高校入学を期に一人暮らしをした俺は〇〇系女子を拾った

意外な場所で一人暮らしを始めた主人公の話
謎サト氏
謎サト氏

危うく俺の過去がバレそうになった

公開日時: 2021年2月5日(金) 23:25
更新日時: 2021年2月14日(日) 20:50
文字数:4,022

 渡井さん────琴音の入居が決まった翌日である今日、言わずもがな暇を持て余していた。前にも言った通り俺の高校は通信制の高校であり、他の学校とは違い入学式がかなり遅い。限りなく五月に近い四月に行われるんだ。遅いと言っても過言ではないだろう。そんな俺達はこたつに入り、各々が好きな飲み物を飲んで過ごしていた


「唐突だが、零と闇華さんの学校は入学式いつなんだ?」


 俺が入学する高校の話は琴音が入居する前にしたが、零達が通う学校の入学式がいつかについては全くもって話していない


「さぁ? 恭のお婆さんが作った学校でしょ? そういう事はアンタが知ってると思ってたんだけど」

「私も零ちゃんと同じ意見で恭君が知ってるものだとばかり思ってました。それと、恭君! 私の事は闇華と呼び捨てで呼んでくれるようにお願いしたはずなんですが?」


 そうだった。俺は昨日、闇華と琴音から呼び捨てで呼ぶように言われていた。琴音に至っては敬語も要らんというオマケ付きで


「ご、ごめん、いつものノリでウッカリさん付けした」


 琴音を拾うまでのノリで闇華さんと呼んでしまった


「それならいいんですけど、次からは呼び捨てでお願いしますね」

「分かってる」


 琴音を拾うまでのクセが抜け切れてない事を闇華本人も解かっているのか今回は許してくれたが、次からはガチで睨まれそうだ。ちなみに、闇華が敬語のままなのは琴音と被るからだとか


「恭くん達は高校生だったんだね……」


 この中で唯一の成人女性である琴音が寂しそうに呟く。


「ああ、琴音は……」

「残念ながら二十二歳だから高校は四年前に卒業したよ」

「そうか……」

「「……………」」


 俺、零、闇華は十五で琴音は二十二。俺達の歳の差は七歳差なのだが、零と闇華が通う学校はともかく、俺の通う学校は同じ学年でも年上とか普通にあるような学校だ。琴音と同じ歳の人がいてもおかしくはない。ただ、年齢の差という事で距離は生じると思うが。


「琴音って二十二だったんだな」

「アタシ達よりも七つ上だったのね」

「私達が赤ちゃんだった頃琴音さんは小学校二年生だったんですね……」


 琴音が年上だという事実に驚きはしない。俺は仕事で首を切られた話を聞いたからな。どれくらいの差なのかってのは考えなかったが、少なくとも自分より年上だというのは何となく解かっていた。きっと零達はゲームコーナーで遊んでいた時にでも聞いたんだろう。じゃなかったら今頃驚いているだろうし


「そ、そうだけど、三人ともどうしたの?」


 家の前に倒れていた理由は話していても歳の事までは話してなかった琴音は少し動揺している


「「「年上だとは思ってたけど二十二だとは思わなかった」」」


 人の年齢で同意見が出るのはどうかと思う。それでもまぁ、人間考える事は同じだったようで零達と同じ意見になるのは今回が初めてだ


「そんなに意外だったかな?」


 俺達の意見にキョトンと小首を傾げる琴音。そりゃあもう意外ですよ


「ああ、意外だ。人の名前を弄るとかあんましたくねーけど、琴音ってドジっ子だろうから年上だっつーのは昨日話聞いた時に薄々感じてたが、二十二だとは思わなかった」


 昨日の話じゃ琴音が職を失った理由はリストラだが、『いつも仕事でミスしていた自分が真っ先に首を切られた』と言っていた。それを考慮してだ。琴音の属性を考察するとおそらくはドジっ子だ。解説するとこうだ。渡井琴音→どいことね→『どいことね』の『い』を『じ』に、『こ』の前に『っ』を入れ、最後に『と』と『ね』を抜く→ドジっ子。無理矢理ではあるが解りやすい


「きょ、恭くんは私がドジだってどこで知ったの!?」


 当てずっぽうだったのに本当に当たるとは思わなかった


「いや、昨日家の前で倒れてた理由とこの建物が店として営業していると思ってた事とか聞いた時に何となくそう思った」


 昨日の話を蒸し返すわけではないが、琴音はデパートが閉店したにも関わらず営業していると思ってたり、店内を改装して新たに別の店をオープンするなら求人サイトなり求人誌にバイトなりパートの求人が載りそうなのだが、それもなかった事を確認してなかったりと見落としが目立った


