高校入学を期に一人暮らしをした俺は〇〇系女子を拾った

意外な場所で一人暮らしを始めた主人公の話
謎サト氏
謎サト氏

初めてできた友達の秘密を知る事になってしまった

公開日時: 2021年2月5日(金) 23:27
更新日時: 2021年3月4日(木) 23:06
文字数:3,999

 一時間目の自己紹介が終わり、二時間目は普通の授業かと思ったら二時間目は高校でやりたい事の発表。やりたい事が特にない俺は適当に湯舟一杯のコーヒーゼリーが食いたいと適当な事を言った。そんな二時間目の授業が終わり、現在、三時間目。今度こそ普通の授業に……


「それじゃあ灰賀君。この学校に足りないものを答えて」


 ならなかった。三時間目の授業の題材は“星野川高校に足りないもの”だからだ。


「部活」


 星野川高校に足りないものという事で先に挙がっている意見は広さとか、体育館とかの施設に関係するもの。確かに学校内に体育館がないのは問題だと思う。俺はそんな施設的なものではなく活動的なものを答えてみた


「なるほど、部活ね……。灰賀君はどんな部活があったら楽しい学校生活が送れると思う?」

「俺個人としてはボブとスティーブがあればいいと思いますよ?」


 部活と答えはしたが、元々学校向けではないこの建物で文化部にしろ運動部にしろやるのは無理だ。そう思った俺は悪ふざけで文芸部とか科学部とかじゃなく適当に答えた


「灰賀君、先生の事バカにしてる?」

「いや、別に。先生こそボブやスティーブって人の名前だと思っているでしょうけど、ボブは簿記の『簿』に『部』でボブ。スティーブはストーブの歴史について研究し、未来の為に画期的なストーブを日夜開発する部活ですよ」


