高校入学を期に一人暮らしをした俺は〇〇系女子を拾った

意外な場所で一人暮らしを始めた主人公の話
謎サト氏
謎サト氏

東城先生とセンター長がヤケ酒をしたようだ

公開日時: 2021年2月5日(金) 23:34
文字数:4,210

 零達の嫌いな食べ物が基本的に子供の苦手なものだという発見でも何でもない事実を知った昼食が過ぎ、その後も俺は特にやる事なく漂い続けるという退屈な時を過ごし、気が付けば夕方。仕事を終えた東城先生とセンター長が帰って来た。なお、琴音、闇華、飛鳥は夕飯の準備中で今はキッチンにいる


「恭ちゃん……私、恭ちゃんがいないと寂しい……」

「はいがく~ん! 早くけが治して元気に登校してきてよぉ~」


 俺はほんのり頬が赤い教師二人に絡まれている最中だったりする。とは言ったものの抱き着かれたりとか物理的な害は全くない。ただ、その……何だ、どうしてこうなった?帰って来た時はすでにこの状態だったから今更感はあるけど


『はいはい、解ってますよ』


 今の俺は幽体である為彼女達に触れる事は出来ない。だから返事を返すのが精一杯。っていうか、何でほんのり顔が赤いかな……?


「本当に解ってる?私寂しいんだよ?」


 ずいっと顔を近づけてくる東城先生。生身であれば吐息が掛かる距離なのだが、今はそういったラブコメ的展開はない。ゼロ距離になったとしてもすり抜けるから間違ってキスをする心配も皆無だ


『解ってる解ってる。とはいえ今身体に戻ったとしても怪我が完治するまでは動けないからな?』


 琴音に聞いた話じゃ俺を撥ねたのはトラックらしく、運転手は今も逃走中とのこと。普通乗用だったらもしかすると片足の骨折で済んだのかもしれないが、さすがにトラックとなればそうもいかない。個人的な意見としてはトラックに撥ねられて全治一週間というのが奇跡だと思う


「じゃあ、恭ちゃんが私の守護霊になって……そしたら寂しくなくなるから」

『無理だと言い切れない要求しないでもらえます?』


 東城先生の要求は現状を見るとやってやれない事はない。つか、出来る。家にいても退屈だからやってしまおうか?なんて悪魔の囁きすら聞こえるくらいだ


「藍、アンタ酔っぱらい過ぎ。いくら恭が意識不明と言ってもいい状態だからって限度があるでしょ」


 キッチンから戻って来た零が東城先生の頭に軽くチョップを食らわせる。匂いとか全く感じなかったけど、東城先生、飲んでたんですね……だからほんのり頬が赤かったんですね……


「れい……いたい……」


 チョップされた箇所を軽く押さえ、零を見る東城先生の姿は幼い子供のようだ。口調が普段と変わらない分、シラフなのか酔ってるのか判別に困る。零はどうやって酔ってるって判断したんだ?


「痛いわけないでしょ?軽くしたんだから」


 睨まれたにも関わらず平然と言ってのける零。この女からは将来旦那を尻に敷く未来しか見えない


「零からすると軽くかもしれないけど私からすると痛かった」


 東城先生、それは貴女が酔っぱらっているせいもあると思いますよ?


「それは悪かったわね。っていうか、藍、アンタどこで飲んできたのよ?」


 零の言う通りどこで飲んできたのかは俺も気になっている。ここには酒の缶や瓶の残骸はない。となると消去法で飲んだのは外でだと容易に推測できる


「コンビニでお酒買って飲んだ」

「私も~」


 リアクションに困るとはこの事だ。東城先生は車を使って通勤してるわけじゃない。だから飲酒運転ではないってのは確実だ。成人してるから飲酒、喫煙したところで余程の事がない限り咎める人間もいない。だからこそリアクションに困る。


