高校入学を期に一人暮らしをした俺は〇〇系女子を拾った

意外な場所で一人暮らしを始めた主人公の話
謎サト氏
謎サト氏

神矢に呼び出されている最中に不思議な事が起きた

公開日時: 2021年2月5日(金) 23:30
更新日時: 2021年3月27日(土) 13:57
文字数:4,243

 面倒なHRと授業を終え、放課後。俺は新校舎になって初めて別室に呼び出しを食らっていた


「呼び出した理由は解ってるわよね?  灰賀君?」


 机を挟んで眼前に足を組んで座っているのは神矢想子。コイツは目論み通り朝のHRで寝ている俺を叩き起こし注意してきた。本当は終わってからすぐに指導するだなんてのたまったが、『先生は生徒を授業に出席させず、寝ていた事を指導(笑)するんですね』と煽ったら放課後までお預けだと言われ、今に至る


「これ以上ないってくらい解ってますよ。今朝のHRで寝ていた事を指導(笑)する為ですよね?」

「そうよ。貴方、教師を嘗めているの? それとも学が足りないからHRでも平然と寝ていられるの?」


 学が足りないと言った神矢は厭らしい笑みを浮かべている。出来の悪い生徒を見下している笑みを


「俺に学がないのは認めますけど、寝ている=学が足りないだなんて先生は発想力が貧弱なんですね」


 神矢の物差しでものを言うのであれば学が足りないから居眠りをする、学生としての自覚が足りないから授業中でも平然とトイレに行く。睡眠障害の人間、膀胱に病を抱えた人間からするとコイツほど迷惑な教師はいない


「あら、事実じゃなくって? 学が足りないから、自分が生徒であるという自覚がないから居眠りをしたり授業中にも関わらずトイレに立つのでしょ?」


 コイツは教師に向いてない。今の発言でそれが顕著になった。特に星野川高校のような何かしらの事情を抱えた生徒が多く集まる学校なら尚の事


「その自分の物差しでもの言うの止めた方がいいですよ? アンタが心の中で生徒をどう思ってようが勝手ですけどそれを表に出して言ったら……ね?」


 自分の物差しでものを言った結果、飛鳥を壊した。自分のせいで一人の生徒を精神的に追い詰めてしまったなんて自覚はこの女にない。自分のした事は正しく何も間違っていない。そう思ってるのは聞かなくても解る


「私は教師なの。自分の物差しで言ってるのではなく、世の中の常識として言ってるのよ。女の子は女らしくするのが当然だし、生徒は教師に楯突いちゃいけない。当たり前の事でしょ?」


 世の中の常識ねぇ……女の子が女らしくって言われても何を基準に女らしいって言えばいいんだ? 清楚でお淑やかにしとけば女らしいって言うのか? そんな女がいたら俺ぁ見てみたい。探せばいるんだろうけど


「ふっ、貴女とは話になりませんね。女らしさだなんて曖昧なものを自分の価値観でしか語れない……そんな人間が俺を指導? 面白い冗談ですよね?どうやったらそんな冗談が言えるんですか? ギャグセンス高くてビックリです」


 本当に面白い冗談だ。視野が狭い教師が生徒を指導するんだからな


「貴方、教師を嘗めるのもいい加減にしなさい?私がその気になれば退学にする事だって出来るのよ? それ解ってる?」


 でたー、本気出せば実は凄いんです系


「そうですか。ならやってみてくださいよ」


 東城先生の情報によれば神矢の雇用形態は正規の職員じゃなくただのパート。普通の会社に例えるならパートの人間に辞めさせるぞと脅されいてるようなものだ


「いいわよ?私がセンター長に言えばすぐにでも退学させられるわ」


 神矢の発言にそんな効力があるのか? まぁ、それはそれで面白そうだ。この学校の校則によると法に触れる事、社会から逸脱した行為をしない限りは退学にならない。自分を正当化するわけじゃないが、教師に対して生意気な口を利いてはいるが、社会から逸脱しているかと聞かれれば答えは否!


「口だけじゃない事を祈ってますよ」


 コイツの言う事は小学生の喧嘩で例えるなら自分が叶わず泣かされたから上級生にチクってやるというショボいものでしかない。


「その余裕も今のうちよ? っと、話が逸れたわね。HRで寝ていた話になるけど……反省はしているのかしら?」


 最初に話を逸らしたのはそっちだろ……HRで寝ていた件についてか……いつも寝ているから特別思う事はない


「いつもの事なので反省もへったくれもありません。それが何か?」

「あくまでも反省はしていないと。そう捉えていいのね?」

「好きにしてください」


 神矢想子……アンタに指導力があるのか否か見極めてやる


「そう。反省の色なしっと。貴方みたいな落ちこぼれに何を言っても無駄だろうからこれ以上は言わないわ。次に昨日内田さんと一緒に欠席した件だけど、もちろん、こっちは反省してるのよね?」


 居眠りの件を指導出来ないと諦めたのか神矢は昨日の欠席の話を持ち出してきたが、アレは東城先生お墨付きで学校側の不備だから公欠扱いにしてもらってる。こちらも反省しろと言われると何をどう反省すればいいのか困る


「反省も何も昨日の件は東城先生お墨付きで公欠扱いですよ? それをどう反省しろって言うんですか?アンタは病気欠席した生徒にも同じように呼び出し、同じ事を聞くんですか?」


 病気は自分の体調管理が甘いからだと言われてしまえば返す言葉もない。どんなに気を付けていてもなってしまう時はなってしまう。季節の変わり目とかインフルエンザが流行った時とか。それで反省と言われても……


