高校入学を期に一人暮らしをした俺は〇〇系女子を拾った

意外な場所で一人暮らしを始めた主人公の話
謎サト氏
謎サト氏

俺はひねくれ者と思われていたようだ

公開日時: 2021年3月28日(日) 21:30
文字数:4,032

琴音に休暇を言い渡してから時が経ち、あっという間に午後の時間帯。っつっても起きたのが昼近かったから早く感じるのは間違いだとは思う。何もしてないと時間が経つのを早く感じてしまう。零達と共に飯を済ませた俺は……


「何もしてないって素晴らしい。そう思わないか? 琴音」

「私的には落ち着かないんだけど……」


 琴音と二人、ごろ寝していた。昼食の後片付けは俺達で済ませ、彼女には全力でぐうたらしてもらった。雇い主的な立場にいる以上、休息を与えるのも俺の仕事。間違った事は何もしてない。零達ですらイビキかいてグースカ寝てるんだから琴音も同じようにしたらいいのに


「いつも働いてるから落ち着かねぇんだよ。すぐに慣れる」


 琴音の気持ちはよく解かる。普段していた事をいきなりするなと言われたら時間をどう使おうかと悩んだり、習慣化してる分、やらない事で気持ちが落ち着かない。だが、休ませるのも俺の役割なんだ解ってくれ


「そ、そうかな?」

「そうだよ。それとも何か? 膝枕してくれって頼んだ方がよかったか? そっちの方が困るだろ?」

「え、えっと……どう……なんだろう……」

「どうなんだろうってお前なぁ……琴音にだって趣味の一つや二つあるだろ? 前の会社にいた時は休日どうやって過ごしてきたんだよ?」

「どうやってって……どうやってだったっけ?」

「あのなぁ……」


 彼女のすっとんきょんな答えに呆れる。今は常時仕事してるみたいな感じだから琴音に休息というか、休暇はない。けど、俺と出会う前は違う。なんの会社に勤めてたかは知らんが、月曜から金曜まで仕事をし、土日や祝日は休みだったはずだ。休みの日をどうやって過ごしていたか忘れるだなんてボケでも始まったか?


「前は休日適当に過ごしてたんだもん……」

「それだってショッピングとかしてたんじゃないのか? 女子ってそういうの好きだろ?」

「人に寄りけりだよ。私はあまりショッピング好きじゃないしね」

「そうなのか?」

「そうだよ。私は誘われれば行くけど、自分から積極的に行こうとは思わないよ」

「なるほどな」


 俺と琴音は他愛のない話で盛り上がった。このまま何もしてないのはさすがに退屈だという事で俺達はゲーセンに行き、二人きりの時間を有意義に過ごした



 遊び疲れた俺達が部屋に戻ると────


「おかえりなさい、恭さん」

「おかえり、ヘタレ」


 寝ていたはずの零達の姿がなく、代わりに制服姿でくつろいでる蒼と碧がいた


「もうそんな時間だったか……」

「遊ぶのに夢中ですっかり忘れてたよ」


 俺と琴音は二人揃って目を丸くした。今が何時か分からんが、蒼と碧がいるって事は後数時間もすれば夕食時。ここを出た具体的な時間は分からんが、今が十六時から十七時の間だというのは解かる


「お二人がどこでどう過ごしていたかは別にいいです。それより恭さん? 約束覚えてますよね?」

「ああ。友人の事を何とかしてくれってあれだろ? 覚えてるよ」


 スクーリング中、蒼からの不在着信を折り返した時に友人が元気ないと相談を受けた。だが、会った事すらない彼の友人を俺が元気づけられるわけがない。知り合いですらなんだから


「覚えてるならいいです。早速行きましょうか?」


 そう言って立ち上がった蒼は俺の腕を掴む。待て待て、お前は帰って来たばかりだろ?


「今からか? 着替えてからでもいいんじゃないのか?」

「早いに越した事はありませんから。それに、彼には帰ったら行く事と恭さんを連れて行く事は話してあります」


 行動が早いというか、せっかちというか……そこまで友人とやらが大切なのか?


「行動早すぎるだろ……」

「そんな事はありません。恭さんの話はこれから会う彼やクラスメイトには前々からしてありましたから」


 マジか……。その話初耳だぞ?


「どっから突っ込んでいいか分かんねぇよ」

「突っ込む必要はありません。恭さんは黙って僕に付いて来ればいいんですから」

「付いて行くのは構わねぇが、琴音も一緒でいいか? なんか長引きそうだしよ」

「え? 私?」


 突然の指名に琴音は目を丸くする。正確な時刻やその友人とやらの家がどこにあるのかも分からない。言えるのは今からじゃ話を聞き終えた頃には多分だが、遅くなる。高校生や中学生が出歩いていいような時間帯じゃなくなるのは確かだ。大人という意味じゃ早織と神矢想花がいる。だが、彼女達は幽霊。いていないようなものだ


「それは構いません。むしろそうしてくれた方が楽です。ちょっと複雑ですから」

「ちょ、ちょっと? 私の意見は?」


 琴音が何か言ってるが無視だ無視。何がどう複雑なのかは分からんけど、言いたい事は一つ。問題に俺を巻き込まないでくれませんかねぇ……。ドイツもコイツも俺を何だと思ってるんだ? 俺は探偵や弁護士じゃねぇっつーの!