「あ、アンタ達……」


 零も俺と同じ思いらしく、頭を抱えている。成人してるから飲酒を咎められず、人に迷惑を掛けて警察のお世話になったわけじゃないから強く叱る事も出来ない。


「だって、恭ちゃんの魂は家にいるけど、身体は病院。それを考えると寂しくて仕方なかったんだもん……」

「藍ちゃんに全面同意」


 自分を心配してくれる人がいるってのは嬉しく思う。東城先生が言うように魂は家にいるけど、身体は病院。普段と何ら変わらない日常を送っていたせいで忘れそうになったが、現状の俺は普通の人が見ると意識不明の状態だ。寂しさから酒に逃げるという気持ちも解らなくはない


『だからってヤケ酒するこたぁねーだろ』


 寂しい気持ちは解かる。だからと言ってヤケ酒されたら本人としては居たたまれなくなったりする


「ごめん……」

「ごめんね、灰賀君」


 俺の一言でシュンとしてしまった東城先生とセンター長を見て何も言えなくなった。この人達がヤケ酒した原因は俺にある。だからこそ俺は怒れない。それは零も同じだったらしく、無言で二人を見つめているだけだった


『なら藍ちゃん達もきょうや私と同じ状態になってみる?』


 無言が支配する中、今までずっと黙っていたお袋が口を開く。俺やお袋と同じ状態。つまり、幽体になるって事だが、そんな事出来んのか?


「「「え……?」」」

『ん?』


 ポカンとする零達と自分は変な事を言ったか?と言わんばかりの顔をするお袋。両者の反応は対極的だ。


「早織さん、今なんと仰いましたか?」


 ポカンとする中、いち早く戻って来た東城先生が尋ねる


『藍ちゃん達もきょうや私と同じ状態になってみる?って言ったよ?もしかして聞こえてなかった?』

「あ、いえ、聞こえてなかったわけじゃないんですけど……その……」

『もしかして本当にそんな事出来るのか?って思っちゃったりしてる~?』


 お袋、その態度は人によっちゃおちょくってるって思われんぞ?


「はい……」


 お袋の態度を咎める事なく不安気に頷く東城先生


『簡単に出来るよ~』


 何だろう?お袋が怪しい占い師に見えてきた


「「「やります!!」」」


 零達は詳しい話を聞く事なく、アッサリ承諾。お前ら、少しは疑うという事を覚えろ


『おっけ~』


 んで、お袋もお袋で詳しい説明や参加人数を確認しないのな。ついでにいつやるのかとかも


『お袋、せめて具体的な説明と参加人数確認、やる日時くらいは言ってやれよ』


 怪しさ満点の提案だからこそ具体的な説明と参加人数確認、やる日時を伝える必要があると俺は思う。いや、その手の話はネットで検索すればあるにはある。ただ、そのほとんどが眉唾だってだけで


『それはこれからするんだよ~。とりあえず、零ちゃんは琴音ちゃん、飛鳥ちゃん、闇華ちゃんを呼んできてもらっていい?』

「分かりました!」


 零はキッチンの方へ駆けていった。そんなに慌てる事なのか?つか、お袋は零達に何をし、何をさせるつもりなんだ?



 それから五分と経たずに琴音達を連れて零が戻って来た


「恭クンと同じ状態になれるって本当ですか!?」


 零に連れられてキッチンから戻って来た飛鳥はいの一番にお袋へ詰め寄る


『本当だよ~』


 詰め寄って来た飛鳥の質問に軽く答えるお袋。幽霊だから詰め寄られたとしても平気なんだな


「方法!! 方法を早く教えてください! 早織さん! 恭君と一緒にいられる方法! ハリー!ハリー!」


 俺と同じ状態になれると聞いたからなのか興奮状態の闇華はお袋を急かす。闇華、普段のお前なら『ハリー!ハリー!』とか言わないよな?どうしたんだ?