「そうよ。体調管理出来ない人が悪いんですもの。当たり前よね?」


 話にならないとはこの事だ。神矢と話している時間が無駄に感じるのは気のせいなんかじゃなく、コイツの言ってる事は無茶苦茶なんだ


「話にならないので帰ります」


 カバンを持ち、席を立つ。無駄な時間を過ごすのは好きだが、話していて無駄だと思う相手と長話してやるほど俺は優しくない


「待ちなさい! 話はまだ終わってないわよ!」


 神矢からすると話はまだ終わってないだろうよ。俺は話にならないと思ったから切り上げただけだしな


「そうですね。ですが、アンタとは話にならない。体調管理に関しては季節の変わり目とかインフルが流行る時期とかは体調を崩しやすい。だというのにアンタはそれすら自業自得と一蹴する。そんな人間と話をするだけ時間の無駄です」


 何が神矢の価値観を歪めてしまったか正直、興味はある。だから神矢想子という人間を深く知りたいかと言われれば答えは否だ。自分の価値観だけを一方的に押し付けてくる人間を深く知りたいとは思わない


「可哀そうに……灰賀君のお母様は一体どんな教育をしてきたのかしら? お母様の教育が悪かったからこんな人の話を聞かない子になってしまったのね……」


 席を立ち、出入口を目指していた俺の耳に飛び込んできたのは神矢のお袋を悪く言う声。コイツ……


「お袋は関係ねぇだろ? 俺は話が通じずアンタと話している時間がもったいないから帰るっつってるだけだ」


 お袋を悪く言われ、狂いそうになるのを必死に抑えながら言った。殴らないだけまだ理性的だ


「そうかしら? お母様の教育が悪いから貴方のような素行不良が出来上がるのではないかしら? そういえば灰賀君はお母様いらっしゃらなかったわね」


 この言葉で俺の何かがキレた


「あぁ? 俺の素行とお袋は関係ねぇだろ? 大体、なんでお袋がいないって知ってるんだよ? 俺はアンタにお袋の話なんてした事ねぇぞ?」


 俺の素行が悪いのは素直に認める。それとお袋がいないのは何の因果関係もなく、言われている方からするとイジメに近いものしか感じない


「そうかしら? 私にはお母さんがいない自分に誰か構ってって言わんばかりの行動にしか思えないわ」

「見当違いも甚だしい。アンタのそれは単なる偏見だろ? お袋の教育が悪いから、お袋がいないから俺の素行が悪いって思いたいだけだろ?」


 世の中には両親の片方がいなくてもちゃんとしている奴は星の数ほどいる。もちろん、両親がいないからグレたって奴も同じだけいる。俺はどちらかと言うと前者よりの後者ってところだ


「そう言いたいのなら勝手にしなさい。私は灰賀君の素行不良の原因はご両親……特にお母様にあると、そう考えているわ」


 自分が悪く言われるのは仕方ない。自業自得だ。だがな、学校に行きたくないって言った時に何も言わずに受け入れてくれたお袋を……、喧嘩して家に帰った時に何も言わずに励ましてくれたお袋を……悪く言われるのは気に入らねぇ!!


「たかが数回……、たかが二~三日しか関わってないアンタに……、自分の価値観を一方的に押し付けるしか出来ないアンタに俺の何が解る!! 否定しかしないアンタに何が解るってんだ!!」


 俺が神矢を睨みつけた瞬間、机は音を立てて揺れ始め、窓ガラスは派手な音と共に割れ、蛍光灯も窓同様、何個か割れ、所々明かりが消えてしまった


「あ、貴方……こ、この部屋に仕掛けでもしたの!? 物を使って教師を脅して楽しいのかしら!?」

「え? あ、いや、俺はそんな事は……」


 神矢を睨みつけた瞬間に机が揺れ、窓と蛍光灯が割れる。どの教室に呼び出されるかも分からないのにそんなものを仕掛けられる奴なんているわけがない


「じゃ、じゃあ! さっきの揺れの窓と蛍光灯が割れたのはどう説明するのかしら? 全く、母親がいない子はこれだか────!?」

「────!?」


 神矢が言おうとしたのは『母親がいない子はこれだからダメなのよ』的な内容だろう。その続きは発せられず、教室内の揺れによってかき消された。


 今の揺れもさっきの揺れも校舎全体なのか、それとも、この教室だけなのかは分からない。揺れが始まる共通点も特になく、最初は俺が神矢を睨みつけた時、二回目は神矢が俺の家庭事情をディスろうとした時。揺れが始まる時の行動に共通点は全くない


「と、とりあえず今日はもういいわ。こう揺れが酷いと落ち着いて話も出来やしない」

「そうですね。俺は帰ります」

「そうして頂戴」


 教室を出る時、俺は神矢に挨拶せずに出た。そのまま職員室へ向かい、飛鳥と琴音を連れ、琴音が電話で呼んだであろう加賀の運転する車で帰路へ就いた。その道中


「なぁ、琴音」


 俺は隣に座る琴音に声を掛けた。飛鳥は助手席で寝息を立てており、静か。話すなら今しかない


「ん? どうしたの恭くん」

「今日学校にいる時なんだけどよ……」

「うん」

「途中揺れなかったか?」


 机はともかくとして、窓や蛍光灯が割れるほどの揺れだ。職員室で飛鳥と待機していたとはいえ感じてないわけがない


「ん~? 特に大きな揺れとかは感じなかったけど? それがどうかしたの?」

「いや、何でもない」

「そう?」

「ああ、悪かったな変な事聞いて」


 同じ建物にいた琴音が揺れを感じてない……。明らかに変だ……。だって、窓や蛍光灯が割れたんだぞ? そんな揺れを感じてないわけが……。アレ? あの時、スマホの地震警報鳴ってなかったよな? どうなってんだ?



今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート