高校入学を期に一人暮らしをした俺は〇〇系女子を拾った

意外な場所で一人暮らしを始めた主人公の話
謎サト氏
謎サト氏

俺は人を甘やかしたい

公開日時: 2021年2月5日(金) 23:32
更新日時: 2021年4月11日(日) 01:22
文字数:3,956

「爺さん……何考えてんだよ……」


 俺は今、自分の祖父から送られて来たものを目の前に頭を悩ませていた


「恭……アンタもちゃんと男子っぽいところがあって安心したわ」

「そうですよ、恭君。いつもはゲームしかしてないのにこういう趣味も持っていて安心しました!」


 零と闇華の視線は息子を心配する母のようなもの。零、安心したって何だ? それに闇華。ゲームだって男子の趣味としては普通だと思うぞ?


「零と闇華ちゃんの言う通りだけどこれはさすがに……ね?恭ちゃん?」

「ああ、これはさすがにねーよ」


 東城先生はいつだって俺の味方だ。目の前のものを見てドン引きしているんだから


「あ、あはは……はぁ……」


 管理人である琴音は遠い目をして笑みを浮かべたと思ったら深い溜息を吐いた。


「オイ、ヘタレ」


 碧がの言う『ヘタレ』が誰なのかは考えるまでもない。誰を指してるのかすぐに分かる


「ヘタレ言うな。何だよ?」

「反応したって事はヘタレの自覚あるんだな、恭」

「俺がヘタレかどうかはどうでもいいとしてだ。何か言いたい事はなんだよ?」

「アタイ達ってもう特撮ヒーローものの変身グッズで遊ぶ年齢じゃなねーよな?」


 碧が何を言いたいのか全く理解出来ない。何が言いたいんだ?


「当たり前だ。蒼の趣味は知らんが、俺はそういうのをコレクションする趣味も遊ぶ趣味もない」


 動画サイトだと変身動画を上げてる人やオモチャのレビュー動画を上げてる人がいる。だからそれを集めるという事に関して俺は何も言わない。自分の金で買ってるものだから好きにしろって感じだ


「じゃあ、何でお前の爺さんはこんな大量に特撮グッズを送って来たんだよ? っていうか、コレ、全部ブレスレッドじゃん」


 碧の言う通り目の前にあるのは特撮ヒーローの変身グッズだ。それもブレスレッドという持ち運ぶ分には荷物にならないが、大量にあればうっとおしい事この上ない代物。それが一作品、二作品じゃなく、十作品分くらいあるから困る


「送って来た理由を俺が知ってると思うか? そもそも、爺さんだって俺が特撮ヒーローを見てないなんて小さい頃から知ってる」

『そうだよねぇ~、きょうは小さい頃からずっとゲームだもんねぇ~』


 この部屋にいる俺以外の人間には見えないお袋が笑顔で俺が幼少期にしていた事を語る。零達がいる上に否定できないから困る


「だったら何だってこんなモン……」


 心底忌々しいという表情で碧が呟き、それに他の連中も同意する。そんなの俺が知りたい


「恭さんのお爺さんはもしかするとこれが防犯か何かの役に立つと思って送って来たんじゃないんですか? ここには姉ちゃんを含めてか弱き女性が多いですから」


 笑みを浮かべている蒼に一言言ってやりたい。この部屋にいる女性陣のどこがか弱いって? いや、か弱いかもしれないよ?


「この部屋にいる女性陣ってか弱いか?」

「もちろんですよ。恭さん。もしかしてか弱くないとでも言いたいのでしょうか?」

「いや、か弱くないとは言わないけどよぉ……、何かが違うんだよなぁ……」


 零達は言うまでもなく女性だから男の俺や蒼に腕力で劣るのは仕方ない。でも、か弱いと言われれば今の俺には引っかかるものがあった


「何かが違うとは?」


 尋ねてくる蒼の顔には『面白そうな事になりそう!』と明確に書いてある。そして、チラッと碧の顔も見たが、蒼と全く同じ事が書いてあった。この双子は他人の異性関係で遊ぶのが大好きなのだ


「う~ん、何て言うか、今の俺にとっては零達がか弱い女性かどうかよりもずっと大切な事がある気がするんだよ」


 その大切な事が恋愛関係の事かと聞かれるとそうではない。俺が抱いてるのは恋愛感情ではなく、もっと別の感情だからだ


「恭さんの言う大切な事が何かは知りませんが、とりあえず実行してみたらどうです? ブレスレッドの件は追々考える事にしましょうよ」

「だな。後で爺さんに電話して確認してみる」

「そうしてください。それでです、恭さん」

「ん? 何だよ?」

「零さん達がお待ちかねですよ?」


 蒼に言われ、零達の方を見ると碧以外は目を輝かせていた。か弱い女性じゃないと言ったから怒ったかと肝を冷やしたが、そうではないらしい


「あー……碧」

「何だよ? ヘタレ」

「一線を越えない事とやり過ぎないのを条件に蒼を好きにしていい」

「ホントか!?」

「恭さん!? 何言ってるんですか!?」


 嬉しそうな声を上げる碧と驚きの声を上げる蒼。悪いな、蒼。今はお前ら双子に異性関係を茶化されるわけにはいかないんだ。俺の為に犠牲となれ


「ああ。やり過ぎないのと一線を越えないと約束出来るならな」

「約束する!」

「んじゃ、蒼とイチャついていいぞ」

「さんきゅ! 恭! お前、いい奴だな!」

「恭ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 喜びの表情を浮かべる碧と怒りの表情を浮かべる蒼。同じ顔なのに表情が違うというのはなかなかに面白い