「な、何となく……」


 俺がドジっ子だという結論に至った理由を聞いた途端、ガックリと項垂れた琴音。


「あ、ああ、何となくだから本当は琴音はドジじゃないとも思っているぞ?」


 本当は自己紹介した時から『この人はドジっ子なんじゃないか?』と思ってはいたが、それを言うと面倒な事になるのは火を見るよりも明らかだったので言わなかった。


「恭くんの心遣いが痛いよ……」


 フォローしたつもりなのだが、それが返って琴音をさらに落ち込ませてしまった


「琴音、気にすることないわよ。アタシなんて自己紹介しただけで素直じゃない性格だって言われたんだから」

「零ちゃん……」


 ポンと琴音の肩に手を置く零とそんな零を目に涙を貯めながら見つめる琴音。これじゃどっちが年上だから分からない


「恭君、二人は何の話をしているんですか?」


 そんな零と琴音のやり取りの意味が理解出来てない闇華


「さぁ?二人にしか分からない事でもあるんだろ」

「そうなんですか?」

「ああ。零と琴音で通ずる何かがあったんだよ」

「そういうものなんですね」

「そういうものだ」


 闇華がどう思ったかは知らんが、少なくとも俺は零と琴音の慰め合う姿は本当の姉妹のように見えた


「そうですか。ところで恭君」

「何だ?」

「名前を弄るのがどうとか言った後で琴音さんがドジっ子だと言ってましたが、その話詳しく聞かせてくださいね」


 俺を見つめる闇華の目には光がなかった。ヤンデレって意中の男が他の女とイチャついてたり一緒にいた時に発動するんじゃねーのかよ……何はともあれ名前の下りはバレたら非常に面倒な事になる


「は、話を聞かせろと言われましても?そんな話す事なんてないと思いますよ?」


 光のない目……もといハイライトオフ状態の闇華には口が裂けても言えない。零と琴音が同じ空間にいるなら尚更な


「そうでしょうか? 恭君、私に何か隠してませんか?」


 す、鋭い! だ、だが、ここでバレたら女性陣から何を言われたものか分かったものじゃない! それに、俺が部屋に引きこもるハメになった経緯も話さなきゃいけなくなるかもしれない! それだけは絶対に避けなければ!!


「い、いや、別に何も隠してはいないぞ?俺が闇華に隠し事をすると思うか?」


 今まで闇華と零に隠し事をした事がない。隠し事をした事がないんじゃなくて単純に話す必要がないから言わなかっただけか


「思うわね」


 俺の問いに答えたのは闇華ではなく零。さっきまで琴音を慰めてたはずだぞ?


「零、俺はお前らに隠し事は極力しないようにしてきたつもりなんだけど?」


 極力隠し事をしないようにしてきたんじゃなくて本当は話す必要のない事を話さなかっただ


「そうでしょうか? 私には恭君が隠し事をしているようにしか見えないんですけど?」


 さすがヤンデレ。まだ一週間程度の付き合いなのに鋭いな。あ、それ言ったら零もか


「い、いや、別に隠している事なんてないぞ? そ、それより、零と闇華の入学式の件だよな? ちょっと婆さんに確認してくる!!」


 俺は零達が『待ちなさい!!』と言ってるのを無視し、逃げるように外へ出た



「危うくバレるところだった」


 外へ出てきた俺は琴音がドジっ子だと見破った理由がバレなかった事に胸を撫で下ろした。


「俺の過去にも触れる可能性のある事をホイホイと言えるはずねーだろ」


 琴音がドジっ子だと当てた理由。それを話すと俺の過去まで話そうで怖い。人からしてみれば大した事のない過去。俺本人としては嫌な思い出しかない過去。


「俺の過去についてはいずれ話すか」


 隠していてもいずれはバレる。なら時が来た時に話せばいい。きっと零達からすると大した事じゃないかもしれない。聞いた瞬間笑い飛ばされるかもしれない。そうだとしても俺はそれで長い事嫌な思いをしてきたのには変わりない。だとしても話すタイミングは今じゃない


「俺の過去よりも今は零達が通う学校の入学式だな」


 何気ない俺の発言が原因なのか、零達が灰賀恭という人間をよく見ているのか……どっちにしろ俺の過去はいずれバレる


「一緒にいる以上いずれ俺の過去がバレるのはいいとしてだ。婆さんには……メールで十分か」


 電話は昨日散々した。さすがに二日連続で婆さんのノリに付き合う気力を俺は持ち合わせていない。〇達の入学式の日取りと学校がどこにあるのかという旨を婆さんにメールで確認した後、俺は部屋に戻らず、三番スクリーンへ……


「恭君」


 行けなかった


「や、闇華……」


 三番スクリーンへ行こうとしたら闇華が出てきた。別に悪い事をしたわけじゃないから後ろめたい事なんて何もない


「恭君、私達さっきの事はとりあえず忘れる事にしました」


 さっきの事とは俺が言った名前の事だ。自分から墓穴掘っといて闇華達に気を使わせるのは情けないとは思う


「そうか」

「ええ。ですが、いつかは話してもらいます。その時、ここにいるのが今と変わらず私、零ちゃん、琴音さんだけなのか、増えているのかは分かりませんが、ちゃんと話してくださいね」

「ああ、分かっている」


 いずれ話す事にはなる。それが早いか遅いかの違いはあれど闇華達が俺の過去を知るのはいつになるのかは分からない


「全く、零ちゃんを説得するの大変だったんですからね?」


 “ふぅ”と息を吐く闇華の表情は心底疲れたといった感じだった


「だろうな。零にはお詫びって形で、闇華と琴音にはご褒美って形でケーキでも奢るわ」

「是非そうしてください。こんなところにいるのもなんですから戻りましょうか」

「だな」


 闇華の後に付いていく形で俺は部屋へ戻る。戻ったら案の定、不機嫌そうな零がいたが、『アンタが話したくなるまでアタシは何も聞かない!』と言ってくれた。琴音は大人の女性だけあって『恭くんにも話したくない事の一つや二つあるだろうから今は何も聞かないけど、話したくなったら話してね?』と言ってくれた


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