高校入学を期に一人暮らしをした俺は〇〇系女子を拾った

意外な場所で一人暮らしを始めた主人公の話
謎サト氏
謎サト氏

零と闇華だって甘えたい?らしい

公開日時: 2021年2月5日(金) 23:32
更新日時: 2021年4月3日(土) 20:50
文字数:4,274

 深夜二十二時────────。


「恭……、もっと撫でて……」

「恭君……、私もお願いします……」


 はい、どうも。灰賀恭です。私めは現在、自分の部屋にて津野田零と八雲闇華を膝枕しながら頭を撫でている真っ最中です。補足として説明させて頂きますと右が零で左が闇華でございます。


「そろそろ勘弁してくれませんかねぇ……、撫ですぎて腱鞘炎になりそうなんですけど……」


 飛鳥が元に戻ってから一夜明け、昼間は学校に行っていた俺達。昨日はそりゃもうお祭り騒ぎでしたよ?何しろ飛鳥が元に戻ったんですから。どんちゃん騒ぎでした。まぁ、騒ぎ過ぎて何時に寝たかすら覚えてないんですけど(笑)


「ダメよ! ここのところ飛鳥に構いきりでアタシ達には全っ然! 構ってくれなかったじゃない!」

「そうです! 私達寂しかったんですからね!」


 神矢想子の一件で俺は飛鳥に構いきりで零達に構ってやれなかった。意見を聞く程度には会話をしたが、そのほとんどは事務的な会話でものの数分で終わってしまうものばかり。零達が放置されたと感じても不思議じゃない


「そりゃ俺が悪かったとは思うけどよ……、マジでそろそろ手が限界なんだよ」


 どうしてこんな事に? と記憶の海にダイブするもキッカケが全く掴めない。本当に零と闇華は唐突に自分の頭を撫でろと要求してきた。理由を訊く間もなく二人は俺の膝に頭を置き、自分の頭を撫でろと言ってきた


「うるさいわね! アタシ達を放置した恭が悪いんでしょ!」

「そうです! 恭君が悪いんです!」


 ま、まぁ、彼女達の言い分も理解出来ないわけでもない。放置されりゃ誰だって怒る。怒って当然


「だからってなぁ……」


 自業自得と言われればそれまでだ。でも、俺の手が限界を迎えようとしているのも事実。あ、ついでに足も


「あ、あはは……きょ、恭クン、が、頑張って」


 零と闇華の怒り様に苦笑いを浮かべるのは内田飛鳥。神矢想子の一件では被害者となった女子だ


「が、頑張ってって……」


 無責任とも取れる発言をする飛鳥だが、例の一件で一番被害を被ったのは彼女なので責める事は出来なかった


「神矢先生が悪いとはいえ零ちゃん達から恭クンを奪ってしまったのは事実だからね。ここは零ちゃん達の気が済むようにするしかないよ」


 神矢が悪いのは零達も理解している。だからって何故なにゆえ俺がこんな目に……


「飛鳥の言う通りよ! 恭! 大人しく撫でなさい!」

「そうです! 大人しく撫でてください!」


 飛鳥の言葉に賛同するかのように撫でろと要求してくる零と闇華。さっきから言ってるだろ?そろそろ手が限界なんだって。マジでそろそろ腱鞘炎になりそうだ……別の要求をするように仕向けてみるか


「マジで手が限界だ。他の事なら出来る範囲で言う事聞くからそろそろ開放してくれないか?」


 明日は休みだが、手が使えないのは洒落にならない。


「ふぅ~ん、頭を撫でる以外なら何でも言う事聞いてくれるんだ?」

「それはいい事を聞きました」


 俺の何でも言う事を聞くという発言で零達の目がハンターの目に変わる。この二人は俺に何をさせる気だ?


