高校入学を期に一人暮らしをした俺は〇〇系女子を拾った

意外な場所で一人暮らしを始めた主人公の話
謎サト氏
謎サト氏

家に帰った俺は部屋から叩き出された

公開日時: 2021年2月5日(金) 23:28
更新日時: 2021年3月7日(日) 23:54
文字数:4,566

 親父との電話が終わり、居間へ戻ると元気のない闇華達がいた。理由を聞いても『何でもない』と答えるだけ。闇華達に直接聞いても無駄だと思った俺は対象を朱莉さんに移すも『それは本人達に聞いて』と突っぱねられた。闇華達の元気がないまま、東城家を後にし、現在、家への帰路に着いているのだが……


「なぁ、俺も荷物を持たなくていいのか?」

「うん。自分の荷物くらい自分で持つよ」


 荷物持ちとして俺が一緒に来た。が、それが蓋を開けてみてビックリ、東城家を出た時に当の東城先生から『自分の荷物は自分で持つよ』と言われてしまった。本当に何なんだ?


「それならいいんだけどよ……」


 一応、男として女性には気を使えと爺さんや親父に教え込まれている手前、何もしないというのは気が引ける。でも、東城先生自身がいいと言っている以上好意の押し付けをするわけにもいかない


「気を使ってくれてありがとう。恭ちゃん」

「別に。荷物持ちとして一緒に来たのに何もしないってのはどうなんだ? って思っただけだ」

「そう……」

「ああ。にしても藍ちゃんもだけどよ、闇華と飛鳥も元気ねーけど、何かあったのか?」


 闇華達に何かがあったとしたら東城家で朱莉さんに何か言われたからに違いない。コイツ等に何があろうと俺は深く干渉するつもりはないが、元気がないのは気になる


「な、何でもないですよ。恭君」

「そ、そうだよ、何でもないよ! 恭クン」

「そうか?ならいいんだけどよ」


 何でもないと笑みを浮かべる闇華と飛鳥。本人達がそう言うならそうなんだろう



 来る前は元気一杯だった闇華達。俺と結婚するのは自分だと言い争いまでしていたのにそれが今となっては覇気すら感じない。そんな闇華達を引き連れ俺達は一同、バスに乗り、熊外駅へ。そこからバスを降り、家まで歩く。その間、俺達に会話はなかった



 闇華達の元気がないまま、家に辿り着き、住まいに到着。中へ入ると零がポテチを食べながらテレビを見ていた。帰って来たのに俺達に目もくれないとはどういう了見なんだ?


「あら、早かったのね」

「藍ちゃんの荷物を取りに行くだけだぞ。そんな時間は食わないだろ。まぁ、時間が時間だっただけに昼飯はご馳走になってきたけどな」

「そう。ところで闇華達の元気がないようだけど?恭、アンタ何かしたの?」


 それは俺だって分からない


「俺は何もしてない。藍ちゃんの実家で俺が電話してる間に沈んでたんだ。理由聞いても何でもないの一点張りだ」


 元気がない理由が分かれば苦労はしない。


「ふーん」


 ふーんって……零さん?自分から聞いといてふーんはないんじゃないんですかねぇ……


「自分から聞いといて随分投げやりだな」

「別に投げやりじゃないわよ。ただ、恭が電話している間に闇華達が沈んだならその原因は十中八九アンタだろうから今原因を聞き出すのは無理だと思っただけよ」


 俺が原因って言われても俺には全く身に覚えがない


「そうかい」

「ええ。それはそうと恭」

「何だ?」

「アンタ、琴音と二人でスマホ買いに行きなさい」


 琴音のスマホを買いに行く時は自分達も付いて行くと言ってた零が琴音と二人でスマホを買いに行けと言い出した。自分達のスマホを買いに行く時でさえ子供のように目を輝かせていたのに?