「んじゃ、空き部屋はどこを使っても構わん。二人で存分にイチャつくといい」

「分かった!」


 ジタバタと暴れる蒼の首根っこを掴んで碧は適当な空き部屋に入って行った。とりあえずこれで邪魔は入らなくなった


「さて、どうしたものか……」


 リビングに残されたのは俺と零達のみになった。何か蒼の悲鳴が聞こえるような気がしなくもないけど……気のせいという事にしておこう。


「アンタ、何も考えてなかったわけ?」


 零からしらーっとした視線を向けられる。蒼と碧を排除したはいいのだが、これからどうするかを全く考えてなかった


「……………………申し訳ない」


 何も考えてない俺の自業自得なので素直に謝るしかない


「はぁ~、まぁ、解かってはいたから今更何も言わないわよ」


 呆れるでもなく、怒るでもなく、零は笑みを浮かべていた。なんだ……さすがに二か月も一緒にいるとソイツの人となりが解ってくるようだ。話は変わるが、最近なぜか無性に他人を甘やかしたくなるのは何でだろう?


「そうです。恭君は考えなしの行動を取るから恭君なんですよ」

「そうだね、恭くんはそういう人だもんね」

「うん。恭ちゃんはそういう人」

「考えて行動を起こすなんて恭クンじゃないよ」


 闇華達は柔和な笑みこそ浮かべていたが、言ってる事は本人からすると酷い内容だった


「怒られないのは助かるけど、酷くない? 俺が何も考えてないみたいじゃん」


 俺だってちゃんと考えて行動して……ないな……。特に神矢との対決が終わった後に事もあろうに飛鳥達の前で力暴走させかけたし


『きょう~、何も考えてないのは事実でしょ~』


 精霊と化したお袋が茶々を入れる。実の母親にまで何も考えてないとか言われるとマジで凹みそうなんだけど?え?俺に憑いてる精霊ってこんな厳しいの?やだ、精霊交代して


「そう言う事言うなら今日は零達を甘やかそうかなと思ってけど、次の機会に持ち越しにしとくか」

「「「「「────!?」」」」」

『へぇ~、ゴールデンウイークの時は零ちゃん達を追い出そうとした恭が、零ちゃん達から甘やかせとせがまれて動く恭が自分から甘やかしたいだなんてね~』


 ビックリする零達と俺の黒歴史&普段の行いを容赦なく暴露するお袋。零達に関しては仕方ない部分があるからお咎めなしとして、おいこらお袋!


「零達が人を考えなしのノータリンとか言うなら別にいいか。適当に甘やかさせてくれる奴探すわ」


 小心者の俺に知らない人間へ声を掛けるだなんて度胸は大してない。そりゃ必要ならする。普段は絶対にしないけど


「恭ちゃん、酷い事言ってごめんね? だから、知らない人を甘やかすだなんて止めて」


 驚いてる女性陣の中でいの一番に東城先生が謝った。嘘も方便。本当に知らない奴を甘やかすつもりはないのだが、案外言ってみるモンだな


「恭、アタシも言い過ぎたわ」

「ごめんなさい……、恭君」

「恭くん、ごめんね……」

「恭クン、私達が悪かったから他の人を甘やかすのは止めてくれないかな……?」


 冗談で言ったのにみんな急にしおらしくなっちゃったよ……


「あ、いや、本気で言ったわけじゃないとはいえ、俺も悪かった」

「「「「「ううん、いいの……私達だけを見てくれてるだけで……」」」」」

「ゆ、許してくれたなら、い、いいんだ」


 俺の発言に原因があったのは確かだ。だからこそ謝った。それを許してくれたのは嬉しい。しかし、許してくれた零達の目には光がなく、濁り切っていた。その理由はなんだろう?


「じゃあ、この話はもう終わりにしましょう。これからは恭に甘やかしてもらう時間よ」

「あ、ああ、分かった」


 零の一言により、この話は終了となった。どこか腑に落ちないとは思ったが、追及する事はなく、俺は納得してみせた。彼女達の一瞬だが、零達の目から光が消えた理由が分からない。闇華はここに住まわせた日にヤンデレだと分かった。それに対して零達は違う。


「それじゃあ恭に甘やかしてもらう順番だけど、拾われた順でいいわよね?」

「「「「異議なし」」」」


 零の提案をアッサリ了承した闇華達。マジでどこか変だ


「そう言う事で恭、アタシから甘やかしてもらうわよ?」

「わ、分かった」


 彼女達に意見してはいけない。そう思った根拠はない。俺の本能がそう告げていただけで


「それじゃあ、闇華達はお風呂にでも入ってて。そうね……一時間くらいしたら戻ってきてくれて構わないわ」

「「「「うん」」」」


 零の指示により、各々が出て行く。そして、零と二人きりになった俺は……


「たっぷり甘やかしてもらうから覚悟しなさい」


 恍惚の表情を浮かべた零に抱き着かれた


「俺が言った事だ。望み通り甘やかしてやるよ」

「そう。でも、甘やかされる前に少しだけ……ほんの少しだけアタシの話を聞いてほしいの」

「話を聞くのも甘やかすうちの一つだ。ドンと来い!」


 今俺は無性に人を甘やかしたい。零がする話の内容は知らないが、甘やかすと言った以上はどんな話でもちゃんと聞く

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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