高校入学を期に一人暮らしをした俺は〇〇系女子を拾った

意外な場所で一人暮らしを始めた主人公の話
謎サト氏
謎サト氏

親父と夏希さんはバカなのかもしれない

公開日時: 2021年2月8日(月) 12:50
文字数:3,693

「これは……キツイな……」

「でしょ?」


 部屋で二人きりの俺と由香。年頃で血の繋がった姉と弟が二人きりになったら話す事なんて全くない。家庭環境にもよるだろうが、まず話なんてしないだろう。対して年頃で義理の姉と弟が二人きりになったら?こっちは一緒にいる年数にもよると思うが、話す事なんて多分ない。例にも漏れず俺と由香も一応は年頃の姉と弟。普通なら話す事なんてなく、無視し合うくらいだ


「片方が自分の父親だから尚の事キツイぞ……」

「あたしはあんな光景を毎日見てるんだよ?」


 さっきから俺が何を見てキツイと言っているのか気になる人もいるだろうから説明しよう。その前に話は数分前に遡る



 数分前────。


「恭、お母さん達がイチャついてる動画見ない?」


 俺の隣に寝ている由香がふとこんな事を言い出した。服は着ているものの、構図としては俺が彼女を腕枕している状態であり、裸だったら確実に事後。零達に見られたら誤解される事間違いなし! ちゃんと服着てるから誤解される心配は全くないけどな


「この状態でか?」

「うん、この状態で」


 今まで寝ながらゲームしたり、本を読んだりした事はある。寝ながらスマホは日常茶飯事であり、今更なのだが、女の子と一緒に寝ながら両親がイチャついてる動画を見るだなんて経験はした事がない。ある奴がいたら出て来て感想を教えてくれ


「嫌だ。状態がどうのとかじゃなくて、オッサンとオバサンのイチャつく動画みて何が楽しいんだよ?」

「あたしはそれを毎日見てるんだけど?」

「そりゃ由香は親父達と一緒に住んでるんだから毎日見てるわな」


 この時ばかりは一人暮らししててよかったと心の底から思った。話だけ聞いててもキツイものがあり、動画を見たら俺の親父と夏希さんを見る目は本当に変わる。どう変わるかは自分でも分からんけど


「そうだよ! っていうか! 家族なら恭もあたしと同じ苦しみを共有すべきだよ!」

「あ、僕は貴女の家族じゃないんで苦しみは共有できないっす」


 ドラマなんかじゃよく苦しみも悲しみも喜びも家族で共有するべきだ!なんて台詞がある。俺もその台詞に共感した覚えがあり、由香の言う事は解らなくもない。しかし、いくら家族だとは言っても共有出来る苦しみと出来ない苦しみはあるものだ


「きょうはあたしの義弟じゃなかったの……?」


 瞳に涙を溜めこちらを悲しそうな顔で俺を見る由香。確かに義弟だけどよ……それはあくまでも書類上はそうだってだけで俺自身がお前らを家族と認めてないぞ


「そうだけどよ、家族でも共有可能な苦しみと不可能な苦しみがあるんだ。解ってくれよ……」


 親父と夏希さんのイチャつく姿を見る。これは由香一人の苦しみであり、俺の苦しみではない


「恭ならあたしの苦しみを理解してくれると思ったのに……残念だなぁ、これから零ちゃん達に悲しい報告をする事になるだなんて」

「悲しい報告?何だよ?」


 俺が見ている限り零達と由香は情報を共有出来る仲ではない。というのも担任として彼女に接している東城先生やクラスは違えど同じ学校に通う飛鳥は交流があり、それなりに話をするだろう。対して零達はというと学校が違う、そもそも交流自体ないと触れ合う機会がなく、話をした事があるかどうかすら危うい。そんな由香が零達に何を報告するというんだ?


「恭に襲われたって報告」


 何を言っているんだ?コイツは?


「前々からアホだアホだとは思ってたが、とうとう被害妄想までするようになったか」


 アホの子だとは前から思っていた。とは言っても星野川高校に転入してきた日からだけど。が、俺に襲われただなんて被害妄想を口にするとは……どこかいい病院を紹介した方がいいんじゃないのか……


「アホ!? 恭はあたしの事アホだと思ってたの!?」

「ああ。そうだけど?それがどうかしたか?」

「あたしアホじゃないよ!?」

「いや、アホだろ。喋り方とか」

「喋り方関係なくない!?」


 バカタレめ! 見た目よりも喋り方で人を判断する奴だっているんだぞ?


