自殺者にした事も全て知っている」


 知っているというのには語弊がある。正確には見たと言った方が正しい


「藍にでも聞いたの?だとしたら藍も灰賀君もかなり陰険ね」


 千才さんと東城先生は高校時代からの友人だったな、忘れてた


「俺は東城先生からアンタの過去なんて何一つ聞いてない。それに、俺はともかく、親友である東城先生を陰険呼ばわりするのは止せよ」

「本人の知らぬところで勝手に過去を暴露するような人間を陰険と言って何が悪いの?」

「一応言っとくけど、俺は東城先生からは何も聞いてない。これから暴露するのはアンタが犯人達と自殺者達に何をしたかだ。犯人達の話じゃ東城先生は虐めに関与してなかったらしいじゃないか」


 犯人達の話がどこまで本当なのかは分からないけど、復讐の相手に東城先生が含まれてないところを考えると本当である確率は50%と言ったところだ


「私だってそうよ! 高校時代は藍とずっと一緒にいたから虐めをしてる暇なんてなかったわよ!」


 捉え方によっては彼女達が恋人同士だったかのような感じに聞こえてしまうのは俺だけだろうか?


「そうかい。まぁ、この話を聞き終えた後でもう一度その台詞が聞けるのを楽しみにしとくわ」

「そうね。私も灰賀君の話が終わった後で貴方を逮捕出来るのを楽しみにしてるわ」


 売り言葉に買い言葉。今の俺と千才さんは一触即発状態


「それはどうでもいいとしてだ。話を始める。まず最初に千才さんの家がどんな家系なのかから話そう。彼女の家系は医者や弁護士、警察官僚といったいわゆるエリートが集まる家系だった。それ故に千才本人もゆくゆくは医者、弁護士、警察官僚になると幼い頃から将来を見据えていたようだ」


 ここで一呼吸置くついでに周囲を見回すと『頭いいんだ……』という声がチラホラ聞こえてくる。同時に『エリートの家系だったら性格歪みそうだよね』なんて声もある。完全にエリートというものに偏見を持っている意見だな……


「い、いつの間に調べたの……?もしかして灰賀君は私のストーカーかしら?」


 自意識過剰というのはきっとこういい奴の事を言うんだろうな……俺に調べる時間も隙もない事なんてアンタがよく知ってるだろ


「調べてはねーな。アンタが地に伏せているのも含めて種明かしなら全てが終わった後でしてやる」


 今ここで種明かしをするとこの場にいる全員の脳が処理落ちするのは目に見えている


「そう言うって事は私が倒れたのも貴方のせいと捉えていいのかしら?」

「そうだ」


 言っても理解するのは不可能だろうけど千才さんが倒れたのは俺が霊圧を当て、その状態が続いてるのは今も霊圧を当て続けているからに他ならない


「貴方ッ! 本気で逮捕するわよ!!」


 地べたを這いつくばりながら凄まれたところで怖くも何ともない


「彼女の家系についてはこれくらいにして、次に千才さんが犯人グループに何をしたかの話に移るけど、残酷。この一言に尽きる」


 俺は千才さんの脅しを無視し、話題を犯人達にした事に移すも顔をしかめるのは当事者達だけで親父達は頭に疑問符を浮かべている。


「当事者たる犯人達はともかく、親父達には何の話をしているのかサッパリだろうから簡単に説明するとだな、犯人グループにいる女────千才さんは嫌がる彼女の髪を切り、オマケにカッターで身体を切りつけた。嫌がる奴の髪を切る行為というのはこう言ったら本人には申し訳ないけど、ドラマとかマンガの虐めシーンじゃ定番だ。問題は彼女が使ったカッター、それがどんな状態だったかだ」


 見た俺が残酷だと感じたくらいだ。された本人は一生のトラウマものだろうと思い、犯人グループの女を見ると案の定身体を震わせ、涙を流していた


「された本人は思い出したくもないし、話を聞くのすら苦痛かもしれない。だけど、千才さんを追い詰める為には仕方のない事なんだ。その辺は許してくれ」


 俺は犯人達に言い聞かせるようにこの場にいる全員へ向けて言う


「もう止めろ!!」


 犯人の一人────俺に銃を突き付けてきた男が悲痛な叫びを上げた


「もう止めてくれ……、頼む……、頼むから……」


 悲痛な叫びを上げた男の声は最初の方こそ大きかった。しかし、自分のトラウマを抉られたせいで徐々に声は小さくなり、俯きだしてしまった。同じ立場なら俺もコイツと同じ事をしただろう。これ以上は無理か……


