高校入学を期に一人暮らしをした俺は〇〇系女子を拾った

意外な場所で一人暮らしを始めた主人公の話
謎サト氏
謎サト氏

零達は俺との繋がりが欲しかったようだ

公開日時: 2021年2月5日(金) 23:33
文字数:4,052

 霊圧を当て、零達をとりあえず大人しくさせた俺は天井を見つめ彼女達をこの先どうするか考える。


「出てけって言うわけにもいかねぇし……、かと言って同じ部屋で生活している以上会話なしってのも……無理だよな……」


 零と闇華なら平日の昼は別の学校に行ってるから会話しない選択もありだ。琴音も同様。対して東城先生や飛鳥はどうだ?飛鳥とはクラスが違うからそれでもいい。東城先生は……担任だからちょい難しい


「原因は俺にあるとしても厄介な事になったもんだ」


 自分に原因があるとしても零達が大それた行動に出るとは思いもよらない。


『きょう~、面倒だと思うのは構わないけど~、この件は零ちゃん達もきょうも両方悪いとお母さん思うなぁ~』


 お袋、そう思う理由は後で聞くとしてだ。何で今更出てきた?もうちょっと早く出てきてもよくない?


「原因を考えるのは後だ。まずは……」


 未だ霊圧を当てられ続けている零達の方を見る。彼女達は相変わらず地に伏せたまま。問題は零達が俺の身体に自分の名前を彫りたいと思っているかどうかだ


「おい」

「「「「「────────!?」」」」」


 俺に声を掛けられると思っていなかった彼女達は驚きの表情を浮かべる。意外だったか?と聞きたい気持ちを押さえ、俺は続けた


「零達が今も俺の身体に自身の名前を彫りたいと思っているのなら恐らくはこのままお前達が感じている身体の重みはとれない。だが、そんな事をするつもりはないと言うならその重さを何とかしてやる」


 一か八かの賭けをするつもりは毛頭ない。俺の身体に名前を彫りたいと思っているならそれはそれで構わない。思っていなかったらいなかったで受け入れる。それだけの話だ


「「「「「……………」」」」」


 俺の問いかけに無言の彼女達。ここから見るに名前を彫りたいという気持ちと身体に掛かる圧から解放されたいという気持ちがせめぎ合っているように見える


「何だ?まだ俺の身体に自身の名前を彫りたいと思ってるのか?」


 本気でそう思っているのならコイツ等は本当にヤンデレへと片足を突っ込んでいる。今なら辛うじて戻って来れるところではあるけどな


「恭ちゃん、好きな人に自分のモノだって証を付けるのってそんなに悪い事?」


 今まで黙っていた女性陣の中で初めて口を開いたのは東城先生だった


「好きな人ってのは異性としてって意味でいいんだよな?」

「うん。そう」

「好きな人に自分のモノだって証を付けたいって気持ちは解からなくもない。だが、それはキスマークとかの軽いモノ限定だ。藍ちゃん達は包丁で俺の身体に自分の名前を彫ろうとしただろ。さすがに一生残るかもしれない証を付けるのは悪い事だ」


 キスマークなら一週間も放っておけば治る。それに対して包丁で彫られた名前は消える場合もあるが、彼女達の目つきから察するに一生残るタイプのものだと思う。そんなのいいって言う奴は生粋のドMくらいだ


「ごめん……でも、私は……私達はどんなもの、どんな形でも恭ちゃんとの繋がりが欲しかった……」


 繋がり。俺が切ろうとしたものであり、切ってしまったもの


「だからってなぁ……名前を彫るのが繋がりじゃないだろうに……」


 それが全てだと言われてしまえばそこまでだ。


「私達はそれしか思い浮かばなかった」


 名前を彫る=繋がり。短絡的な発想だ。俺にはとても真似できない


「猟奇的な事で。にしても繋がりか……」


 何にしろ繋がりを求める彼女達には何等かのプレゼントを用意しなきゃならない。現状で解るのはこれだけだ


「私はやっと再会できた恭ちゃんと……、零と闇華、琴音は何も言わずに受け入れてくれた恭ちゃんと……、飛鳥は自分どころか自分の家族すら助けてくれた恭ちゃんとの繋がりが欲しい。そう思っている」


 東城先生の言葉に零達が頷く。言葉にされると気恥ずかしいものがある。だからって名前を彫らせる気は毛頭ない


「繋がりが欲しいのは解かった。それを聞かされちゃ全員にプレゼントをしなきゃなって気持ちにはなる」


 プレゼントを贈るとは言っても女の子が好きそうなものなんて分からないんだけどな!!


『きょうが女の子にプレゼントねぇ~、そっか、そっかぁ~、きょうも成長してくれてお母さん嬉しいよ~。まぁ、お母さんならきょうと藍ちゃん達を繋ぐ絶対的なモノを用意出来るけどねぇ~』


 その絶対的なモノが何なのか非常に気になるところではある。俺の予想からするにお袋が用意するものは目に見えるモノではないのは確かだ


「藍ちゃん達は俺とお揃いのアクセとかが欲しいのか?それとも、目には見えなくても繋がっているという証拠が欲しいのか?」


 お揃いのアクセを用意するとなると同じものを六個……いや、八個は用意しないといけない。


「私個人の意見としては目には見えなくても恭ちゃんと繋がっている証拠が欲しいよ……零達は?」


 東城先生は零達の方へ視線を向ける。


「アタシも藍と同じ意見よ。目には見えなくても恭と繋がっているという確固たる証が欲しいわ!」

「私だって零ちゃんや藍さんと同じです! 恭君との絶対的な繋がりが欲しいです!」


 零と闇華は東城先生に同意っと。琴音と飛鳥は……


「私も東城先生や零ちゃんと同じだよ。恭クンとのどんな事があっても切れない繋がりが欲しいよ」

「私もだよ、恭くん……会社からリストラされて行き場がなくなった見ず知らずの私を何も言わずに拾ってくれたんだもん。そんな人とのどんな形でも繋がりが欲しいと思うのは当たり前だよね……」


 飛鳥と琴音も同意か……。


「お前らが俺との繋がりを強く求めているのもそれが目に見えない絶対的な繋がりだっつーのもよく解かった」


 彼女達が求めている繋がりというのはアクセとかのチャチなものじゃなく、目には見えずともちゃんと繋がっているという証だというのは理解した。そんなものを俺に用意出来るかと聞かれれば答えは否だ


『きょう~、いよいよお母さんの出番だけど……零ちゃん達にはお母さんの話はまだしてなかったよね?』


 お袋の言うように零達にはまだ話してない。この面子の中でお袋の存在を知っているのは東城先生だけだ


「藍ちゃんはともかく、零達はこれから出てくるものというか、人に絶対驚くなよ?」


 と前置きをし、俺は一呼吸入れる


「驚くなって何の話よ?」

「そうです! それよりも早くこの身体に掛かる負荷から解放してください! 恭君を抱きしめられないじゃないですか!」


 疑問符を浮かべる零と願望ダダ漏れの闇華。この二人、最近立ち位置が逆転しているのではないか?と思うが、よくよく考えてみたらそうでもなかった


「恭くん?何を始める気なの?」

「恭クン、私ならいつでも準備オッケーだよ!」


 不安の表情を浮かべる琴音と息を荒くし、期待の眼差しを向けてくる飛鳥。俺はもう突っ込まないぞ


「各々言いたい事はあるだろうが、今は黙って見てろ」

「恭ちゃん、あの人を呼ぶつもりだね」


 唯一事情を理解している東城先生は俺のこれからする事を察したらしく、普段と変わらず落ち着いた様子だった


「お袋、出てきてくれ」

「「「「はぁ!?」」」」

「やっぱり……」


 俺がお袋を呼ぶと零達は驚愕の表情を、東城先生は分かっていたと言わんばかりの表情を浮かべる。零達にとってはさぞ理解不能だろう。目の前にいる奴が死んだ者を呼んだのだから


『は~い! 呼ばれて飛び出て早織ちゃんで~す!』


 零達が言葉を発する前にお袋は青白い光からあっという間に人の姿に変化し、現れる。登場の台詞は無視だ無視


「え~っと、お袋。話は聞いてたな?」

『もっちろん! 零ちゃん達ときょうが目には見えなくても決して切れない繋がりをあげればいいんだよね?』

「ああ」

『まっかせなさ~い! お母さんにかかれば朝飯前よ!』

「じゃあ、頼むわ」


 登場からテンションが高いお袋が何をくれるのかは知らん。そればかりは任せるしかない


『頼まれました! さてさて、零ちゃん達にはきょうと同じ力をあげよう! 今ならなんと! きょうとテレパシーで会話できる力も付いてくるオマケ付きだよ!』


 怪しいテレビショッピングのキャッチコピーみたいだな……それよりも説明が先だろ。零達固まってるぞ


「お袋、怪しげなテレビショッピングみたいな事を言うよりも先に零達に説明してやってくれ」


 しつこいようだが東城先生は事情を知っている。だから特別驚くとかのリアクションはない。が、零達はリアクションを通り越して固まっている。目の前に幽霊が現れりゃ固まるのも無理はない


『あ! そうだった! ごめんごめん!でも、私が説明するよりも藍ちゃんが説明した方が信じるんじゃない?』


 とか言って単に説明が面倒なだけだろ?お袋よ


「そ、そうでしょうか?私より恭ちゃんの母親である早織さんが説明したほうがいいんじゃ……」

『え~! 私より零ちゃん達と関わってきた時間が長い藍ちゃんの方が適任だよ~』

「いや、早織さんの方が……」

『藍ちゃんだよ~!』


 関わってきた時間が長いから東城先生が適任だと言うお袋と俺の母親であるお袋が適任だという東城先生。互いに譲り合いなかなか説明が始まる気配がない。痺れを切らした俺は……


「どっちでもいいから早いとこ説明しろぉぉぉぉぉぉぉ!! 俺の拘束を解けぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


 雄たけびを上げた。本当! 早く解放してくれ!! 雄たけびついでに零達に当ててた霊圧を引っ込める


「『────!?』」


 俺の雄たけびにビックリし、東城先生とお袋は身体をビクッと跳ねさせる。


『じゃ、じゃあ、私が説明するから藍ちゃんはきょうの拘束を解いてあげて?』

「わ、分かりました……」


 冷や汗をダラダラと流し、ぎこちない動きでお袋は零達の元へ、東城先生は俺の手枷、足枷を外しにかかる。


「恭ちゃん……ごめんね……」


 両手足が自由になり、手首を擦っていたところで東城先生から謝罪の言葉が述べられる。狂っていた時とは違い、シュンとし、申し訳なさそうだ


「別にいい。あーだこーだ言うだけ時間の無駄だ」


 申し訳なさそうにしている東城先生に俺は一言そう言う。普通の人間なら文句の一つでも言うんだろう。無駄な事はしない主義の俺は文句なんて言わない。


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