「学生のうちはそうかもしれんけど、社会人になったら喋り方で人を判断する奴だっているんだぞ?関係なくはないだろ」


 意識高い系とかはそういう傾向にあると前に動画で見た。要点だけを纏めて完結に伝えられる人間は仕事が出来ると思われ、自分の意見しか言わない奴は仕事が出来ないと思われるって言ってたなぁ……


「そうなんだ……」

「ああ。それで、由香が家に入居する日なんだけどよ、いつがいい?」

「えっと、この旅行が終わって────って! 騙されないし!」

「ちっ、ダメだったか……」


 あと少しってところで気付かれるとは……俺もまだまだだな


「恭のバカ! 騙そうとするなんて酷いよ!」

「うっせ! 親父のイチャつき動画なんて気色悪くて見れっかよ! つか! 耳元で大声出すな!」


 オッサン、オバサンがどうのじゃなく、親父と夏希さんがイチャついてるところを動画であっても見るのは精神的にキツイ。だってアレだぞ?血の繋がりは置いとくとして、父親と母親がイチャつく動画だぞ?キツイだろ……


「ご、ごめん……。でも、恭だってさっき見たいって言ってたじゃん……」

「見たいとは言ってない。見てみたい気もしなくはないとは言ったけど」

「見てみたいんじゃん! ねー! 見ようよー! ねー!ねー!」


 そう言って由香は俺の身体を揺する。お前は休日に親に遊んでと強請る子供か?


「分かった分かった。見るから身体を揺するな」

「やった!」


 見るって言っただけなのに何がそんなに嬉しいんだ?


「見る事に関してはこの際諦めるとして、由香よ」

「ん?なーに?」

「何で俺はお前に腕枕なんてしてんだろうな?」

「それ最初に聞こうよ!?」


 といった感じのやり取りをし、由香は枕元にあるスマホを取り、ロックを解除。写真をタップし、“お義父さんとお母さんの日常”という題名のアルバムを開いた。補足として言っとくと何で一緒に寝てるかと言うと、由香曰く姉と弟のスキンシップだそうだ


「なるべく刺激と精神的ダメージが少ないものを頼むぞ」


 覗いた感じ、男子高校生の劣情を煽るような刺激的な動画はなさそうなのだが、由香の話を聞き、親父の行動パターンを予想するとそう言った感じの動画がないとも限らない。


「大丈夫だよ。夜中のは撮ってないから」


 何も大丈夫じゃないんだよなぁ……。両親のイチャイチャを見るのがキツイんだよなぁ……


「ならいい。ついでに、お互いの精神衛生の為に見る動画は二つだけにしとこうぜ」

「うん……。じゃあ、早速一つ目流していい?」

「ああ」


 由香はスマホを操作し、一つ目の動画を流す。アルバム上では親父と夏希さんがリビングで見つめ合っている状態で動画の中身は全く予想もつかない。さて、どんなのが流れるのやら……


『夏希……』

『恭弥……』


 何て言うか、アルバムの静止画っての?アレでは親父と夏希さんが見つめ合っているだけだったから何とか耐えられた。しっかしなぁ……動画で見るとキツイなぁ……


『夏希、愛してる……』

『私もよ、恭弥。愛してるわ』


 夫婦円満なのはいい事だよ?愛を囁き合っている夫婦を見ると微笑ましく思ったりもするよ?それが自分の両親じゃなきゃな!なんて思っている間に親父と夏希さんの距離は徐々に縮まっていき……


『『んっ……』』


 ゼロになった。そこで動画は終わり、その後を知るのは隣にいる由香のみ


「初っ端からこんなキツイモン見たくなかった……」

「これはまだ序の口なんだけど?」


 こんなキツイモン見たくなかったというのが俺の率直な感想なのだが、由香は序の口と言って突っぱねる。これよりももっとキツイのがあるのかと思うとやってられない


「序の口って俺からすると十分キツかったんだけど?」

「キス程度でキツイとか言わないでよ」


 キスくらいって……


「いや、俺からすると両親のってのも相まって結構キツかったんだぞ?」

「これから見る動画はもっとキツイから」


 そう言って由香は次の動画を再生した


『ねぇねぇ! ママ! ママは僕の事好き?』

『ええ、もちろんママは恭弥の事大好きよ?恭弥はどう?ママの事好きかしら?』

『うん! 僕ママの事大好き!』


 再生された動画に映っていたのは紛れもなく親父と夏希さんで先程の動画同様時間帯は朝。口調が違うせいで一瞬、誰だか分からなくなった


『じゃあ! キスして!』

『ふふっ、恭弥は甘えんぼさんね。いいわよ』


 いいわよ。じゃねーよ! どんなプレイだよ! 時間帯間違えてんじゃねーのか?


『んー!』

『んー……』


 夏希さんは唇を突き出す親父の顔を両手で包み込むと自らの唇を押し当てた。さっきのキスもキツかったけど、こっちの方がキツイ


『ママ! 僕ね! 将来はママと結婚する!』

『あら、嬉しい。じゃあ、早く大人にならないとね』

『うん! 僕大人になる!』


 親父の大人になる宣言で動画は終了。俺は一体何を見せられていたんだ?



 バカ夫婦の変態っぷりを見たところで現在────。


「あのバカ夫婦……」


 我が父親ながら情けないというか、何というか……。リアクションに困る


「あたしの気持ちちょっとは解ってくれた?」

「ああ。痛いほど解った」

「あんなの見せられたら家を出たいと思うでしょ?」

「ああ」


 どうしようもない両親に俺達は深い溜息を吐いた

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!

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