「分かった。アンタらの為にも話すのは止める。俺は別にアンタらのトラウマを抉って面白がろうだなんて思ってねーしな」


 これを聞いた犯人達はホッとした顔をしていた。それは千才さんも同じようなのだが、彼女の場合は自分のした事が明るみに出なかったという意味だろう


「まぁ、俺も語彙力が低いからな、説明するよりも実際に見てもらった方がいいと思っていたところだ」

「「「「「?」」」」」


 この場にいる全員が頭に疑問符を浮かべ俺を見る。彼らはきっと『過ぎた過去をどうやって見るんだ?』とこう思っているに違いない


「コイツ何言ってんだ?って言いたげな顔だな。俺も実際に第三者から同じ事を言われたたアンタ達と同じ事を思い、同じ視線を向けるだろう。とりあえず、犯人達はいいから親父達、騙されたと思って俺と鬼なしのかごめかごめをやらないか?回らなくていいからさ」


 自分でも何を言っているんだとは思う。これからやろうとしているのは某五歳児がやるような鬼のいない鬼ごっこのようなものだから


「恭、お前、ついに頭がおかしくなったのか?」


 可愛そうなものを見るような目で俺を見る親父をいつもの俺ならぶん殴ってやりたいと思うところではある。今回に限ってはそんな視線を向けられても仕方ない事を言ってるから反論出来ない。そうも言ってられないってのも現状なんだけどな


「親父がそう思うのも無理はない。親父、試しに俺と手を繋いでくれないか?」


 高校生にもなって父親に手を繋いでくれないかなんて言ってる方からすると身の毛もよだつ。今からやろうとしている事を信じさせるためには仕方ない事だとは言っても嫌なものは嫌だ


「恭、歳考えろ」


 うん、親父ならそう言うと思ってた。だから俺は────────────


「うっせ! 黙って言われた通りにしろ!」


 親父の手を無理矢理とった


「ば、バカ! 止せ! 気持ち────────!?」


 親父は俺を拒絶しようとしたところで言葉を失う。記憶の共有をしてる上に見てる記憶が可愛いギャルが海でキャッキャウフフしている心温まるものではなく、残酷という言葉が相応しいものだから当たり前と言えば当たり前か



 親父の手を握ってから少しした頃────────


「恭! い、今のは……」

「千才さんの記憶だ。それがどうかしたのか?」


 親父がようやく口を開き、俺はそれに何事もなかったかのように答える


「ち、千才さんの記憶って……」

「信じられねーだろ?警察官がだぜ?過去とはいえ犯罪スレスレ……いや、犯罪を犯していたんだからな」


 警察官をやっている人間が本当はどんな奴なのか、どんな生活を送っていたのかなんてのはどうでもいい。俺には興味のない事だからな。それが犯罪スレスレあるいは犯罪行為を行っていたとなると話は別だ。それが原因で洒落にならない事態が現在進行形で起こってるんだからな


「恭……、お前、どんなマジックを使ったんだ?」

「は?マジック?何の話だ?」

「惚けるな! 俺にあんな残酷なシーンを見せた種明かしをしろと言ってるんだ!」


 親父、人間の脳に直接映像を流し込むだなんて化学が進歩するか超能力者の類でもない限り不可能だろ。種も仕掛けもないし正真正銘千才さんの記憶だよ


「種明かしねぇ……」


 種も仕掛けもないとは言え、親父が……いや、大人が幽霊を信じるか?と訊かれればその答えは半々だ。全く信じないと言う人もいれば信じるって言う人もいる。


『きょう~、霊感だけ上げるって事も可能だから恭弥だけには私を見えるようにしちゃえば~?』


 答えに困っているところにお袋から助け船が出たのだが、毎度お馴染み言われた事は初耳である。そんな事出来んのかよ……


『うん、きょうがそのまま恭弥を持ち上げるイメージで力を籠めればね~。零ちゃん達の時は力を流し込むイメージをしたから彼女達もきょうと同じになったけど、今の方法だと幽霊は見えても抵抗する力なんてないからお母さん的にもきょう的にも安心安心~』


 何が安心なのか理解不能だ。でも、本人が種明かししろっつーならお望み通りにしてあげますか


「どうした! 早くしろ!」


 業を煮やしたのか親父は俺の手を振りほどき、胸倉を掴んできた


「分かったよ。ったく、後悔するなよ?」

「後悔?なん────────」


 親父が言い終わる前に俺はお袋に言われた通りイメージをし、力を籠めた。


「親父、俺の口から説明するよりも相応しい人に説明してもらった方がいいだろ。俺の斜め横辺りを見てみろ」


 力を籠め終わり、俺は胸倉を掴んでる親父の手を払う


「は?恭の横?横に何て────」


 バカにしたような感じの親父は俺の横……正確には横にいる人物(お袋)を見て固まった


『やっほ~恭弥~』


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