「琴音のスマホを買いに行く時には自分達も付いて行くと言ってた零が付いて来ないとは意外だな」

「アタシにも思うところがあんのよ! それより、今琴音を呼んでくるから早く行ってきなさい!」


 零は立ち上がるとそのままキッチンの方へ歩いて行った。スマホを買う時は付いてくると言っていた彼女が『琴音と二人で行ってこい』と言うのはどこか変だ。



 零がキッチンへ入ってから五分くらいが経った。その間、俺はもちろん、闇華達も言葉を発する事はなく、黙ったまま。それから一分と掛からずに零は琴音を連れて戻って来るなり『話はしてあるからさっさとスマホを買ってきなさい!』と部屋の外へ追い出される羽目に


「はぁ……何で俺がこんな目に……」

「あ、あはは……」


 部屋の外へ追い出された俺と準備の関係で後から出てきた琴音。何だ?この扱いの差は?


「まぁ、零に今更お淑やかさとか求めても無駄だってのは分かり切ってるんだけど」


 出合った頃から零はそうだった。だから今更気を使えと言うつもりなんてない。俺は無駄な事はしない主義なのだ。


「れ、零ちゃんだって恭くんが嫌いで追い出したんじゃないと思うよ?」


 琴音は零をフォローしているつもりなんだろう。ハッキリ言ってフォローになっていないのは……指摘しないでおくか。


「当たり前だ。アイツの都合で毎度毎度追い出されてたらさすがに俺だってキレるっつーの!」


 とは言ってみたものの、部屋ならたくさんある。親父から十四番スクリーンだと言われただけで実際住む部屋の番号なんてのは関係ない。広すぎ、デカすぎなのは問題だが、それでも住めればいいんだから


「まぁまぁ。それより、早く行こ?今日は休日だから混んでるだろうし」

「だな。混んでるのはいいけど待たされて遅くなったらうるさい奴もいるしな」


 うるさい奴が誰か? というのはこの際言わないでおこう。


「恭くん、女の子にうるさい奴だなんて言ったらダメだよ?」

「女だろうが何だろうがうるさい奴はうるさい」

「恭くん……」

「さっさと行くぞ」


 部屋の前でいつまでも喋ってる時間が勿体ない。俺達はエレベーターに向かい、一階まで降り、東側玄関から外へ出るといういつもの手段を使い外へ出た


「久々の外出だぁ~!」


 外へ出た琴音は嬉しそうにはしゃいでいる。考えてみれば琴音が外出したのって俺の入学式以来だ


「家の中から外へ出るって意味だと飛鳥を家に呼んだ日にも出てるから久々の外出とは言えないが、家の敷地内から外へ出るって意味だと俺の入学式の日以来か」

「うん! 普段は家とか家の敷地内からほとんど出ないからこうやって外出するのって久々なんだ!」

「そうかい。今回は琴音のスマホを買いに行くんだけどな」

「うん!」


 久々の外出ではしゃぎまくっている琴音を引き連れ、俺は熊外駅を目指した。




 恭を半ば強引に追い出した。理由は元気のない闇華達から話を聞くため。恭とこの子達の間に何があったのかしら?


「「「…………」」」


 恭と琴音がここを出て行ってから五分くらいが経つけど、未だに元気はなく、三人共無言のままだった


「闇華、飛鳥、藍。恭と何かあった?」

「「「…………」」」


 恭との間に何があったかを聞いても黙ったままの三人。アタシは気が長い方じゃなく、我慢もそろそろ限界を迎えようとしていた


「はぁ……帰って来るなり暗い顔して黙り込まれても困るのよね」


 藍の実家に行く前はメイクして恭に笑われないかとアタフタしたり、メイクした顔を恭が褒めてくれ他ところを想像してニヤケてたりと表情豊かだった闇華と飛鳥。藍は……いつもと変わらないわね。いつもクールで声を荒げたところも大声で泣くところも見た事ない


「もう一度聞くわ。恭と何かあった?」

「「「…………」」」


 また無言。これじゃ話にならないじゃない……


「アンタ達! いい加減にしなさい! 暗い顔して黙ったままじゃ話にならないじゃない!!」


 業を煮やしたアタシは三人を怒鳴りつけた。三人共ビクッと身体が跳ね、不安気な表情を浮かべた


「恭ちゃんってどうして私達を住まわせてくれるのかな……?」


 不安気な表情で黙ったままの闇華達の中で最初に口を開いたのは藍。今の言葉が何を意味しているのかアタシには理解出来ない。ここに住んでからそんな事考えもしなかったから


「藍さん……私も同じ事を考えてました。恭君は何で私達を住まわせてくれるんでしょう?」


 闇華も闇華で何を言ってるの? 恭がアタシ達を住まわせてくれる理由?