「な、何でもと言っても俺に出来る範囲でだぞ?」


 これまでの経験上、保険を掛けとかないと零と闇華……特に闇華の方はとんでもない要求をしてきそうで怖い。


「アンタ、アタシ達を何だと思ってるわけ? 出来ない事を要求するわけないでしょ!」

「そうです! 恭君酷いです! ちゃんと私達も飛鳥ちゃん達も満足できる要求を考えてあります!」


 心外だと言わんばかりに俺を睨む零と闇華。仕方ないだろ?お前らの要求って物理的にも精神的にも疲れるんだもん


「零と闇華が俺に出来る範囲での要求を考えてたとは意外だ」


 無茶な要求をされた事は……ないような……あるような……まぁいい。とにかくだ! 零と闇華が俺に優しい要求を考えていたのは予想外だ


「恭……、アタシ達に喧嘩売ってるなら既成事実でも作りましょうか? 万が一の事があったらガッツリ責任取らせてあげるわよ?」


 普通はブチ切れて俺を殴ってくるところだが、人を殺せそうな目で俺を睨んだ零が言ったのは“殺すわよ?”とか単調な脅しではなかった


「ごめんなさい! 調子に乗りました!」


 俺はすぐさま謝罪した。だって既成事実を作るとか怖すぎるんだもん!


「そ、そんなに嫌がらなくてもいいじゃない……」


 謝ったというのに何でシュンとする?何で若干涙目なんだ?


「普通に嫌だぞ? だってそうだろ? 零の言った事って要するに零が高校生でママに、俺が高校生でパパになる的な既成事実だろ? 零や闇華、琴音や藍ちゃん、飛鳥に魅力がないとはいわねーけどよ、俺ぁ無責任な事はしたかねーんだよ」


 今は高校一年生だからいい。けど、進級するにつれて考えなきゃいけないのは進学あるいは就職の事だ。高二の夏くらいからある程度進路を決め、高三の夏には受験対策の勉強をする。これから忙しくなるってのに自分で足かせになるような行動をするのはダメだろ。