『慌てな~い慌てな~い。まずは参加確認から。参加する人挙手~』

「「「「「「はい!!」」」」」」


 のほほんとしたお袋の参加確認に零達は勢いよく手を挙げる。六人は参加決定として、後は蒼と碧だが……そういや、あの双子はどこ行ったんだ?


『はい、零ちゃん達は参加決定~。後は双子ちゃん達だけど……あれ?双子ちゃん達は?』


 零達の参加する意志を確認し終えたお袋はあたりを見回し、双子を探す。


『俺が知るか。アイツ等、どこ行ったんだ?』


 零と闇華は学校が休み。飛鳥は学校に行ってた。んで、零と闇華は置いといて、飛鳥が帰って来た後で双子が揃って帰って来た。部屋着でどっか行ったのは知ってるが、どこ行ったかまでは把握してない


「ゲームコーナーですよ。恭さん」

「出て行く時に声掛けただろ。ヘタレ」


 声のした方を向くと両手いっぱいにぬいぐるみを抱えた双子が立っていた


『そういえばそうだったな。いつもフラッとどっか行ってフラッと戻ってくるから忘れてた』


 蒼に言われて思い出した。この双子は帰って来るなり部屋着に着替え、その後ゲームコーナーに行ったんだった。碧から『アタイと蒼はゲームコーナーにいるから夕飯出来たら呼びに来い。ヘタレ』って言われてたわ


「ヘタレ、その事について今度じっくり語り合おうな?」


 碧がドスの利いた声で言うが、今の俺はそんなモン怖くも何ともない。触れられない以上殴られる心配なんてないからな!


『嫌だよ。碧の場合、語り合いじゃなくて一方的な暴行だろ?言葉はちゃんと使え。』

「このヘタレ……幽霊じゃなかったらぶん殴ってるのに……」


 額に青筋を立てる碧。普段なら恐怖を感じる顔が今は怖くも何ともない。幽霊様様だ


『幽霊じゃなくても人を殴るな』


 本当なら煽って煽って煽りまくりたいところだが、今はそんなのよりも大事な事がある


『はいはい、きょうも碧ちゃんも喧嘩しないの~』

『へ~い』

「ちっ……」


 碧との不毛な争いはお袋によって治められた。碧の顔にはガッツリ不満があるって書いてあっけどな!


『それより、蒼くんと碧ちゃんはどうするの?きょうと同じ状態になるの~?』


 どこまでも能天気なお袋は双子に同じ質問をしやがった。


「恭さんと同じ……つまり、霊体になるって事ですよね?」


 蒼は顎に手を当て何か考える素振りを見せながら訪ねる


『そうだよ~』


 考える素振りを見せる蒼に対しいつも通りの調子で答えるお袋はコイツが何を考えているか?なんて全く疑問に思わないのか、あるいは蒼の考え程度はお見通しなのか……いつも通り過ぎて怖いくらいだ


「恭さんと同じ状態になるって事はボク達も意識不明になるって捉えていいんですよね?」

『そうだね、幽体になるから意識不明って捉え方でいいよ』

「わかりました。ところで、幽体になった後、元に戻れます?」

『もちろん! ちゃんと元に戻れるし、身体に全く害はないよ!』

「なるほど……ちなみになんですけど、幽体になれば恭さんに触れられます?」

『うん! きょうだけじゃなく私にも触れるよ!』


 お袋の答えを聞いた蒼は一瞬悪い顔でニヤッと厭らしい笑みを浮かべ……


「わかりました。ボクも参加します」


 参加の意を表明した。蒼が参加するって事は当然碧も……


「蒼がやるならアタイもやる。ついでにヘタレを一発ぶん殴る!」


 蒼と同じように悪い笑みを浮かべながら参加の意を表明。蒼はともかく、碧が参加するのは正直勘弁してほしい


『嘘だろ……』


 俺は殴られたら痛いんだろうなぁ……と思わざる得ない。女子中学生を侮っちゃいけない。マジで力強いから


今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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