「東城先生と闇華ちゃんの言う通りだね。恭クンって何で私達を置いてくれるんだろう? いや、違うか。恭クンにとって私達ってどんな存在なんだろう?」


 飛鳥まで何を言ってるの?アタシがおかしいのかしら?


「ちょ、ちょっと! 三人共何言ってるの!? 恭がアタシ達を住まわせてくれてる理由なんて部屋が広すぎるし余ってるからでしょ!?」


 いつも恭は言ってた『部屋が広すぎるし余ってるから』だって。どんな存在かは聞いた事ないけど


「私達もお母さんにあんな事言われなきゃ額面通りの意味で捉えてたよ……」

「藍のお母さんに何て言われたのかしら?」

「私のお母さんが言うには─────」


 藍の話ではアタシ達がここに住んでいるのはおかしい。恭は部屋が広すぎるから、余ってるからって言って住まわせてくれてるけど、恭が強く断ればアタシと闇華、琴音は今でも家なし金なしの状態。飛鳥は一家揃って路頭に迷っているところだったとの事。確かにその通りだった


「なるほどね。確かに藍のお母さんが言ってる事は正しいわね」


 恭に拾われた最初の人間はアタシ。一緒に生活してる中で全く思わなかったわけじゃない。ただ、拾ってくれた理由を考えないようにしていただけ。そうする事で実の父親から借金を押し付けられた挙句捨てられたという事実から目を背けていた


「私もそう思う。お母さんは自分達が恭ちゃんにとってどんな存在かを聞いておかないといずれ取返しの付かない事になるとも言ってた」


 自分達が恭にとってどんな存在か……言われてみれば聞いた事ないわね


「考えた事なかったし、言われるまで意識した事もないわね」


 情けない事に貧乏生活から抜け出せたという現状に舞い上がっていた。その反面、切り捨てられるのが怖くて恭から『叩き出す』と言われた時は泣いてしまった。それもいつかは乗り越えなきゃいけないと思っていた


「全く、零さん達は今頃そんな事を気にするようになったんですか? 情けないですね」

「蒼! 情けないとか言うなよ! アタイだって零達の話を聞くまでは考えもしなかったんだから!」


 蒼と碧……今までいなかったから忘れてた……情けないと言われても仕方ないから強く言い返せない


「蒼、今の言葉どういう意味かしら?」


 情けないと言われるのは仕方ない。でも今頃というのはどういう意味か分からない


「どういう意味ってそのままの意味ですよ。ボクと姉ちゃんだけじゃなく、この場所に住んでいる全員が疑問に一度は疑問に思うべきだったんです。経緯はともかく、恭さんが何も言わずにボク達を住まわせてくれるのか、ボク個人は何で暴言を吐いてもスルーされるのかってね」


 蒼……恩人に暴言吐いてたのね……


「蒼……アンタ、拾ってくれた恩人に暴言吐いてたのね……」

「ええ、琴音さん達によってここに連れて来られた時から変だと思ってたんで恭さんが何を考えてるのか知るためにですけど」


 恭が何を考えているのかを知る? 蒼は何を言ってるのかしら?


「恭の考えを知るためって……暴言を吐いてるだけで他人の考えを知る事なんて出来るわけないでしょ!」


 暴言を吐いてるだけで他人の考えを知る事が出来るのならアタシだってそうしてる


「そうでしょうか? 人間ウッカリ出てしまった言葉こそがその人の本性とも言いますよ?」


 ウッカリ出てしまった言葉がその人の本性……蒼の考えで言うなら藍がここに来た日に恭の口から出た言葉『叩き出す』『話し掛けられてもシカト』というのが本性の現れという事になる


「恭君の本性ですか……」

「恭ちゃんがウッカリ出してしまった言葉……」


 藍と闇華は心当たりがある。その心当たりはアタシにもあった

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