高校入学を期に一人暮らしをした俺は〇〇系女子を拾った

意外な場所で一人暮らしを始めた主人公の話
謎サト氏
謎サト氏

目が覚めたら自宅にいた事で今回の旅行は始まりも終わりも突然だと今になって理解した

公開日時: 2021年2月10日(水) 22:35
文字数:3,846

 見慣れた光景、嗅ぎなれた匂い。言うまでもなくここは俺の部屋なんだけど……


「……………」

「「「「「「「「おはよう♡恭♡」」」」」」」」


 どこから突っ込めばいいか分からない。彼女達の恰好から突っ込めばいいのか、それとも、寝る前はリゾートホテルにいたのに目が覚めたら自分の部屋にいた事から突っ込めばいいのか……。そもそも俺はどうやって自分の部屋っつーか、自分の家に帰って来たんだ?


「お、おはよう……」


 零達の恰好も目が覚めたら自分の部屋にいた理由も現時刻が何時なのかすら突っ込むのがめんどくさい……目が覚めたら自分の部屋にいた理由と現時刻は置いといて、零達の恰好を簡単に説明すると……下着姿。どうやら同居人の碧を除く女性陣は揃って痴女になってしまったらしい


「恭、どうかしら?この下着?アタシに似合う?」

「恭君、妻の下着姿に言う事はないんですか?」

「恭ちゃん……私が下着姿を見せるのは恭ちゃんだけだからね?」

「恭くん?体調でも悪い?」

「恭クンのために頑張ってみました!」

「恭殿……」

「にゃはは~、こうしてるとなんか新婚さんみたいだね~」


 下着の色だけ言っとくと零から順に赤、黄色、青、黒、白、紫、水色でこれ以上は言わせないでほしい。人生経験の豊富な人がいたら教えてくれ……この突っ込みどころ満載な状況の何から聞くべきかを


「……………」


 零達の恰好と自分が自宅の自室にいる理由について考える事を放棄した俺は痴女集団を押しのけながら立ち上がると彼女達の事を全力で放置し、部屋を出た。



「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~」


 部屋を出て、押し寄せてきたのは自分の家に帰って来たという安心感ではなく、ついに零達が痴女になってしまったという呆れにも似たやるせなさでそれが深い溜息と共に出てしまう


『溜息吐くと幸せが逃げるよ~?』

『そうよ?恭様』

「そう思うなら零達の奇行に至るまでの経緯と俺が寝てる間に何があったかを説明してくれ」


 旅行初日、俺は移動中ほとんど寝てたからホテルまでの移動手段を全く知らず、帰る時は移動を含めて楽しもうかと思っていた。目が覚めたら部屋だったから移動は楽しめなかったけどな!


『何から説明したらいい~?お母さん、きょうが知りたい事ならどんな事でも答えるよ~?』

「なら俺がホテルからここへどうやって帰って来たかから教えてくれ」


 今日が何月何日かは置いといて、時間の確認は大事だ。しかし、最重要事項は自分がどうやって帰宅したかの方で旅行には爺さんもいて幽霊のお袋達もいた。意識のない俺を運び出す手段はいくらでもあり、決まりきった答えなんて存在しない。


『どうやってって?』


 質問の仕方が悪かったらしい。お袋は質問の意図が分かってないようだ……こりゃ俺をここまで運んできた方法に的を絞って聞く方がよさそうだ


「寝ていた俺を爺さんが部下使って運んで来たのか、それとも、寝ている俺の身体をお袋が動かして運んで来たのかどっちなんだ?」


 証拠もないのに人を疑う事は極力避けたいのだが、質問の意図が理解出来てないのなら仕方ない。


『お母さんがきょうの身体に入ったんだよ! 恭二郎さんの部下とはいえ他の人にかきょうの身体触らせるくらいならお母さんがいくらでもきょうの身体に入るよ!』


 両手を腰に当て、胸を張るお袋を見て俺は溜息すら出なかった。性別問わず独占欲を剥き出しにしてくる我が母にどう反応を示せと言うんだ?優しく抱きしめてキスの一つでもすればいいのか?


「そうかそうか、俺がここにいるのは寝ている俺の身体にお袋が入って動かしたからって事か」

『うん! お母さんエライでしょ!』


 う~ん、寝た後の事はお袋に任せると言ったのは俺だからエライでしょ!と言われたら……まぁ、エライと思う。


「ああ、お袋はエライと思うぞ」

『本当~?やったぁ~! きょうに褒められた~!』


 子供の様にはしゃぐお袋は本当に嬉しそうで俺も少しばかり癒された。聞きたい事はあるんだけど……それは別の機会にしておくとしよう。オカルトチックな話は当分聞きたくねぇし


「お袋は本当にエライんだけどよ、零達が痴女と化してたのはビックリしたぞ……」

『『………………』』


 零達の話をした途端、はしゃいでいたお袋と横にいた神矢想花はその場でピタリと止まる。もしかして俺は言っちゃいけない事を言ってしまったのか?


「どうした?もしかして俺、マズい事聞いちゃった感じか?」

『『………………』』


 俺の質問にお袋は大量の汗を流し、神矢想花は目を逸らす。もしかしなくても地雷を踏みぬいたらしいな……二人の様子から察するにトラウマに触れた感じじゃないんだけど……


『あー、マズいって事はないんだけど~……ねぇ、今はお母さんだけを愛してくれないかな?ね?』


 露骨に話を逸らされた。マズい事がないのなら答えられるはずなんだよなぁ……


『恭様、一人だけじゃ足りないだろうから私と早織さん同時に愛してくれないないかしら?』


 今のところ愛には飢えてないんだが……


「話を逸らすな。零達が痴女化した理由をさっさと話せ」


 零達の奇行は台風の如く突然にやって来る自然災害みたいなものだから対策のしようがなく、今に始まった事じゃないから慣れている。椅子に鎖でグルグル巻きにされた事もあり、それに比べたら下着姿で現れるだなんてまだ可愛い方だ


『お、お母さん達は止めたもん! 悪いのは恭弥のバカと恭二郎だもん! お母さん達は悪くないもん!』

『そうよ! 全てはあの変態達が悪いのよ! 私達は悪くない! むしろ被害者なのよ!』


 俺は零達が痴女となった理由を話せって言ったのであって半べそ掻いて自己弁護しろとは言ってねぇぞ……。


「俺は零達が痴女になった理由を話せって言ったんであって自己弁護しろって言ってねぇ」

『うるさい!! お母さん達は悪くない! 全てはあのゴミ恭弥恭二郎タヌキが悪いの!!』

『そうよ!! 私はあのゴミを絶対に許さないわ!!』


 ダメだぁ……話が通じねぇ……お袋と神矢想花が悪くないのは分かったからせめて言葉のキャッチボールくらいしてくれよ……


「お袋と神矢想花じゃなくて親父と爺さんが悪いってのは分かったし、許せないのも理解したから零達がああなった理由を教えてくれ」

『話しても怒らない、怒ったらお母さんを異性として愛するって言うなら話すよ!』

『私も早織さんと同じ気持ちよ! 話を聞いた後、恭様が私達へ怒りをぶつけるような事があったら零さん達の事は異性として見ない。私達だけを異性として一生愛するって約束するなら話してあげるわ』


 怒った時の代償重くね?何で怒ったくらいで俺の恋愛対象決められにゃならんのだ?


「代償重すぎるだろ……零達がああなった理由をそこまでして言いたくねぇのかよ……」


 お袋と神矢想花が恋愛対象を限定してくるほどヤバい理由か……逆に気になる


『言いたくないよ! 知ったら絶対にきょう怒るもん!』

『そうよ! 恭様は知ったら絶対に怒るわ!』


 知ったら絶対に俺が怒る理由で諸悪の根源が親父と爺さんだというのである程度は予想はつく。当たっていたらお袋と神矢想花を怒る理由なんて何もねーけど……仕方ねぇなぁ……


「分かった分かった、下着姿の理由は聞かねぇ。その代わり、部屋にいる零達に俺の好きなタイプはパジャマの似合う女だって言ってたと伝えてきてくれ」


 詳しい理由は分からず、俺の予想が当たってるかどうかすらも分からない。大方、親父と爺さんに俺が起きた時に下着姿で抱きしめてくれる女と結婚したいとか言ってたぞって適当吹き込んだに決まっているに違いない。親父と爺さんならやりそうだしな


『『分かった!!』』


 頑なに自分は悪くないと言っていたお袋達は大慌てで部屋の中へ入って行った



 お袋と神矢想花が部屋に入ってすぐ中から聞こえてきたのは……零達の悲鳴だった


「何がいやぁぁぁぁ! だよ……はぁ……」


 俺の周囲で起こる行事はいつも突然だ。旅行の場合は夏休み前に飛鳥と由香が話していたから行くんだろうなとは思っていたし、爺さんが旅行先の候補を見つけて来た時点で行くのは確定。でも、始まりは突然だった。で、始まってしまったものは仕方ないと諦め、せっかくだから楽しむ事にした。実際楽しかったからいいんだけど。そんで、始まりは突然だったから終わりは突然じゃねーだろと思っていたらこれだよ……


「日頃の言動が原因だとはいえ、前もって決まっていた予定なら俺だって大人しく従うぞ……」


 暑い時期と寒い時期に外へ出るの何て無謀だ。だが、前もって決まっていた予定なら俺だって拒否はしない。俺が拒否するのはその日いきなり決まった用事だけだ


「年頃の女達に妙な事を吹き込む親父と爺さんもどうかしてるが、疑いもせずに実行する零達も頭おかしいだろ……」


 親父と爺さんが零達に何を吹き込もうと勝手でそれに従う従わないは零達の勝手だ。俺に迷惑が掛からなければ


「何か一気に疲れたし久々に我が家の風呂でも堪能するか」


 戻って来ないお袋と神矢想花を放置し、俺は大浴場へ向かって歩き出した。次の旅行は行きも帰りも突然じゃなく、ちゃんと移動中を含めて旅行を楽しみたいなという思いを胸に秘めて


「あっ、由香と茜の件が残ってたの忘れてた……」


 思い出さなくてもいい事を思い出す。片方は引っ越しだから騒動じゃないからいい。しかし、もう片方は……今でもなく騒動だよなぁ……


「由香の方も茜の方も後で聞くか」


 物事には優先順位というものがある。由香の同居も茜の事件も何とかしないととは思ってはいても如何せんやる気が……という事で! 全部風呂から出たら零達にまとめて問いただす!

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