 我ながらアホみたいな言い訳だ。東城先生だったら絶対に何等かの罰を与えられた。この先生は違うと思うけど


「なるほど……そう考えるとボブやスティーブってこの学校には必要なものなのかも……」


 自分で言っといてなんだけど、どっちも必要ないと思う。つか、いい大人が十五のガキが言った世迷言をマジで受け取るな


「先生にそう思っていただけるのなら俺も嬉しいです」

「灰賀君のボブとスティーブはともかく、部活動はこの学校にはないわね」


 無理矢理軌道修正しやがった……発表が終わり、ふと隣にいる飛鳥の様子を伺ってみると……


「ぼ、ボブ……す、スティーブ……」


 身体をプルプルと震わせながら笑いを堪えていた。コイツの笑いのツボがどこなのか全く理解出来ない


「今の悪ふざけのどこに笑う要素があったのやら……」


 俺にとっては単なる悪ふざけであり、笑える要素は皆無だ。人によって笑いのツボは違うから何も言わないけどよ……飲み屋でやったら確実に空気凍るなこりゃ



 その後は次々に生徒達が星野川高校に足りないものを答え、授業も残り三十分となった。その時


「センセー、トイレ行って来ていいっすか?」


 隣に座っていた飛鳥がトイレに行きたいと言い出した


「いいけど、授業中だから静かにね?」

「了解っす!」


 飛鳥は席を立ち、教室を出た。普通の高校なら授業中にトイレだなんてあり得ないと咎められるところなんだろうな……。トイレの事考えてたら俺も行きたくなってきた


「せ、先生……」


 俺は先生が授業を開始しようとしていたところで挙手


「何? 灰賀君」

「お、俺もと、トイレに……」

「授業中だから静かにね?」

「りょ、了解っす」


 咎めはされなかったが、呆れたといった感じだった。悪いとは思いつつ教室を出て職員室を通過した俺の目に予想外の張り紙が飛び込んできた


「この階には職員用トイレしかないのか……」


 俺の目に飛び込んできたのは『職員用男子トイレ』の張り紙。この建物は大して大きくない。目の前の張り紙から二階に生徒用のトイレがないだなんて事は簡単に想像出来る


「三階のトイレを使えって事か」


 職員用のトイレを使うわけにはいかず俺は仕方なく三階へ上がるべく階段を上る


「全く、似たような体型なんだから生徒用と職員用に分ける必要なんてねーだろ……」


 小学生や中学生ならいざ知らず高校生は体型なんて大人と大して変わらない。だというのにトイレを職員用と生徒用に分ける意味が理解出来ない。


「まぁ、文句言ってても始まらないか」


 学校の決めた事に文句を言っても仕方ない。


「ここの階段って無駄に一段一段が高いんだよな……」


 一段一段が高い階段を上がり切り三階へ辿り着いた。そして、授業の妨げにならないよう速足でトイレに向かう。


「もしかすると飛鳥と鉢合わせたりしてな」


 タッチの差だが飛鳥は俺より先にトイレへ立った。もしかすると入れ替わりになるかもしれないと思っていた矢先……


「…………」

「…………マジか」


 飛鳥がトイレから出てきた。トイレから出てきたのはいいんだ。用が済んだら出てくるのが当たり前だからな。でも飛鳥は女子トイレから出てきた


「きょ、恭クン……もしかしなくても見た?」


 何とも言えない沈黙を破ったのは意外にも飛鳥の方からだった。さて、俺は何て答えるべきなのか……


「いや、何も見てない。大丈夫だ。俺は飛鳥がどんな趣味を持っていても友達続けるから。んじゃ、早いとこ教室に戻れよ。じゃあな」


 答えに困った俺は捲し立てるしか出来ず、そのまま逃げるように男子トイレへと駆け込んだ



 用を済ませ、手を洗った俺は飛鳥が教室に戻ってくれてる事を祈りながらトイレから出た


「…………」

「何でいんの?」


 トイレから出ると顔を赤くし、俯いた飛鳥が男子トイレの前で待っていた


「きょ、恭クンに話があるからに決まってんじゃん」

「話?」

「と、とりあえずここじゃなんだから移動!」


 状況が全く掴めないまま俺は飛鳥に手を引かれ、四階のとある場所に移動する事に。その場所というのが……


「何でトイレからトイレ掃除用具を入れてる場所に移動してんだよ」


 四階のトイレ掃除用具入れ。それもトイレの。あれか? 臭い場所にいたから今度は臭い場所を掃除する道具をしまっている場所に移動しようって魂胆か? あ?


「だ、だって、三階だと三年の先輩方に見つかるじゃん?それに俺の話って極力大勢の人には聞かせたくねーんだわ」


 飛鳥の言いたい事は理解した。だけど、女子トイレから出てきたところを見た後で男口調で言われてもなぁ……違和感しかねぇよ


「いや、知らんて。とりあえず飛鳥は女子トイレに入る趣味があるのは理解した。大丈夫、そんな趣味があっても誰にも言わねぇから」

「恭クン、俺が女子トイレ入って興奮する奴だって本気で思ってる?」

「……………」


 飛鳥が女子トイレ好きの変態だと本気で思っているわけじゃない。強いて言うなら俺の思考が追い付かないだけだ


「はぁ……」


 否定しない俺を見かねたのか飛鳥は深い溜息を吐いた


「え? 俺が悪いの?」

「いやいや、恭クンが悪いってわけじゃないんだけどよ……なんつーか、ありのままを説明してのかって不安に襲われたみたいな?」

「は、はあ、ありのまま……」


 ありのままねぇ……ここで考えてみよう! 王道ラブコメでは飛鳥のように男子とも女子とも取れる顔立ちで格好は男子そのものの奴が女子トイレから出てきた。んで、その女子トイレから出てきた男子の格好をした奴からの話……答えは?


「恭クン、俺、実は女なんだわ」


 自分が女だというカミングアウトでした。女子トイレから出てきた時点で想像ついたわ! つか、あまりに王道過ぎてビックリする気も起きん


「あ、うん。そうみたいだな」

「なんか反応薄くね? この学校に入って初めて出来た信用できる人に勇気をもってカミングアウトしたつもりなんだけど」


 女子トイレから出てくるとこ見た俺にどう反応しろと?王道過ぎて反応しづらい


「何を持って俺を信用に足る奴だと思ったかは知らんけどよ、女子トイレから出てくるとこ見たら変態か実は女子でしたって相場は決まってるからな。それに、今は授業中だ。大声を出すわけにはいかんだろ」


 ラブコメで主人公が男だと思っていた奴から実は女でしたってカミングアウトされるシーンは何度か見た事ある。自分がカミングアウトされるとは思ってなかったけど


「とかなんとか言って俺が女だって信用してないだけっしょ? なんなら確かめさせてあげよっか?」

「いや、いい。バレたら殺される」

「そんな事言わずにさぁ~、確かめてようぜぇ~」


 飛鳥、お前は酔っ払いか?


「嫌だ。バレたらマジで殺される。俺はまだ死にたくない」

「バレたら殺されるって恭クン彼女いるん?」


 飛鳥は俺に彼女がいると思い込んでるようだが、それは違う。この学校には幼い頃一緒に遊んだ教師が一人いる。それが厄介なだけなんだ


「彼女はいない。でも、バレたら俺は確実に殺されるんだ。事情は言えないけど」

「ふぅ~ん、そんな事言われたら余計に俺が女だって事証明したくなるっしょ」


 俺は飛鳥の女としてのプライドか何かに火を付けてしまったらしい。暗がりで見えないが、何か闘志みたいのを感じる


「確かめんでも飛鳥が女だって十分理解したって」

「い~や! 理解してない! つか、確かめるまでここから出すつもりねーから!」


 マジかよ……勘弁してくれ……


「勘弁してくれよ……そもそも、どうやって女だって確かめさせるんだよ? ここの電気でも付けて目の前で裸にでもなるのか?」


 自分で言っといてなんだが、俺の方が変態じゃね?


「ば、バカじゃねーの!? んな事するわけないっしょ! こうするんだよ!」


 暗がりの中、俺の腕には柔らかい感触が


「こうするって言われてもなぁ……つか、柔らかい?」


 俺はこの柔らかな感触を知っている。闇華を拾った日にこんな事があったわ


「どう? 恭クン? 俺が女だって理解してもらえた?」

「ああ、十分に理解した。理解したから腕を離せ。そしてここから出せ」

「恭クン、本当に男? これでも胸には自信あったんだけど?」


 やはりさっき柔らかな感触は胸だったか


「飛鳥と同じ事した奴がいてソイツで耐性が付いたんだよ」

「ちぇっ、つまんねーの」


 飛鳥は俺が興奮しなかった事に対して不満があるようだ。俺も闇華が抱き着いてこなかったら危なかったぞ


「つまらなくて結構。んで? こんな場所に連れ込んだって事は男として振る舞っている理由でも話してくれんのか?」

「当たり」


 高校生活が始まった二日目。俺に初めて友達が出来たと思ったらその友達の秘密を知る事になりました。


今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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