「はぁ……引き受けちまった以上、今更嫌だとは言わねぇけどよ、複雑な問題に俺を巻き込むなよな……それと、今から出かける事はお前が責任持って零達に伝えて来い。俺と琴音は部屋の外で待ってる」


 俺は戸惑っている琴音を連れ、部屋を出た




「はぁ……」


 部屋を出た俺は深い溜息を吐く。複雑な悩みをどうして俺みたいな奴に相談するんだよ……。俺は人生経験豊富じゃねぇんだが……


「恭くん、溜息吐くよりも先にやる事があるよね?」


 背後から冷たい声がし、振り向くと……


「そうだった……」


 笑顔を張り付けた琴音がいた。俺が連れ出したんだから彼女がいて当たり前なんだが、この笑顔は怖いぞ……


「説明。ちゃんとしてくれるよね?」

「はい……」


 俺はスクーリング中に蒼から不在着信があり、折り返したら今回の事を聞かされ、断り切れず引き受けた事をザックリ説明した


「全く、恭くんは……」


 説明が終わり、琴音は頭を抱える。彼女が何に対して頭を抱えているのかは分からない。俺の無計画なところなのか、それとも、面倒事を黙って引き受けた身勝手なところなのか……両方って可能性もあるな


「いきなり連れ出そうとした事は悪いとは思ってるし、自分でも面倒な事を引き受けた自覚もしている」

「私が頭を抱えてるのはそこじゃないよ」

「ならどこだよ?」

「外に出るって簡単な事でさえ面倒がってるのに会った事もない人の悩みを聞くだなんて外に出るより難しい面倒事を引き受けちゃう恭くんのひねくれ振りだよ」

「ひねくれてるって……お前な」

「ひねくれてるでしょ。簡単な事は怠いとかめんどいとか文句言うクセに困ってる人がいるなら会った事すらない人だって助けようとするんだからさ」


 俺の行動ってそう見えるのか。初めて知った。というか、今回も助ける事前提なんですね。とは真剣な眼差しを向けてくる琴音には言えなかった


「助けようとはしてねぇよ。俺はただ自分に降り掛かりそうな火の粉を払ってるだけだ」

「はいはい。そうやって困ってる人全員助けちゃうもんね。恭くんは」

「あのなぁ……」


 俺は困っている人を助けてはいない。知り合った時にはすでに困ってる状況に置かれてるってだけで


「私も困ってるところ恭くんに助けられた口なんだけどね」

「琴音の場合は家の前に行き倒れてたところを拾っただけだ。助けちゃいねぇよ」

「そんな風に思ってるのは恭くんだけだよ。私も零ちゃんも闇華ちゃんも……ううん、ここに住んでる人全員、君に拾われた事で救われたんだから」


 拾われた事で救われたって言われましてもねぇ? 母娘は婆さんに押し付けられただけで加賀達は俺専属が欲しかったから拾っただけ。零と闇華、琴音に関しちゃ偶然で飛鳥は爺さんが彼女の父親を必要としたから。藍とセンター長、神矢想子はなし崩し的にって感じで誰一人俺は救っちゃいねぇ


「さいですか」

「さいですよ」

「ちゃんと蒼くんの友人って子も助けてくれるよね?」


 助ける……か。はぁ……どうして俺は面倒事に巻き込まれるかねぇ……


「ンな事言われても俺はいつも通り行動するだけだ。絶対に助けるって約束は出来ねぇよ」


 飛鳥の時からそうだった。絶対に助けるとは口にせず、自分にできる事を精一杯やってきた。不格好でも俺にはそうする事しかできない。個人的な意見を言うと、無能な奴に限って絶対に助けるとか、やり遂げるって言う傾向が強い。俺は自分を有能な人間とは言わねぇが、軽々しく絶対という言葉は使わない


「そっか。なら、私も恭くんの力になれるよう出来る限り頑張るね?」

「おう、頼むわ」


 約束出来ないって言ったのになぜか満面の笑みを浮かべる琴音。何を考えているのやら




「お待たせしました」


 琴音の考えがよく分からんと思っていたところで今回の依頼者である蒼が現れた。碧はいいのか?


「おう、待った。蒼一人か? 碧はいいのか?」

「ええ。本当は連れて行きたいんですけど、帰って来た藍さん達に事情を説明しなきゃいけないから残るらしいです」


 え? そんなに複雑なの? 今から逃げ出したいんだけど?


「どんだけ複雑なんだよ……」

「私も力になるからさ、頑張ろ? ね? 恭くん?」

「はぁ、やるだけやってみっか……」


 碧が残って事情を説明しないといけないほど複雑な問題ってどんなだよ……琴音のフォローがなければ約束ほっぽって逃げ出してたぞ……


「よろしくお願いします!」


 俺の思いなんて露知らず、蒼が俺達に向かって頭を下げてきた。かなり面倒な事になりそうな予感しかしないのは気のせいだろうか?


「頭なんか下げんな。琴音には言ったが、絶対に助ける、悩みを解決してやるとは言ってねぇ。今だって悩みを聞きに行くんじゃなくて、蒼の友人っていう珍しいレアキャラに会いに行くだけなんだからよ。まあ、そこでたまたま悩みを聞いちまったら仕方ねぇけどな」

「恭さん……」

「はぁ……」


 頭を上げた蒼の目元には薄っすら涙が溜まっていた


「恭くん、ひねくれてるね」

「喧しい。事実を言ったまでだ」

「ふふっ、そういう事にしておいてあげる」

「そうですね。恭さんはこうでなくては」


 蒼と琴音が揃って笑みを浮かべる。事実を言っただけなのに妙なところで信頼度高くね? つか、そこは自分の友人をゲームのキャラ扱いするなって怒るところだからな?

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート