高校入学を期に一人暮らしをした俺は〇〇系女子を拾った

意外な場所で一人暮らしを始めた主人公の話
謎サト氏
謎サト氏

俺の周りって変な女しかいえねぇのかよ・・・・

公開日時: 2021年2月8日(月) 12:51
文字数:3,661

 皆さんはつり橋効果というのをご存じだろうか?端的に言うと危機的状況に陥ったり乗り越えたりした男女が恋愛感情を抱くという理論で1974年にカナダの心理学者であるダットンとアロンよって発表された。俺と由香は危機的状況に陥ってもいないし乗り越えてもないから関係ないけどな


「女装趣味に異常性癖……俺の親父はどうしようもないな」

「それを言うならお母さんもだよ……」


 動画を見終えて俺達は親父と夏希さんのバカ夫婦に制裁を加えには行かなかった。理由は簡単で面倒だってのとあの衝撃映像を見た後で彼らの顔をまともに見れる自信がないからだ。そんなこんなで俺達は動画を見る前同様、二人仲良くベッドの上


「俺も将来あんな風になるのかと思うと気が重すぎる……」


 キスしてるのは百歩譲って多めに見よう。新婚夫婦だったらしてるってところもあるだろうしな。だけどなぁ……。マザコンな子供とムスコンな母親を彷彿とさせる感じでイチャつくのはなしだろ……


「あたしも……」


 俺は夏希さんと、由香は親父とそれぞれ血の繋がりはない。でも、自分の実父、実母の姿を見て将来に対して希望が持てなくなってきている。というか、絶望的だ


「はぁ……。俺が実家に顔見せた時にあんな事してたら押しつぶすか死ぬ一歩手前くらいには追い詰めるか……」


 もちろん、追い詰める時に霊圧は使わない。俺の言う死ぬ一歩手前とは精神的なもので物理的なものじゃない。何だかんだで学費も出してもらってるしな


「死ぬ一歩手前まで追い詰めるって……、まさか霊圧使う気?」

「んなワケあるか。曲がりなりにもあそこは俺の思い出が詰まった家だぞ」

「だ、だよね! いくら何でも霊圧で家ごとお母さん達を押しつぶすだなんてしないよね!」


 家ごと親父達を押しつぶしたりなんかしたら俺と由香の学費を出す人間が……出す人間が……いたな


「……………当たり前だ」


 俺は後ろめたさから顔を逸らした。家ごとというか、建物ごと親父達を押しつぶすだなんて由香に言われるまで思い付かず、一瞬、それも悪くないと思ってしまった自分がいた


「今の間は何?どうして顔を逸らすの?ねぇ?」


 由香のおかげで建物ごと親父達を押しつぶしてしまおうと思っただなんて口が裂けても言えない。となると、上手い言い訳が必要になってくるのだが、何も思い付かない……


「ちょっと考え事してただけだ。顔を逸らしたのは首が疲れたからだよ」


 我ながらバレバレの嘘を吐いたものだ……。こんなのに騙される奴なんているわけが……


「そかそか、考え事してて首が疲れたんだね」


 いたよ。考え事してて首が疲れるとかどんな状況だよ……


「そういう事だ。さて、いつまでも寝てるわけにもいかねぇし、そろそろ起きるか」

「だね!」


 俺達はベッドから出ると俺は自分のバッグから着替え一式を持ってトイレへ、由香は椅子に座ってスマホを弄る。零といい、飛鳥といい、スマホを弄るのが好きだな……



「はぁ……」


 トイレに入り、着替えようとして手が止まる。一人になるとふと夢に出てきたもう一人の俺が言っていた事が脳裏に浮かぶ。


『どうしたの~?溜息吐いて~』

「お袋……」

『悩みがあるならお母さん聞くよ~?』


 いつもと変わらぬ笑顔のお袋。今、俺が考えている事は悩みと言えるのだろうか?真っ暗な空間でもう一人の自分に会った夢を見ただなんて悩みに入るのか?入らないだろ


「悩みっつーほどのものじゃないから気にすんな」


 夢の中でもう一人の俺に出くわしたのなんて悩みのうちに入らない。もう一人の自分に会う夢を見たという事は自分を客観視しろという啓示だ。そこで言われた事は俺の本能、あるいは本心なのかもしれない。あん時は否定した。でも、本心じゃ神矢想子を殺してやりたいと思っていたのかもしれない


『ほんとぉ~?きょうは昔から悩みを言わない事があったからお母さん心配だなぁ~』


 実の母親だけあって俺の事をよく理解してらっしゃる。とりあえず夢の事は伏せてアレだけは聞いておこう


「悩みはねーけど、お袋に聞きたい事はある」

『え!? なに?なに?』


 聞きたい事あるって言った瞬間一気に目が輝いたなぁ~


「俺って多重人格障害だったりするか?」


 俺が聞いておこうと思ったアレとは多重人格の事だ。バトル系は除外して、異能の力を持つキャラって比較的実は多重人格でした~なんてパターンが多い。もしも俺がそうだったとしたらとても面倒だ


『それはないよぉ~、お母さんが恭弥のバカよりも愛情を持って接してたんだから~』


 仮にも一度自分が愛した奴をバカ呼ばわり……。親父、哀れ過ぎんだろ……。後、愛情を持って接したのと多重人格って何の関係があるんだ?


「突っ込みどころ満載なのは置いとくとしてだ、俺は多重人格じゃないんだな?」

『うん、仮にそうだとしてもお母さんがすぐに気づいてるよ~。強い霊圧を持つ人間にもう一つの人格が生まれると面倒事が多いしね~』

「そうなのか?」

『そうなんだよぉ~、その話は旅行が終わった後でしてあげるね』

「分かった」


 強い霊圧を持つ人間……というか、今の今まで何も言わなかったけど、何で霊力じゃないんだ?別に言い方に拘らないからいいんだけどよ。それはそうと俺みたいな人間が別の人格を持つと面倒事が多いのか……。俺も精神衛生だけはしっかりしとかないとな


『それより、着替えに時間掛けてていいの~?』


 時間を掛けるって……男の着替えなんて五分と掛からないだろ


「女の着替えはともかく、男の着替えなんて五分と掛からないだろ。つか、お袋よ」

『ん~?な~に~?』

「俺着替えるんだけど?」

『うん~』

「着替え見られんのスッゲー恥ずかしいんだけど?」

『お母さんは気にしないから平気~』


 お袋は俺のオムツ交換とかで見慣れているから平気だろうけど、高校生の俺は母親に裸を見られるのがスッゲー恥ずかしい


「後ろ向いててくれないか?」


 お袋と再会してからというもの、常に行動を共にしてきた。何をするにもお袋と一緒。おはようからおやすみまでずっとな。だから今更なのかもしれない。しかし、今後、まぁ……何だ?いろいろと母親に見られたくないものというのは出てくるもので、今まではあまりにも慣れ過ぎていたというのもあってか注意する事はなく、そのままにしておいた。いい機会だからここらで年相応の反応を見せてもいいだろ


『え~! お母さんは見慣れているから大丈夫なのにぃ~!』


 お袋は唇を尖らせ、ぶー垂れる。アンタが大丈夫でも俺が恥ずかしいってこの人は理解しているのだろうか?


「お袋が大丈夫でも俺が恥ずかしいんだよ!」

『え~!』

「え~じゃない! 今までは他の連中の手前言わなかったけどよ、高校生にもなって母親に裸見られたりとかトイレ付いてこられるのって結構恥ずかしいからな?」


 常に俺に憑いてるから仕方ないとはいえ恥ずかしいものは恥ずかしい。欲を言うならトイレと風呂の時くらいは外で待ってる程度に留めてほしいくらいだ。というか、海にいた時、離れられたよな?


『ぶ~! きょうの言う事も解るから後ろ向いてる~』


 ブー垂れながらも後ろを向いてくれるところを見るとお袋にもそういう理解はあるらしい。さて、俺も着替えるとするか。


「終わったから振り返っていいぞ」


 着替えを手早く済ませた俺は未だ後ろを向いているお袋に一声掛けた


『うん! バッチリ決まってるね!』


 黒のTシャツに黒の上着。足のラインを強調する細いジーパン。警察官によっては職質を受けそうな恰好なのに決まってるって言われても……


「そりゃどうも。んじゃ、戻るか」

『うん!』


 着替えを終えた俺はお袋と共に由香の待つ部屋へ戻った



「おかえりなさい、あなた♡ご飯にする?お風呂にする?それとも……あ・た・し?」


 部屋に戻るとエプロン姿ではないが、新妻のような口調で出迎えられた


「飯」


 ここでどれも要らんとか言うと拗れると思った俺は当たり障りのない飯を選択


「うん♡分かった♡」


 と言って由香はおもむろに着ていた服を脱ぎだそうとした


「待て待て! 俺は飯って言ったはずだぞ!?」


 俺は服を脱ぎ出そうとする由香に慌てて駆け寄り、彼女の手を掴む


「知ってるよ?だから脱いでんじゃん」


 当たり前だと言わんばかりの由香。その顔にはコイツ何してんの?と書いてあった


「いや、飯って言われて服を脱ぐのは当たり前じゃねーからな!?」


 ラーメン屋に行ってラーメンを頼んだのに店員が服を脱ぎ出したら変だろ?由香のしている事はそういう事だ。なのに何で俺が変みたいな感じになってんだ?


「恭が自分で言ったんでしょ?あたしを食べたいって」

「俺は飯としか言ってねーよ!!」


 俺の叫び声が部屋中に木霊した。零達も時々言動がおかしい事があるけど、由香もそうだとは思わなかった……


「恭が中学時代あんな事したあたしを求めてくれるだなんて嬉しい……♡」


 頬を染めヤンデレのポーズを取る由香を見て俺はコイツも零達と同類なのだと確信した


「俺の周りに集まる女でまともなのはいねぇのかよ……」


 同時に自分の周りに集まる女が揃いも揃って変人ばかりなのだという現実に打ちひしがれ、これから先の未来に一抹の不安も覚えた

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!

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