「恭君は相変わらず考えが固いですね」


 ちょっと、闇華さん? 考えが固いはないんじゃないの? 君達の事を考えて言ってるんだからさ


「万が一の事があって困るのは女の方だ。男は責任逃れしようと思えばいくらでも出来るからな」


 俺は自分が負うべき責任はちゃんと負う。いざとなれば灰賀の爺さんと婆さんを頼ればいいだなんて考えてはいないが、それでも俺は取るべき責任はちゃんと取る


「恭君が自分の責任から逃れようとする人だなんて言ってません。ただ、恭君はちゃんと考えてるんですねって言ってるんです」


 穏やかな笑みを浮かべる闇華にほんの少しだけドキっとした。それくらい彼女の笑みは美しかった


「当たり前だ。じゃなかったら零と二人きりで住み始めた時点で手を出している」


 今では八階の住まいとなっているエリアの部屋は人が増えて埋まっている。ここに住み始めた当初は当たり前だけど俺一人。そこから零、闇華と拾い、いろんな人と出会った


「でしょうね。ところで、恭」

「何だよ? 零」

「そろそろアタシ達のお願いを言ってもいいかしら?」

「ああ、出来ない事以外なら引き受けてやる」

「なら遠慮なく言うわ。恭、アタシ達全員と一緒に寝なさい! もちろん、右はアタシ、左は闇華よ!」


 既成事実を強引に作るのだとばかり思っていた俺の不意を突く要求。いつも一緒に寝てるだろ?ここに住み始めてから今までずっとな。なんて野暮な事は言わない。


「そ、そんな事でいいのか?」

「いいんです! せっかく飛鳥ちゃんが元に戻ったんですから! それに、昨日はみんないつの間にか寝てしまいました。ですから、今日は全員で一緒に寝ましょう!」


 闇華は重要な部分を言わなかったが、俺にはちゃんと解っている。飛鳥の子供返りが治ったからちゃんと記憶に刻まれる形で一緒に寝たいんだと


「零と闇華がそれでいいってなら俺は何も言わん」




 満面の笑みを浮かべ二人そろって頷いた。それから俺達は一同、自分の布団を敷き、床に就いた。当然隣は零と闇華だ。だが待て。寝る前に気になる事が一つある


「なぁ、碧と蒼がずっと静かだったんだが、もう寝たのか?」


 零と闇華の頭を撫でてる間からずっと碧と蒼は茶化しに来なかった。普段ならすぐに飛びつくのに


「恭、アレ」


 右側にいる零が後ろを親指でクイっと後ろを指す。そこには……


「姉ちゃん……」

「蒼……愛してる……」

「ボクもだよ……姉ちゃん……」

「碧って呼んで……」

「碧……」


 布団が大きく膨らみ何やらモゾモゾしている。声だけしか聞こえなかったが、もはや普通の姉弟のやり取りではなく、恋人のそれだった


「アイツ等……事に及んでないよな?」


 双子のやり取りを見て一抹の不安を覚える俺。マジで事に及ばれるのは勘弁してくれよ?


「大丈夫ですよ、恭君」

「そうよ、恭」


 闇華、零、何が大丈夫なんだ?どう見たって大丈夫じゃないだろ


「恭くん、二人なら大丈夫だよ」

「恭ちゃん心配し過ぎ」

「そうだよ、恭クン」


 琴音も東城先生も飛鳥も大丈夫の根拠を教えてくれ


「その根拠は?」

「「「「「女の勘!!」」」」」


 女の勘とか言われましても……


『大丈夫だよ~お母さんも心配になってさっき見てきたけど碧ちゃんと蒼君はディープキスしてただけだから~』


 お袋、それは大丈夫と言っていいのか?


「はぁ、双子の事考えてたら頭痛くなってきた……」


 俺はほんの少しヤバ感じの双子を頭から消し去った。


「恭、もう寝るの?」

「夜はこれからですよ?」

「だから何だよ? 零も闇華も眠たくないのか?」

「「全然」」

「さいですか」


 今日はこれといって特別な事はなく、平和に終わった。だから疲れてないと言われれば素直に納得してしまう。


「恭くん、私達と少しだけお話しない?」

「そうだよ、恭ちゃん」

「私はある当事者だけど、ここのところ色々あったから恭クンとちゃんと話せてなかったから私も賛成」


 う~ん?確かに色々あったけど、琴音達とは割と頻繁に話してたような気がするんだけどなぁ……


「言われてみれば恭とは最近まともに話してなかったわね」

「ですね、神矢って先生の騒動が終わった日なんて思い詰めてた顔してましたしね」


 思い詰めてたような顔か……思い詰めてたっつーか、あの日は何でだろう?ってずっと考えてただけなんだけどな


「思い詰めてはいない。ただ、俺にも思うところがあって考えてただけだ」


 俺の思うところはもちろん、一瞬でも化け物と呼ばれたのに飛鳥達から拒絶されなかった理由と神矢想子が教師になった理由についてだ


「思うところ?」

「ああ、これは星野川高校のセンター長はもちろん、当事者である飛鳥、一緒に住んでる藍ちゃんや琴音にも言ってなかったんだけどな、神矢想子は婆さんの学校で教師として雇われる事になったんだ。もちろん、更生を目的としてな」

「そうなんだ」

「だから神矢先生の授業は後ろに先生が二人付いてたんですね」


 零は興味なさそうに、闇華は納得がいったという反応を示す。対する飛鳥達は……


「「「────」」」


 固まっているのか全く反応がない。婆さんの下した決断について話した時は異を唱えた琴音と東城先生。飛鳥は……多分、安堵の表情を浮かべていただけだと思う。


「更生目的で教師を雇うって聞いたらそりゃ反応出来ねぇよな」


 夜という事もあり、飛鳥達三人は固まったと思ったら三人揃って勢いよく掛布団を被り寝てしまった。固まった理由は機会があったら聞くとしよう。


 余談だが、俺は寝る前に零と闇華にガッツリキスマークを付けられ、翌日それが飛鳥達に見つかった挙句、婆さんの下した決断について問い詰められた。特にキスマークを見つけた飛鳥達は鬼の形相をしていて怖かったとだけ伝えよう。これ以上は……思い出したくもない

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